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ジャクソンホールでのウォーシュFRB議長のタカ派発言を受けて、市場は「米ドル高」に
米ドル/円は、切り返しを継続している。先週(8月24日~)、再度160円超えの大引けをもって強含みの展開を示唆したが、ジャクソンホール会議におけるウォーシュFRB(米連邦準備制度理事会)議長の「タカ派」発言が効いた結果だとみる。
言い換えれば、それが「円安」につながったというよりも「米ドル高」につながったという方が、より正解だと思われる。

(出所:TradingView)
ジャクソンホール会議で、ウォーシュ議長は今夏(2026年)のインフレデータは予想より良かったが、根本的な傾向が改善したとはいえないと言い、金融情勢が引き締まっているとは言い難いと主張。さらに、物価安定を実現するのがFRBの役割だと強調した。まとめてみると、市場関係者の事前の予想よりかなり「タカ派」的だったことは間違いない。
当然のように、FRB議長の発言を受け、ドルインデックスは大きく反騰してきた。一気に200日移動平均線(200日線)を超え、100日線付近の99.70で大引け、7月末からの下落波動をいったん緩和させた。

(出所:TradingView)
だからこそ、米ドル/円の160円以上の大引けがあっても、むしろ当然の成り行きと言える上、円安の視点のみでは語れないと思う。
要するに米ドルの全面反発だ。
もともとドルインデックスは200日線を下回り、5月安値の97.63をこれから割り込んでいってもおかしくなかったが、FRB議長の発言にいったん阻まれた格好だ。
ウォーシュFRB議長のタカ派発言だけで、米ドル高基調へ完全復帰するのは難しいとみる理由
しかし、結論から申し上げると、議長の「タカ派」発言だけでは米ドル安の流れを修正できない上、仮に米利上げがあっても米ドル高の基調へ完全復帰するにはハードルが高いと思う。
なにしろ、米財務省の国債買い入れ倍増計画がリリースされたばかりだ。同計画に関して、一部過激な市場関係者は「米国版YCC政策」と呼び、激しく批判している。ゆえに、金利動向はもちろん重要だが、その「米国版YCC政策」に比べ、利上げがもたらす米ドル高は限定的で、米ドルの信頼性を棄損する「米国版YCC政策」の方がより本質的な要素として効いてくるのではないかと思われる。
YCCとは、「イールドカーブ・コントロール」の略で、日本銀行が導入していた長短金利操作のことを指す。日本では、景気回復のために長期金利などを目標水準に抑える政策であった。
米国の国債買い入れ倍増計画の終着点はそこではないものの、長期国債買い入れを通じて、金利のイールドカーブを管理(コントロール)したい意図は同じなので、この点において「米国版YCC政策」と呼ばれるわけだ。
日本のYCC政策との違いは、FRBが利上げ志向であることと国債の買い入れを米財務省が行うこと
もちろん、日本のYCC政策と根本的に違うところも大きい。
1つは、FRBの利上げ志向だ。中央銀行として日銀とまったく違う立場にある。
もう1つ重要な違いは、長期国債の買い入れはFRBではなく米財務省の実施であることで、これは日本のYCCとの決定的な違いだと言える。
この決定的な違いがあるからこそ、今回、米財務省の国債買い入れ倍増計画のインパクトがより大きく、またこれから米ドルの信頼性を棄損する恐れが大きいかと思う。日本のYCCの実施が、なぜ財務省ではなく日銀の実施かを考えてみれば、ヒントが見つかる。
日本の国債の買い入れが、財務省ではなく日銀主導で行われた理由は、それが「政府の資金調達(財政政策)」ではなく、市場の通貨量や金利をコントロールする「金融政策」の手段だ、という定義や認識であるからに尽きる。
財務省(政府)が自ら発行した国債を自ら主導して買い入れ、事実上お金を刷って借金を穴埋めするようなことになるから、一般論として通貨の価値が暴落し、悪性のインフレーションを引き起こす恐れが大きいと認識されている。
米国は基軸通貨とされる米ドルを発行する主体として、その恩恵が多いぶん、本来責任や制限も厳しくなるはずだが、トランプ政権の今回の決定はかなり異例だと言わざるを得ない。
米財務省は過去にも同じ政策を実施した前例があるが、現在の事情と大きく異なる。米財務省による国債の買い戻し(バイバック)のおもな前例としては、巨額の財政黒字を背景に実施された2000年~2002年頃の例があるが、現在は巨額の財政赤字を背負い、米政府財務総額が40兆米ドルという史上最高記録を突破したばかりだ。
また、米財務省による国債の買い戻し自体は市場の流動性改善を目的として2024年5月に数十年ぶりに再開された定期プログラムがあったが、目下、米国債市場の流動性は特に問題視されていない。
米政府は債務対策として米ドルの信頼性を犠牲に!? これから価値が棄損されていく可能性が高い米ドルの高値は追えない
筆者が「買い入れ」と「買い戻し」を使い分けしてきたのもそのためだ。
言ってみれば、今回の米財務省の決定(8月19日)は異例なので、「買い戻し」というより単純に「買い入れ」の性質が強いかと思われる。
米長期金利(30年債利回りなど)が約19年ぶりの高水準へ急騰したことを受け、米財務省は1回当たりの買い戻し上限額を従来の20億米ドルから40億ドル(約6340億円)へ倍増させる緊急措置だったことから考えて、国債の買い入れは単に金利上昇を抑制する目的であったことは明らかだ。
前述のように、米政府は巨額の財政赤字を抱えた目下、自ら発行した国債を自ら主導して買い入れているから、事実上お金を刷って借金を穴埋めしようとしていることも明らかだ。だからこそ、利上げしても米ドルの懸念を払拭できず、米ドルの価値がこれから棄損されていく公算が大きいとみるわけだ。
米政府の2026年度の利支払い費はすでに1兆ドル規模に達し、純利払い費も9000億ドルの大台を超えている。対GDP比率では、G7各国の中最高なので、米政府は債務対策として米ドルの信頼性を犠牲にする疑いが強い。
ちなみに、財政事情においてボロクソに言われてきた日本の場合、純利払い費対GDP比率はG7諸国の中で最低なので、ボロクソに言われてきた円の価値も言われるほど小さくないかもしれない。
米ドルの高値は追えない。市況はいかに。





















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