米ドル/円よりクロス円が円高の主役か。ベッセント米財務長官が「胴元は私だ」とけん制!
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 それでは叶内さん、さっそく先週(9月7日~)の株の振り返りからお願いします。
MC叶内 連休明けの米国株式市場は、中東情勢の緊迫化とインフレ指標に圧迫される形で下落しました。
金曜(9月11日)に戻したものの、S&P500が前週末比0.8%安、ナスダック総合指数は0.7%安と小幅反落し、NYダウは1.6%安と続落しました。
支えになったのは一部半導体関連とビックテックで、フィラデルフィア半導体指数SOXは0.8%高と2週連続高、マグニフィセント・セブン指数(※)は0.6%高で3週連続上昇です。
(※マグニフィセント・セブン指数とは、米株式市場を代表するテクノロジー企業であるアルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディアの7社の株価を基に算出される指数のこと)
フーシ派が要衝モカ港を制圧したと報じられ、イラン戦争長期化への懸念から北海ブレントが節目の100ドルを超え、米10年債利回りは5%に急接近しました。
トランプ米大統領が9月9日(水)の共和党大会で、共和党が上下両院の多数派を維持すれば、米国の成人市民1人当たり5000ドル(約77万円)を支給すると述べたこともあって財政懸念も深まり、超長期債の買い戻し(バイバック)の効果は見られませんでした。
先週注目された物価指標(8月PPI(卸売物価指数)9月10日(木)発表、8月CPI(消費者物価指数)9月11日(金)発表)は、ともにインフレの根強さを示す内容と受け止められました。
4日(金)あたりからAI・半導体関連株の上昇が目立っていたのは、ヘッジファンド「シチュエーショナル・アウェアネス」がロングポジションを再構築したため、というのが市場の主な見方です。
シチュエーショナル・アウェアネスと言えば、元OpenAIの研究者であるレオポルド・アッシェンブレナー氏が設立したヘッジファンドで、保有していた株の損失が拡大し、その大半をシタデルに売却したことは記憶に新しいところ。
権利行使価格などの取引条件を自由にカスタマイズできるオプション取引である、フレックス・オプションを活用しているそうです。
オラクルの決算で、企業のAI投資の見通しが強いと示されたことも、AI・半導体関連株の買い材料とみなされました。
東京市場でも中東情勢悪化に伴う原油高と、長期金利上昇への警戒感から売り優勢でした。為替水準が急速に動いたことも買い手控え要因となったかもしれません。
日経平均は前週末比1009円(1.5%)安の6万4011円と2週連続で下落しました。TOPIXも1.8%安と続落。金融株も軟調でした。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 先週の為替市場で最大のポイントとなったのは、ベッセント米財務長官の「I am the house」というコメントでした。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は152円の重要サポートを割り込めば147円まで下落も! 「胴元は私だ」ベッセント米財務長官が異例の挑発、日銀の利上げ観測で円高加速に警戒(9月10日、西原宏一)
カジノで最後に勝つのは「胴元だ」という言い回しで、要するに「米ドル高・円安方向に賭けても当局には勝てない」というけん制です。
米財務長官の苛立ちがにじむ発言で、これで米ドル/円の上値はさらに抑えられることになりました。
ただし、こうした発言が出ると短期筋の米ドル/円ショートが一気に積み上がります。従って、一方的に下げ続けるわけではなく、ある程度の戻りも想定しておく必要があると考えています。
大きな流れは先週から変わらず、円高進行です。
もっとも、「ヘッジファンドの思惑」コラムでも取り上げましたが、今回の円高は米ドル/円主導ではなく、スイスフラン/円をはじめとするクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が主役になるとみています。
理由は、8月の米CPIが根強いインフレを示したことです。今週(9月14日~)のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ織り込みは一時90%程度まで上昇しました。
米利上げ観測による米ドル高要因と、日銀の利上げ観測による円高要因が同時に出ている状況ですが、足元では円高圧力が上回り、米ドル/円は155.00円を割り込んで一時152円台まで下落しました。
一方で、スイスフラン/円は188円割れまで続落しています。円高の勢いは、対米ドルよりも対スイスフランや対ユーロのほうがはっきり出ています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
参考までに、ゴールドマンサックスも、戦術的には円ロングに妙味があるとしたうえで、米ドルを売って円を買うのではなく、ユーロを売って円を買うほうが効果的だと整理していました。クロス円主体という点では、私の見方と同じです。
ただし、同社の予想レートは1年後の米ドル/円が165円と円安方向で、足元の円高はあくまでも調整という位置づけです。
来年(2027年)の流れまで、目先のポジションのリスクに織り込むのは難しいものの、中期の流れをつかむという意味では頭に入れておきたいところです。
この流れが本物かどうかを確認するのが、今週のFOMCと日銀会合(日銀金融政策決定会合)です。
それでは叶内さん、今週のイベントと株の注目点をお願いします。
★ザイFX!で人気の西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では、タイムリーな為替予想や実践的な売買アドバイスなどをメルマガや会員限定ウェブサイトで配信! メルマガ登録後10日間無料です。
米ドル/円は日米同時利上げで乱高下も。スイスフラン/円は戻り売り継続
MC叶内 今週は日米の金融政策会合が最大の関心事です。
9月15日(火)~16日(水)開催のFOMCでは、利上げがあってもなくても、金融市場が荒れる可能性が指摘されています。高官発言にも反応がありそうです。
