「Hope Again」の英国
9月27日(日)から、英国では労働党年次党大会が始まります。7月に就任したバーナム首相にとって、初めての党大会です。
党大会キーワードは「Hope Again」。
バーナム首相は、英国にもう一度「希望」を取り戻すことを掲げており、7月の首相就任演説でも、目先の生活困窮対策への対応とともに、この国の進む方向を示す「10年計画」を年内に打ち出す考えを示しました。
しかし、ここからが現在の英国政治の難しいところで、国民に希望を示したいのは山々ですが、経済を取り巻く環境は決して楽ではありません。
そしてバーナム首相自身が、今後6カ月程度はインフレやエネルギー価格、金融引き締めなどで厳しくなる可能性を認識しているという事で、党大会での首相からのメッセージは「すぐに良くなるとは約束出来ないが、一度悪化した先に10年の改革がある」という時間軸を提示しようとしていると考えられます。
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●止まらないエネルギー価格の上昇
中東情勢を背景にエネルギー価格が上昇しており、英国では電気ガス代の値上げが止まりません。3カ月ごとに見直しがありますが、7月に13%値上げを実施、10月には4%の値上げが決まっており、その次の2027年1月には20~30%(平均25%)の値上げがすでに発表されています。
●容赦ないインフレ圧力
エネルギー価格上昇が止まらなければ、インフレ圧力も同様です。
来年(2027年)1月に平均25%の電気ガス代値上げが実行されれば、2027年上半期にはCPI(消費者物価指数)が最大5%まで上昇してもおかしくないという予想が出てきました。
●苦しいBOEの選択
BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])は9月の金融政策会合で、今後数四半期にインフレ率がさらに上昇する可能性を指摘しています。
ベイリー総裁自身も、エネルギー価格の高止まりが長期化すれば、金融政策をさらに引き締める必要が出てくる可能性があると述べており、市場では次回11月5日(木)の会合で0.25%(25bps)の利上げを予想しています。利上げされれば政策金利は4%へ。
私自身も、10月28日(水)に発表されるバーナム政権初の「予算案」の内容次第でしょうが、11月利上げはほぼ確実だと思っています。
スタグフレーション対策として利上げを迫られるBOEと、好調な景気とインフレ上昇に向け利上げに踏み切る米国。同じ「4%」という政策金利でも、抱えた事情は大きく違ってきます。
●10月28日予算案
バーナム政権が掲げる生活困窮対策、地方への権限移譲、住宅・公共サービス、水道改革などを進めるには、「何をするか」だけではなく、「どうやって財源を確保するのか」が重要です。
その最初の大きな試金石となるのが、10月28日(水)の予算案で、この日には財務省予算責任局(OBR) からのマクロ経済予測も同時に発表されます。
最近の国債利回りの上昇の影響で、財務相が日々の財政運営で使える資金(英語ではhead roomと呼ぶ) が底をつき始めているとのウワサもあり、市場参加者は予算案発表と同時に大きく動くことは間違いありません。

(出所:TradingView)
ここからの英ポンドと注目点
今後、英ポンドがもっとも大きく動くのは予算案発表の直後からと予想しています。
市場参加者は、そこで発表される最新の財政状況とマクロ経済予測をもとに、今後の景気やインフレ動向を分析します。そして、その1週間後に開催されるBOEの金融政策会合での利上げの有無を、瞬時に織り込むでしょう。
英ポンドの買い要因としては、成長を後押しする政策が示され、市場がその効果を確信した場合。
逆に、財政赤字やインフレ圧力の拡大につながり、国債利回りやBOEの金融政策に悪影響を及ぼすと判断されれば、英ポンド売りにつながるはずです。
そして市場がもっとも知りたいのは「発表された政策を実行する財政的ゆとりがあるのか?」、そして「その政策がインフレや金融政策にどう影響するのか?」という点です。
実際に英国で暮らしていて痛感するのは、「希望がない」というよりは、「希望を実現するための財政の余地が極めて限られている」という現実です。果たして10月28日(水)の予算案は、国民にどこまで希望を示せるのか……今後の英ポンドの行方を占う上でも、極めて重要な見極めのポイントとなりそうです。

(出所:TradingView)













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