フランス国債急落でユーロ全面安! 市場のテーマはキャリートレードから欧州ソブリンリスクへ
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 それでは叶内さん、さっそく先週(9月28日~)の株の振り返りからお願いします。
MC叶内 米国株は週前半に下落、後半に持ち直したものの、週間ではNYダウ(-1.3%)とS&P500(-0.3%)が下落、ナスダック総合指数(+0.5%)のみが上昇しました。
AI・半導体関連の大型株がけん引し、ナスダック100は週間で約+1%となって過去最高値を更新。ナスダック総合指数は金曜(10月2日)に取引時間中の最高値を付けました。エヌビディアは金曜に史上最高値237.88ドルを付け、時価総額は5.7兆ドルを超えました。
一方、市場全体の裾野は弱い状態です。9月はS&P500構成銘柄の約75%が下落し、金融セクターは月間で約6%下落しました。
下落要因は金利です。米国とイランの対立で原油が急騰し、米10年債利回りは一時5.34%と2002年以来の高水準になりました。
週後半は、PCE(個人消費支出)物価の鈍化とFRB(米連邦準備制度理事会)高官の発言で10月利上げ観測が後退しました。
特に注目されたのは、9月29日(火)のウィリアムズNY連銀総裁の発言です。年内にもう1回の利上げは適切かもしれないが、「急ぐ必要はない」と述べています。金曜の雇用統計が非常に弱かったことで、この流れが決定的になり、金曜は米国主要3指数とも上昇しています。
G7と欧州が最大1億バレルの戦略備蓄の放出を検討すると報じられ、原油が下落したことも株式市場には追い風になりました。
米国のAI・半導体株高を受けて日経平均は前週末比1945円(2.9%)高の6万8309円と、3週連続で上昇しました。10月1日(木)早朝に米マイクロンが発表した6-8月期決算は売上高、純利益ともに大幅増。9~11月期のガイダンスも市場予想を上回る好調な内容だったことで、一気に市場心理が強気に傾いたようです。
一方、TOPIXは0.9%安と3週ぶりに反落しました。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 先週の為替市場の主役は、米ドルでも円でもなく、ユーロでした。
週初は、前の週から続く円安けん制の流れでスタートしました。9月28日(月)には三村財務官が、円の過小評価が問題だという日米の共通認識は「非常にクリア」だと発言しました。米ドル/円は157円台前半から、一時156円台前半まで押し下げられています。
ところが週の後半、市場の目は一気にフランスへ向かいました。
10月1日(木)、フランス政府が2027年予算案を議会に提出しました。財政赤字をGDP比5.4%から5.0%へ縮める計画です。ただ、計画どおりに進んでも債務はGDP比122%まで増え続けます。しかも少数与党の議会で、予算案がそのまま通るかは分かりません。
これを嫌気してフランス国債が売られました。独仏10年債利回りのスプレッドは一時150bpを超え、2011〜12年のユーロ危機以来の水準まで拡大しています。
背景には、ヘッジファンドが夏から積み上げてきた「フランス国債買い・ドイツ国債売り」のポジションがあります。ルペン氏の支持率上昇と不評の予算案で、これが一気に巻き戻されました。損失が売りを呼び、売りがさらに損失を呼ぶ展開です。
その結果、ユーロは全面安となりました。ここで注目したいのが、スイスフランの動きです。
先週前半まで、市場は「キャリーの調達通貨は円からスイスフランへ」という流れにあり、スイスフラン/円は年初来高値の200円台から続落していました。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は152~158円中心のレンジ相場が継続か。日銀「反対2票」で利上げも「胴元」発言も空振り。キャリーの調達通貨は円からスイスフランへ(9月24日、西原宏一)
しかし、今回のフランス国債の急落で、市場の関心はキャリートレードから、欧州各国の財政・信用不安、いわゆるソブリンリスクへと移りました。
そのため、スイスフラン/円をショートしていた投資家の一部は、ユーロ/円のショートへ切り替えています。スイスフラン/円のショートにユーロ/スイスフランのショートを加えれば、スイスフランの売り買いが相殺され、実質的にユーロ/円のショートになります。
この動きもあって、ユーロ/スイスフランはあっという間に150pips程度急落しました。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
金曜(10月2日)の米9月雇用統計は予想を大きく下回りました。10月の利上げ確率は約3割から約2割に低下しています。
ただ、米10年債利回りは、発表直後に低下したあと、すぐに5.3%台へ戻しています。弱い指標でも米長期金利が下がりにくいことは、総じて米ドル高要因となります。
それでも、米ドル/円は当局による円安けん制が上値を抑えているため、ユーロ安はそのままユーロ/円の下落につながり、ユーロ/円は大きく値を下げています。今週もフランスの動向に注目が集まりそうです。
それでは叶内さん、今週(10月5日~)のイベントと注目点をお願いします。