17日(木)~18日(金)開催予定の日銀会合は6月会合以来、3カ月ぶりの追加利上げが織り込まれていますが、植田総裁の会見ではその後のペース、最終到達点をさぐる質問が出るでしょう。利上げの負の影響についてどのように言及するかも注目しています。
そのほか、9月17日(木)にBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])、9月24日(木)にSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が金融政策を発表します。
日米の中銀イベントが終わると、18日(金)が米国メジャーSQです。そして日本はシルバーウイークに突入してしまいます。ポジションがとりにくいでしょう。
米AI企業アンソロピックのダリオ・アモデイCEO(最高経営責任者)が12日(土)、自身のブログで「われわれはAI開発を遅らせなければならない」と主張したことが伝わっています。7月に明らかになった「暴走」や悪用のリスクを理由に挙げました。
OpenAIのサム・アルトマンCEOもXで、アモデイ氏に「賛同する」と投稿。数週間前に「AI危機論はおかしい」と言っていたイーロン・マスク氏もXで「ダリオは正しい」と反応しました。
世界でAI開発をリードするライバル各社のトップが同様の考えを示したのは驚きで、安全性や規制を巡る今後の議論に影響を与えそうです。
また、OpenAIは年内の上場を見送ると述べたとも報道されています。短期的には半導体投資が減速するとの思惑を招きやすく、株式相場にはマイナスの影響があるでしょう。
ただ、米中の覇権争いや安保の観点からも、AI開発を止めることは容易ではなさそうですし、中期ではAIを安全に使うためのソフト、セキュリティ関連の需要が増えることも考えられます。
経済指標は、国内では16日(水)に7月機械受注と8月貿易収支、18日(金)に8月全国CPI、25日(金)に百貨店売上が発表されます。
海外では、米国で16日(水)に8月小売売上高、NAHB住宅市場指数、17日(木)に8月住宅着工件数、18日(金)に8月の鉱工業生産とコンファレンスボード景気先行指数が発表予定です。23日(水)に欧米PMI、24日(木)に米国新築住宅販売件数が出てきます。
中国で8月の鉱工業生産と小売売上高などが15日(火)にまとめて出ます。21日(月)にはローンプライムレートが公表されます。
日米で15日(火)に20年債の入札があります。日米金融会合前ですが、超長期の債券需給が試されることになります。
19日(土)~20日(日)にはドイツでベルリン市議会選挙などが行われます。24日(木)に中国の習近平国家主席が訪米予定です。
高市政権が16日(水)~17日(木)に自民党役員人事・内閣改造に踏み切る公算です。積極財政に前向きな布陣となった場合には、財政拡張への懸念が喧伝されるかもしれません。
企業関連では15日(火)~17日(木)に米カリフォルニア州でAIインフラサミットが予定されており、大手半導体企業やハイパースケーラー(※)の幹部が登壇します。
(※「ハイパースケーラー」とは、クラウドサービスを大規模に構築・運用する企業のこと。アマゾンやマイクロソフト、アルファベット、メタなどが含まれる)
17日(木)から東京ゲームショウ2026が幕張メッセで開幕。今年は21日(月)まで、史上初の5日間開催となります。
28日(月)は配当権利付き最終売買日です。28日(月)から29日(火)には配当再投資の買い需要が発生します。一部試算では1.6兆円の買い需要があるそうです。経験則ではこれを先取りする動きが出てくるでしょう。
為替市場の見通しはいかがですか?
トレーダー西原 今週はまずFOMCに注目です。
OIS(翌日物金利スワップ)市場では90%程度まで利上げが織り込まれており、利上げはほぼ既定路線とみられています。
ポイントは、そこから連続利上げに進むかどうかです。会見で連続利上げが示唆されるようだと、米ドル高の流れが強まります。
その場合、米ドル/円の下値は支えられる一方で、スイスフラン/円やユーロ/円での円高は継続しやすくなります。
そして、もう1つの注目が金曜(9月18日)の日銀会合です。0.25%の利上げはすでに織り込み済みで、焦点はその先にあります。
一部報道にあるように、来年にかけて政策金利が2.00%まで引き上げられるかどうかに注目しています。植田総裁が会見で利上げペースの加速を示唆するようであれば、円高が一段と進行する可能性があります。
ただ、日米同時利上げとなることも考えられるため、米ドル/円は乱高下しやすく、あくまでも戻り売り中心に考えています。
具体的な戦略は、引き続きスイスフラン/円と米ドル/円の戻り売りです。ユーロ/円でも構わないのですが、スイスフラン/円はスワップコストの負担が小さい点が有利です。
加えて、円キャリーからスイスキャリーへ、つまり調達通貨が円からスイスフランに移っていくという見方も、市場で広がりつつあります。この点でも、スイスフラン/円は下押ししやすい環境だと考えています。
米ドル/円は、米国の利上げを控えているため、それまでは下値を試しにくい展開でしょう。レベル感としては、155.00円が上値の目処。152.00円を明確に割り込めば、150円が視野に入ります。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
スイスフラン/円は、SNBが年末まで政策金利を0%に据え置くとの見方がコンセンサスですので、ショートを継続します。
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう!
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は登録後10日間無料解約可能なので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
















![ヒロセ通商[LION FX]](/mwimgs/9/7/-/img_975127cf2c6be2ac1a68a003ef3669c022946.gif)








株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)