ディベースメントトレードとは何か
みなさん、こんにちは。
今週(8月24日~)の為替相場は、日本時間8月28日(金)にジャクソンホールで予定されるウォーシュFRB(米連邦準備制度理事会)議長講演待ちということもあり、しばらくは大きな方向感の出ない展開になりそうです。
そこで今回は、今週多くのメディアでも触れる機会が増えている「ディベースメントトレード(Debasement Trade)」について、ご紹介します。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は膠着でトレード妙味が薄い! 米金利上昇でも米ドルが上がらないのはなぜ? 「ディベースメントトレード」と高金利の豪ドル/円に注目(8月24日、西原宏一&叶内文子)
ディベースメント(Debasement)とは、もともと「通貨の品位を落とす」という意味の言葉です。
語源は、古代ローマ皇帝やイングランド王が、硬貨に使う貴金属の含有量を減らして通貨の発行量を増やした故事にあります。金属としての価値が薄まれば、通貨そのものの価値も目減りする、という発想です。
現代の「ディベースメントトレード」は、この考え方を法定通貨、とくに基軸通貨である米ドルに当てはめたものです。
通常の通貨安とは違い、財政拡張や行き過ぎた金融緩和によって通貨そのものへの信認が揺らぐ局面で、金(ゴールド)や銀(シルバー)、ビットコインなどの「実物・オルタナティブ資産」に資金を逃避させる動きを指します。
フィナンシャル・タイムズが「Unhedged」などのコラムでこの表現が使われるようになり、市場で頻繁に使われるようになりました。
★ザイFX!で人気の西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では、タイムリーな為替予想や実践的な売買アドバイスなどをメルマガや会員限定ウェブサイトで配信! メルマガ登録後10日間無料です。
ディベースメントトレードがなぜ今、再燃しているのか?
背景にあるのは米国の財政不安です。
米連邦政府の債務残高は19日(水)に史上初めて40兆ドルを突破し、7月までの10カ月間の財政赤字も、すでに前会計年度(2024年10月~2025年9月)の通期赤字を上回っています。
さらに皮肉なのは、財政不安を鎮めるはずだった政策がむしろ逆効果になっている点です。
米財務省は8月19日(水)、長期国債市場の流動性を支えるため、償還まで10年以上ある国債の買い入れ消却(バイバック)の1回あたり上限を、従来の20億ドルから少なくとも40億ドルに拡大すると発表しました。
発表を受けて長期・超長期金利はいったん低下したものの、その後は再び上昇するなど、財政不安が払拭されたとは言いにくい状況です。
マーケットアナリストの豊島逸夫氏も自身のコラムで、財務省が実際に動いたことでかえって財政不安が現実味を帯びて意識された、との趣旨を指摘しています。
この結果、複数通貨に対する米ドルの総合的な強さを示すドルインデックスは先週、98台半ばまで下落しました。3カ月ぶりの安値圏で、7月下旬の高値からはすでに3%安い水準です。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
一方で、金(ロンドン現物)は25日、1トロイオンス=4700ドルに迫る3カ月ぶりの高値をつけ、直近1週間の上昇率は8%を超えています。

(出所:TradingView)
日経新聞でも、これまで売られてきた金ETFに資金が戻り始めており、昨年(2025年)のような急騰とは異なり、着実に水準を切り上げている点に力強さがあるとの見方が伝えられています。
ビットコイン/米ドルも一時3カ月ぶりとなる8万1000ドルまで急伸しています。
★ザイFX!で人気の西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では、タイムリーな為替予想や実践的な売買アドバイスなどをメルマガや会員限定ウェブサイトで配信! メルマガ登録後10日間無料です。
ディベースメントトレードは過去にも繰り返されてきた
ディベースメントトレードは2025年の第2次トランプ政権発足以降、たびたび蒸し返されてきました。
FRBへの度重なる利下げ要求による中央銀行の独立性への懸念、大規模な相互関税、グリーンランド領有の意向表明――。
こうしたリスクが意識されるたびに米ドルの信認が問われ、「無国籍資産」として金やビットコインが買われる、というパターンです。
日本メタル経済研究所の志田富雄氏も、昨年の金価格上昇はやや行き過ぎで、ETF市場への資金流入が主因だったとしつつ、状況は変わっても通貨から金へという底流自体は続いている、と分析しています。
長期的な構図としても、ECB(欧州中央銀行)が6月に公表した調査では、2025年の世界の公的準備資産に占める金の比率が27%(※)となり、米国債(22%)を約30年ぶりに上回りました。
(※編集部注:ECBは金価格の上昇による評価額の増加が、この比率上昇に大きく影響したとも指摘している)
米ヘッジファンド、ブリッジウォーター創業者のレイ・ダリオ氏も8月21日(金)、自身のLinkedIn投稿で、米財政に変化がなければ「3年以内(前後2年の幅あり)」に債務危機が訪れる可能性があると指摘し、資産の10〜15%を金に振り向けることを提言しています。
結果、脱米ドルの流れは一時的な投機というより、構造的な話になりつつあります。
★ザイFX!で人気の西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では、タイムリーな為替予想や実践的な売買アドバイスなどをメルマガや会員限定ウェブサイトで配信! メルマガ登録後10日間無料です。
円への波及は限定的。本命は豪ドル/円などのクロス円か
ディベースメントトレードによる米ドル売りは、ユーロや「ヘイブン(避難)通貨」とされるスイスフラン、そして金との相関が高い豪ドルに対しては、比較的素直に各通貨の上昇につながっています。
これらの通貨は「米ドル以外の受け皿」として買われやすい立場にあるためです。
一方で円は、同じように財政・債務問題を抱えている通貨として見られているためか、この流れに乗り切れていません。
理屈のうえで、米ドル安は円高圧力(円安修正の追い風)になるはずですが、実際には円は買われ切らず、膠着した値動きが続いています。
つまり、足元のディベースメントトレードでは、米ドル売りの受け皿として円よりもユーロやスイスフラン、豪ドルなどが選ばれやすく、米ドル/円には米ドル安が素直に反映されにくい状況です。
だとすれば、豪ドル/円やスイスフラン/円といったクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)を押し目で買っていく方が、このテーマを取りにいくには効率的ではないかと考えています。
米ドル/円については、すでに協調介入が入った経緯もあり、160円台より上は極めて重いレジスタンスとして意識されています。
ただし、日銀の連続利上げ路線が明確になるまでは、米ドル/円で米ドルを売りにいくのは時期尚早であり、様子見が妥当でしょう。
このように、ディベースメントトレードは米財政不安を起点に米ドルから金、ビットコイン、そしてユーロ、スイスフラン、豪ドルへと資金が向かう構図として、しばらく意識しておく必要があるテーマです。
円については単独で買われにくいことから、当面は豪ドル/円やスイスフラン/円といったクロス円の押し目買いで対応するのが妥当と考えています。

(出所:TradingView)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は10日間の無料体験期間がありますので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
















![ヒロセ通商[LION FX]](/mwimgs/9/7/-/img_975127cf2c6be2ac1a68a003ef3669c022946.gif)








株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)