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ユーロ/円は戻り売り! フランス問題の波及とECBの対応が今週の焦点に
MC叶内 比較的材料の少ない週で、引き続き金利動向を見ながらの展開になりそうです。
金利上昇が続くようだと、景気敏感中心に全体の上値は抑えられそうです。一方、AI開発の規制強化への懸念は今のところ後退していて、金利高の局面でむしろ成長株のAI・半導体関連が選好される流れが継続するとの見方が多いです。
10月に入り、季節性が徐々に改善する点は安心材料です。日本は3連休を控えています。
先週、米利上げ観測は後退したものの、米長期金利は高止まりしています。米3年・10年・30年債入札や10月7日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨は注目されます。
日本では5日(月)に臨時国会が召集され、高市首相の所信表明演説も予定されています。リフレ政策を否定する発言もありましたが、あらためて財政拡張が意識されないか、一応チェックです。
6日(火)に10年債の入札と植田日銀総裁の全国証券大会での挨拶、8日(木)に30年債の入札があります。
経済指標では、米国で5日(月)にISM非製造業景況指数が発表されます。サービス業の幅広い景況感を確認するとともに、価格指数にも注目したいです。9日(金)にはミシガン大学消費者信頼感指数が発表されます。期待インフレ率に注目です。
国内では、7日(水)に8月毎月勤労統計と景気動向指数、9日(金)に8月家計調査が発表されます。9日(金)はオプションSQ(特別清算指数)算出日です。
国内は2月期ものなどの決算も出てきます。8日(木)にファストリ、7&i、9日(金)に安川電機です。
安川電機は1Qに、基幹システム移行に伴う生産・出荷の混乱で減益となり、発表翌日には株価がストップ安まで売られました。その後、しっかり復旧しているか確認したいです。
今週はノーベル賞ウイークです。受賞の関連企業やテーマで物色が盛んになりそうです。高市首相の所信表明演説も物色の手掛かりになるかもしれません。
7日(水)にはTOPIXのウエイト変更や新採用銘柄が発表される予定です。スタンダードやグロース市場から新規採用となる銘柄の動きに関心があります。
為替市場の見通しはいかがですか?
トレーダー西原 今週はまず、フランス問題が一過性で終わるのかどうかに注目です。
焦点はECB(欧州中央銀行)の動きです。ECBには2022年に作った国債の買い支え策「TPI」があります。ただしTPIの対象は「理由のない市場の混乱」です。財政悪化や予算の行き詰まりという理由がある今回の売りには、使いにくいのが実情です。
しかも、ユーロ圏のインフレ率は3.8%と3年ぶりの高さで、ECBは6月と9月に利上げしたばかりです。ここで国債を買い支えれば、利上げと逆の効果になってしまいます。ドイツ連銀のナーゲル総裁も「ECBが注力するのは物価の安定だけだ」と述べています。
ECBが動くかどうかの決め手は、フランスの問題がイタリアなど他の国へ波及するかどうかです。今のところ、イタリアのスプレッドは広がったとはいえ、過去と比べれば低い水準にとどまっています。
一方で、ユーロの急落は行き過ぎという見方も出ています。
参考までに、ゴールドマン・サックスも先週末のレポートで、CFTCのデータからユーロと英ポンドが「売りに極端に偏った」状態に入ったと指摘しています。同社の分析では、この状態のあとは8週間で約2%上昇する傾向があるそうです。
では、円はどうでしょうか。ここで注目したいのが、日本の投資家の動きです。
WSJ(ウォールストリートジャーナル)によると、日本などの長期投資家は、国内やドイツで十分な利回りが取れるようになり、フランス国債で利回りを追う理由が薄れているそうです。日本の10年債利回りは3.1%です。
これは、ゴールドマン・サックスが米ドル/円予想を引き下げた理由の1つである「日本の投資家が国内に資金を戻す」とも重なります。
また、ゴールドマン・サックスはスイスフランについて、先週のスイスフラン高を受けても「SNBはさらなるスイスフラン安を容認する」として、スイスフランを調達通貨にするテーマを維持しています。
今回のスイスフラン高は、欧州の信用不安による一時的な逃避と見ているわけです。
ただ、市場のテーマは「キャリートレード」から「欧州のソブリンリスク」へと移りつつあります。
加えて、ユーロはフランス問題で売られ、円は日米当局の円安けん制と日本の投資家の国内回帰で買われています。
2つの材料が同じ方向を向いているのは、ユーロ/円です。
具体的な戦略は、ユーロ/円の戻り売りです。ただし、ユーロのショートは溜まっているので、追いかけて売るのではなく、戻りを待って売りたいところです。

(出所:TradingView)
米ドル/円も引き続き戻り売りです。160.00円を日米の“防衛ライン”とみており、レンジの上限と考えます。まず目指すのは155.00円です。これを明確に割り込めば、年初来安値の152.00円が視野に入ります。

(出所:TradingView)
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう!
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