よくカン違いされて、FRBは米国の中央銀行みたいな組織で、政府機関であると思われがちだが、じつは、FRBはれっきとした私有銀行で、株主のほとんどはウォール街の有力銀行で占められている。
この仕組みは英国の中央銀行であるBOE(イングランド銀行)と同様で、日本や中国をはじめとするアジア人の感覚では、なかなか理解しがたいものだ。
「中銀の独立性」が叫ばれる昨今で、英米との本質的な違いに気づかず、まったく次元の違うイメージを持たれている方は多いのではないかと思う。
余談だが、日銀の仕組みも、FRBと同様に国有ではなく、私有銀行であれば、例のバブル崩壊は避けられなかったとしても、もう少しマシな結果に着地したのではないかと思うときもある。
このあたりの話はなかなか奥深いので、あまり深追いし過ぎるとキリがないので、話を戻すことに…。
要するに、FRBという組織の性質上、FRBはウォール街の利益を守らなければならず、また、これまでも、そのような任務を果たし続けてきたのである。
したがって、当面の「QE3」実施の可能性は遠のいたが、本格的な株安の局面が訪れた場合、FRBはまた量的緩和政策に踏み切るだろう。
先週のコラムでも指摘したように、「QE2(量的緩和政策第2弾)」が景気回復に作用しなかったとしても、株価対策としては十分な効果があった。そうであるならば、株主のために、FRBが量的緩和政策に踏み切ってもおかしくはない(「FRBは麻薬の誘惑から抜け出せなくなる。『QE3』に踏み切る可能性は小さくない!」を参照)。
■「QE3」が発動されるタイミングを計る方法は?
当然のように、ウォール街も「あうんの呼吸」で、FRBの政策に対して援護射撃的な動きをしなければならない。
「QE1(量的緩和政策第1弾)」の発動前に米国株が下落したように、今回も5月に入ってから、米国株が反落してきた。
これは、市場心理の悪化を演出することで、世論を巻き込んでFRBに「QE3」の実行を迫るものだ。
さらに、株価の下落で消費マインドを冷え込ませ、「QE3」不要論をけん制する意味合いがあることも、米国内で「非主流」と呼ばれるエコノミストがよく指摘している。
ゆえに、このようなロジックを信じていれば、これから「QE3」が発動されるタイミングを計る場合、その前兆として、株式市場の急落がもっとも有力なシグナルとなる。
もし、株の急落があれば、一時的にはリスク回避で米ドルが買われる。だが、「QE3」の実施で結局は米ドルが売られる。こういったシナリオを常に念頭におくべきである。
現時点では「QE3」の可能性は遠ざかったが、これで「米ドル安」のトレンドが終えんしたという判断は性急であろう。
■米ドルの「思わぬ反発」が起こる可能性が浮上した!
ところで、最近、我が家のスパイ猫「エリオット君」から届いた1つの情報がとても気になる。この情報が正しければ、マーケットに思わぬ波乱が引き起こされる可能性があり、一転して「米ドル高」を進行させる要素となり得るため、意識せざるを得ない。
驚くなかれ、その情報はなんと、IMF(国際通貨基金)のストロスカーン前専務理事の逮捕と絡んでいる。
ストロスカーン氏が引き起こした「珍事件」は周知のとおりで、その詳説は省くが、この事件を聞いて、はじめから納得できない方は多いと思う。
真相はどうであれ、なんと、あのプーチン・ロシア首相が「ストロスカーン氏は米国の情報機関にはめられた」と主張しているから、一層疑わしい。
プーチン氏の主張によると、米国の情報機関がある事実を隠すため、ストロスカーン氏にワナを仕掛けて逮捕した。なぜなら、ストロスカーン氏はその事実の証拠を握っており、それを米国に迫っていたからだ。
それでは、その事実とは何か? なぜ、米ドルの反発をもたらす可能性があるのか?
それについては次回のコラムで明かすが、金(ゴールド)と大きな関連があることだけは書いておこう。
(出所:米国FXCM)
つまり、今後の米ドルのトレンドを占うには、金の動向が最も重要なパラメーターであると意識せざるを得ないという蓋然性が強まる。
また、一時的に弱まっている金と米ドルの逆相関性が再び強まることも念頭におく必要があるだろう。
言い換えれば、米ドルの「思わぬ反発」があれば、それは他ならぬ、金の暴落を意味することである。
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