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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

米ドル/円相場にとって大きな転換点か?FOMCと日銀が相次いで利上げへ。「何も決定していない」ウォーシュ議長は市場予想通り利上げに踏み切るのか?それとも…!?

2026年09月16日(水)19:51公開 (2026年09月16日(水)19:51更新)
志摩力男

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市場の織り込みは90%超!ウォーシュ議長は利上げするのか?

 9月16日(水)FOMC(米連邦公開市場委員会)、18日(金)日銀金融政策決定会合。今回の会合はいつもと違い、今後の相場を決定づける重要な会合になりそうです。

 まずは、FOMCについてです。

 市場は0.25%の利上げを90%以上の確率で織り込んでいます。

CMEのFedWatchツールより
CMEのFedWatchツールより

(出所:CME

 パウエルFRB議長下のFOMCであれば、これだけ市場が織り込んでいる場合、織り込みを追認する格好で利上げします。そうでなければ市場が混乱するからです。

 また、そうでない場合は、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙のニック・ティミラオス氏を通して、そうはならないと「リーク報道」がなされ、市場混乱を避けました。

 しかし、ウォーシュ新FRB議長は「フォワード・ガイダンス」を完全に否定します。仮に9割の確率で市場が0.25%の利上げを織り込んでいたとしても、突然それとは違う決定がなされる可能性は十分ありえます。

 8月28日に行われたジャクソンホール会議におけるウォーシュ議長の講演は大変タカ派的に読める内容でした。

 知的で、良く練られた文章です。最初のハイキングの紹介が印象的ですが、この部分がもっとも重要なのだと思います。

 過酷なマラソンのような死の行軍(steely marathon death marches)のコーン流と、もっとゆったりとした気楽な散策(much more leisurely pace, an easy stroll)のバーナンキ流を対比させていますが、ウォーシュ氏は、かつてバーナンキ氏の量的緩和政策を批判してFRBを辞任しています。

「今日はコーンの日か、バーナンキの日か」を自問するようにという冗談から始まっていますが、疑うべくもなく、自らはコーン流だという宣言です。

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もし織り込み済みでも利上げすれば米ドルにはポジティブか

 ドナルド・コーン氏は、あのグリーンスパン氏が「メンター」と呼ぶほどの、史上最強のFRB副議長と言われた人です。バーナンキ氏ではなく、コーン氏がグリーンスパンの後を引き継いだら、リーマンショックはなかったかもしれません。私の知る債券市場関係者はそうとまで言い切ります。

 そして講演の最後の部分、65カ月間続いてきたインフレの高止まりは紛れもなく中央銀行の責任で、基調的なインフレ率がはっきりと、十分な速度で、目標に向かっていると確信できない場合「我々にはやるべき仕事がある(we have work to do)」と明言しました。

 このフレーズを見て、9月16日のFOMCでの利上げを示唆したと解釈する人も多くいます。

 しかし、その直後に「私は今日、ある決定ではなく、ある規律に身を捧げることを誓ってここに立っています(I stand here today committed to a discipline, not to a decision)」とも言っています。つまり、何も決定していないのです。

 コーン流は単純にタカ派、ハト派ではなく、規律派とも言うべきもので、簡単にヒントを与えはしないのでしょう。

 市場は90%以上利上げを織り込んでいますが、それでも利上げすれば、最初の反応としては、米ドルに対してポジティブでしょう。

 トランプ大統領に非常に近い立場にあるにも関わらず、利上げするのは、大変なプレッシャーだと思います。

 また、ウォーシュ氏がFRB議長になったことで、ウォーシュ氏、そしてベッセント米財務長官、2人のかつての上司、スタンレー・ドラッケンミラー氏に対する注目が高まっています。

 ドラッケンミラー氏は2人に配慮してできるだけ発言しないようにしているようですが、FT(フィナンシャル・タイムズ)紙の報道で米金利はまだ低いと発言し、それが米金利上昇を招きました。

 この中で、米ドルに関して「AI開発において米国が世界的に圧倒的な優位性を持っているため、『米ドルを空売りするのは怖い』と述べ、欧州はAI開発においてまったく及ばない」と述べています。

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日銀金融政策決定会合での0.25%利上げも完全に織り込んだ

 日銀に関しては0.25%の利上げが完全に織り込まれています。日経新聞もリーク報道を流しています。


日銀利上げ1.25%へ 物価上振れを抑制、9月決定会合3カ月ぶり、ペース加速

(出所:日経新聞

 高田創日銀審議委員は、0.50%の利上げを提案するかもしれません。また、今後は利上げのペースを半年に1回ではなく、3カ月に1回程度のペースにする示唆があるかもしれません。

 単純に0.25%の利上げだけでは、円安の勢いを止められない可能性が高い。植田総裁の会見等で、タカ派的な発言を散りばめる必要があるでしょう。

 タカ派的な姿勢が十分でない場合、会見後に円安方向に相場が動くケースは過去良く見られました。

 しかし、現在はベッセント氏からの政治的プレッシャーで円高になっている特殊なケースです。円が十分に強くならない場合、ベッセント氏は相場が変わるまで圧力をかける可能性もあります。

 米ドル/円はベッセント氏の圧力で円高方向に向かいました。1回目は日米協調介入で、2回目はG20の場において日本に対し「リフレ政策をやめよ」と発言したのです。

米ドル/円 4時間足
米ドル/円 4時間足

(出所:筆者提供・TradingView

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為替市場のファンダメンタルズ分析3つのアプローチ

 米ドル/円は高値164円近辺から13円下落しました。それでも「介入ではマーケットのトレンドは変わらない」との声が良く聞こえます。

 もちろんファンダメンタルズがもっとも重要です。しかし、為替市場のファンダメンタルズとは何か?通常3つのアプローチが議論されます。

ファンダメンタルズ分析(3つのアプローチ方法)
ファンダメンタルズ分析(3つのアプローチ方法)

(※筆者提供)

 アセット・アプローチというのは通常の為替分析です。金利の高い国の通貨が買われる、株式リターンの高い国の通貨が買われるということです。

 日本はいまだに実質金利がマイナスなので、この分析では円安方向が示唆されます。しかし、金利が十分に高くなれば、米ドル安・円高となる可能性もあります。

 次にフロー・アプローチとは、貿易収支、経常収支分析です。最近ではデジタル赤字が話題ですが、インバウンド需要から旅行収入の黒字がデジタル赤字を相殺しています。貿易収支は、このところ原油価格が上昇しているので、今後赤字になることが想定されます。

 しかし、日本は第一次所得収支が大幅に黒字です。金融収支の黒字が日本国内に還流すれば、経常黒字が円の強さにも反映されるはずです。

 そして、購買力平価でみた円はあまりにも安い。IMF(国際通貨基金)が試算する円の購買力平価は「1ドル=90円前後」です。しかし、購買力平価がマーケットに反映されるにはものすごく時間がかかります。

 ただ割安なことは事実なので、他のファンダメンタルズが改善すれば、一気に購買力平価の方向に修正される「可能性」は常にあります。

 円安が語られる時、常に金利差や日本の潜在成長率の低さが強調されます。そこにフォーカスが当たれば、円安しかないように見えます。しかし、あまりにも割安であることに市場の関心が移れば、円安が修正される可能性はあります。

 今はそのタイミングでないかもしれないですが、これから先、ベッセント氏はしつこく日本のファンダメンタルズにも手を突っ込んでくるでしょう。事実上の宗主国からの要求は断りにくいのです。

米ドル/円 月足
米ドル/円 月足

(出所:TradingView


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