米ドル/円は「熟柿」でいよいよ円高が加速するか?
先月(8月)のコラムで、フィデリティ投信の重見吉徳氏が使われていた「熟柿(じゅくし)」という比喩をご紹介しました。うまい言い方なので、今回もここから始めさせてください。
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⇒米ドル/円は調整が入れば155.23円の介入安値が視野入りする!? 為替介入ではトレンドは作れない! 結局、日銀が動かなければ円安継続はやむなしなのか(8月13日、西原宏一)
柿は、熟していなければ枝を揺すっても落ちません。逆に熟しきってしまえば、ほんの少し風が吹いただけで自分から落ちる。
相場も同じで、材料そのものより「相場が熟しているかどうか」で反応がまったく変わります。
米ドル/円は7月末に日米の協調介入が入り、160円台が重いことが指摘されるようになりました。ところがそこから先、米ドル/円の下落になかなか加速がつきません。
介入という強烈な材料が出ているのに、下げは鈍い。私はこれを、まだ相場が「熟柿」ではなかったからだと考えていました。
それが先週(8月31日~)、一気に熟しました。そして、いきなり円高が加速したのです。
円高加速のきっかけは2つあります。
ひとつは、ベッセント米財務長官のリフレ派批判です。米財務長官が日本のリフレ政策を名指しで批判し、円安のメリットを説く側にまで矛先を向けました。
もうひとつは、高田日銀審議委員の「利上げ幅は0.25%とは限らない」というコメントです。9月2日(水)、一定のペースにとらわれない機動的な対応や、連続利上げの可能性にも踏み込みました。
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⇒米ドル/円は155円をあっさり割り込むか。152.10円も通過点となり、150円まで下落も! ベッセント米財務長官の円安けん制と日銀の利上げ加速観測で戻り売り継続(9月7日、西原宏一&叶内文子)
どちらも、単体で見れば「まあ、そういう発言もあるだろう」という程度の材料です。そもそも高田審議委員はタカ派で知られていますので、なおさらです。
熟していない相場なら、おそらく何も起きませんでした。しかし、相場が熟していたからこそ、この2つで柿は落ち、米ドル/円は9月8日(火)に一時152円台まで下落しています。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
問題は、落ち始めた柿がどこまで落ちるかです。ここからが本題になります。
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米ドル/円は152.00円が重要な分岐点! 割り込めば次は147円レベルへ
ここで、2021年からの米ドル/円の週足チャートを見てみましょう。

(出所:TradingView)
米ドル/円は2021年1月の102.59円を起点に上昇を始め、2026年7月23日(木)に163.99円の高値をつけました。通算で約6割の上昇です。先進国通貨の値動きとしては、かなり大きな部類に入ります。
ご覧いただくと、2021年の安値を起点に、きれいなサポートラインが1本引けるのがわかります。長期にわたって、この線が米ドル/円を下から支えてきました。5年強、一度も本格的に割られていないラインです。
そして、そのサポートラインが、いま152.00円レベルに位置しています。
米ドル/円は9月7日(月)に154円台、9月8日(火)には一時152円台まで下落し、足元では153円台。すでにこのラインを直接試す局面に入りました。
ここで確認しておきたいのは、152.00円が単なる1本の線ではないという点です。152.10円の年初来安値がほぼ同じ水準にあります。
加えて152.00円は、クリアにブレイクされるまでは「神田ライン」と呼ばれ、極めて重要なレジスタンスとして意識されてきた節目でもあります。
そのため、この152.00円を割り込むのは、そう簡単ではありません。
逆に言えば、この線を抜けたときには下値余地が大幅に拡大する、ということになります。
5年間支えてきたサポートラインを割り込むわけですから、その下では明確な下値支持が乏しくなります。
そして重要なのは、その次に控える水準です。152.00円を割り込んだ場合、次の目標値は147円レベルになります。
2025年10月、高市自民党総裁が誕生する直前に米ドル/円がつけていた水準です。ここまで下げるということは、マーケットが「高市トレード」で上昇した値幅をすべて吐き出すことを意味します。
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日銀の利上げはどこまで進む? OIS市場は来年7月に2%近い金利水準を織り込む
いま円高の燃料になっているのは、日銀の利上げ観測です。
ただ「利上げ観測」と一言で片づけるには、市場が織り込んでいる水準がかなり踏み込んだものになっています。
OIS(翌日物金利スワップ)市場を見ると、ポイントは2つあります。
第1に、9月17日(木)~18日(金)の日銀会合(日銀金融政策決定会合)での0.25%の利上げについて、OIS市場では106.7%まで織り込まれている点です。
これは、0.25%の利上げ1回分を100%とした場合の数字で、市場は利上げをほぼ既定路線とみています。
第2に、そしてもっとも重要なのが、来年(2027年)7月時点のOISから算出される予想金利(インプライド金利)が1.908%と、2%近い水準に達している点です。
超低金利が当たり前だった日本で、これほど短期間に2%近い金利水準が意識される――為替市場にとって重要なのは、日米金利差の縮小幅だけではなく、その変化の速さです。
そして、ここにベッセント米財務長官の強烈なコメントが重なりました。
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ベッセント米財務長官が円売りトレーダーをけん制! 「I am the house now(今は私が胴元だ)」
米国時間の9月8日(火)、ベッセント米財務長官がテキサス州のサザン・メソジスト大学で開かれたイベントで、円売りを仕掛けるトレーダーを以下のように強烈にけん制しました。
「我々が円で介入するとき、私は日銀が何をするか、日本の政策当局が何をするかについて、かなり良い洞察を持っている」
「私には情報の非対称性がある。今は私が胴元だ(I am the house now)。私に逆らって賭けたければ、好きにするといい」
「I am the house」はカジノの比喩です。客がどう賭けても、最後に勝つのは胴元。つまり「勝ち目はないぞ」という挑発にほかなりません。
一国の財務長官が、他国通貨の売り手に向かってここまで言うのか、というのが率直な印象です。
しかも米ドル/円は、今年(2026年)の高値からすでに10円以上下げています。その局面で、あえてこのコメントが出てきました。裏を返せば、何かを焦っているのではないか、という見方もできます。
ただ、いずれにせよ、短期筋にとって円ショートで攻めにくい局面になったのは確かでしょう。思わぬ円高加速には警戒です。
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