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ロンドン発!松崎美子のFXマーケットレター

イタリア国民投票はユーロの窓開けリスクになるか?
実質的なメローニ首相への信任投票に発展することで
大きな分岐点になる可能性もあるので注意したい!

2026年03月11日(水)06:01公開 (2026年03月11日(水)06:01更新)
松崎美子

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イタリアでの国民投票に注目

 イタリアでは、2026年3月22~23日に国民投票が実施されます。表向きには「司法改革」の是非を問う内容ですが、実際にはメローニ政権の存続、ひいては欧州の安定を揺るがしかねない「巨大な賭け」へと変貌してきました。

●「司法改革」という名の聖域なき戦い

 まず、多くの人が見落としがちなのが、今回の国民投票の核心となる「司法改革」の重みです。イタリアにおける司法は、単なる三権分立の一翼ではなく、1990年代のタンジェントポリ(汚職追放運動)以来、司法は政治家を監視し、時には失脚させる強力な権限を握ってきました。

 今回の改革案は、裁判官と検察官のキャリアを完全に分離し、司法の独立性を一定程度制限しようとするものであり、メローニ首相率いる右派連立政権にとっては「効率的な統治」のための悲願ですが、反対派にとっては「法の支配の弱体化」に他なりません。

 そして今回の国民投票は、メローニ首相個人への「信任投票」と化しているというのが現実です。

●トランプという「不人気な盟友」の影

 メローニさんを窮地に追い込んでいるのは、皮肉にも彼女が心血を注いできた「対米外交」です。

 彼女は欧州では「トランプをなだめる唯一の存在」としての地位を確立し、G7(先進7カ国)やEU(欧州連合)内での存在感を高めてきました。しかし、トランプ大統領によるイラン攻撃は、イタリア国内の反米感情を激しく逆なでしたのです。

 調査会社YouGovによると、イタリア国民の77%がトランプ大統領に「不快感」を示していると言う結果が出ました。

 歴史的にイタリア国民は、米国の戦争に引きずり込まれることに極めて敏感で、シチリア島にあるシゴネラ基地をはじめとする国内の米軍基地が、イラン攻撃の兵站拠点として機能しているのではないかという疑念は、有権者によるメローニ批判を高めるリスクと背中合わせと言えるでしょう。

トランプ大統領によるイラン攻撃は、イタリア国内の反米感情を激しく逆なでした(C) Chip Somodevilla/Getty Images News

●「生活の質」が直撃する政治の命運

 さらに、この地政学的リスクはイタリア国民の「財布」に直結しているので厄介です。イタリアは欧州の中でもエネルギー輸入依存度が高く、電気代はすでにEU最高水準となっているだけに、イラン情勢の緊迫化による原油・天然ガス価格の再高騰は、司法改革の是非よりもはるかに切実な問題として、投票行動に影響を与えるでしょう。

WTI原油先物 日足
WTI原油先物 日足

(出所:TradingView

 そして野党「五つ星運動」などが展開する「メローニはトランプの言いなりで、イタリアを戦火とインフレに陥れている」というレトリックは、物価高に苦しむ国民に深く浸透しても不思議ではありません。

●ユーロ売りへの警戒

 為替取引をする私達にとってもっとも気になるのは、この問題が「ユーロ売り」につながるかの判断でしょう。

 歴史を振り返れば、2016年に当時のレンツィ首相が憲法改正の国民投票に敗北し、辞任に追い込まれた際、ユーロは対米ドルで急落しました。

 そして、マーケットがもっとも嫌うのは「不透明感」です。ここでの不透明感は2つ。

① 政治不安リスク

 もしメローニ首相が敗北し政権が不安定化すれば、EU内で「もっとも安定した右派政権」という神話が崩れます。

 債務残高の多いイタリア国債の利回り上昇(スプレッド拡大)を招く可能性があり、ユーロ売りの強力な材料となり得ます。

② 財政規律リスク

 メローニ政権はこれまで、EUの財政規律を比較的遵守してきました。しかし、国民投票で苦戦を強いられれば、支持を取り戻すために一時的にせよ バラマキ型政策へ舵を切る可能性がないとは言えません。

 これはユーロへの不信感に直結します。

 現時点では、市場はまだ「様子見」の段階ですが、投票日が近づくにつれ、イタリア国債とドイツ国債の利回り差(スプレッド)には緊張が走る可能性もあるため、ユーロ取引をする人には注意が必要でしょう。

ユーロ/米ドルと伊独長期金利差(週足)


(※筆者提供/TradingView

 こちらのチャートは、ユーロ/米ドル(赤と緑のろうそく足)と、イタリアとドイツそれぞれの10年物国債利回りの差(黒線)です。

 一般的には、金利差が拡大すると、ユーロにはネガティブ。逆に金利差が縮小すると、ユーロにはポジティブに働きます。

 チャートの右側にオレンジ色の丸いハイライトをつけましたが、伊(イタリア)独(ドイツ)長期金利差が上昇(拡大)しており、ユーロ/米ドルはユーロ安方向に動き始めています。

●国民投票否決の場合

 もし否決という結果が出れば、為替市場ではユーロが窓を開けて下落するシナリオは十分に現実味を帯びているというのが、こちらでのコンセンサスとなってきました。

●メローニ首相の「真の試練」

 今月(3月)の国民投票は、単なる司法の仕組みを変えるかどうかの問いではありません。イタリアが今後も欧州の安定した「アンカー(錨)」であり続けられるのか、それとも再びポピュリズムと政治不安の荒波に飲み込まれるのかを決める、分水嶺となるものです。

 投票結果によりユーロの窓開けリスクもあるので、十分に気をつけたいと思います。

ユーロ/米ドル 週足
ユーロ/米ドル 週足

(出所:TradingView

セントラル短資FX為替ディーラー富永貴之取材
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