■市場に長く影を落としそうな、驚きのFOMC決定
マーケットは激動が続いている。
米ドル全面安と言いたいところだが、やはり米ドル/円に関して底堅さにつながるサインも見られているから、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の急騰が目立っていることも当然の成り行きだ。
ところで、今回のFOMC(米連邦公開市場委員会)において緩和縮小が見送りされたことには、実に驚いた。
バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、あんなにていねいに根回ししてQE(量的緩和策)縮小の可能性を市場センチメントに織り込ませたのに、今回はマーケットの動向を理由に見送りしたわけで、大半の市場関係者を混乱させたに違いない。
バーナンキ議長自身のみならず、FRB自体の信頼感を損ないかねるだけに、今回のFRBの決断はマーケットに長く影を落とすだろう。
その表れは、何と言ってもユーロ、英ポンドなど主要通貨の、米ドルに対する急伸であろう。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
ユーロのプチバブルは、崩壊するどころか、さらなる盛り上げを見せているほどだ。
■混乱状態の中、最も優位性のあるポジションは?
前述のように、今回の一件でバーナンキ氏が言う「年内緩和縮小の可能性」について市場関係者の多くは疑心暗鬼に陥り、米ドルのロングポジションをまず手仕舞いすることにした模様。
こういった状況の中、最も優位性のあるポジションとは何かを考えたい。結論から申し上げると、クロス円ではないかと思う。
優位性という言葉はいろいろな意味を持つが、ここではトレンド継続の可能性が高いことに限定して使えば、筆者はクロス円は当面上昇しやすく、また高値トライしやすいのではないかとみる。
■かつてのレジスタンスラインがサポートラインに
もっとも、前回のコラムでも強調していたように、ユーロ/円の高値更新があれば、重要なサインを点灯することになる。
【参考記事】
●重要ポイントはユーロ/円高値更新の有無。ドル/円の保ち合いは早ければ来週終了!(2013年9月13日、陳満咲杜)

(出所:米国FXCM)
つまり、これは円安トレンドの継続を証左するもので、米ドル/円調整の早期終了の可能性を浮上させている。この見方が正しければ、米ドル/円もユーロ/円を追随し、早晩5月高値の突破を果たすだろう。
こういった兆しは、すでに米ドル/円の日足から見つけられる。バーナンキ氏の「裏切り」があったにもかかわらず、米ドル/円は97円台にて底堅さを発揮し、5月高値から構築された大型トライアングルの上放れに下地を整えた可能性を示唆した。
下のチャートで示したように、5月高値から形成された大型トライングル(黄色ライン)の継続で一昨日(9月18日)までの下げは従来の予想どおりだが、同安値は、実に5月高値から7月高値を連結したライン(緑ライン)の延長線に合致していたことがわかる。
(出所:米国FXCM)
緑ラインは、もとはレジスタンスラインとして役割を果たしていたが、9月6日(金)安値と合致し、サポートラインに転換していた。一昨日(9月18日)の下げ、そして昨日(9月19日)の米ドル/円の切り返しは、同ラインの現在の役割、つまりサポートラインとしての機能を証左したと思われる。
■米ドル/円は5月高値の103.73円を試す可能性が高い
こういったサインを見逃さず、米ドル/円の下値余地が引き続き限定されるなら、5月高値から構築されたトライアングルはすでに完成したか、そろそろ完成される公算が大きいと推測できる。
この場合、ユーロ/円と同様、5月高値を上昇3波のトップとみなし、9月18日安値97.76円から最終波となる上昇5波がすでに展開されているといったシナリオも念頭におきたい。
そうなれば、早晩トライアングルの上放れを果たし、5月高値の103.73円に挑戦することになるだろう。
実際、前回のコラムでは、「米ドル/円の保ち合い、早ければ来週終了」の可能性を指摘していたが、どうやらこの可能性、一段と増大している模様である。
【参考記事】
●重要ポイントはユーロ/円高値更新の有無。ドル/円の保ち合いは早ければ来週終了!(2013年9月13日、陳満咲杜)
■ユーロ/円は139円台、ポンド/円は163円台の可能性も
米ドル/円の保ち合い変動が予想どおりに早期完了したならば、クロス円の一段高も避けられないだろう。
というのは、米ドル/円の底打ち、至って上放れがあれば、今回のFRBの政策据え置きによる米ドル安の受け皿として、引き続き円以外の主要通貨がその役割を果たすと思われるからだ。そうなれば、クロス円の上昇に弾みがつくと推測される。
また、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルは、一段高の余地が限定されたとしても、当面高値圏での保ち合い状態は保てるとみられる。よって、米ドル/円の上放れがあれば、クロス円はさらに押し上げられる。
こういった推測に基づき、ユーロ/円は138~139円台、ポンド/円は162~163円台の上値ターゲットを意識しておきたい。

(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)

(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
ファンダメンタルズ上の理由では、FRBの政策据え置きがリスクオンのムードにつながり、米ドル売り、円売りを推進しやすい一方、最も緩和姿勢が強く、かつ低金利の円は、再度キャリートレードの対象として狙われる可能性さえある。
こういった視点でも、豪ドル/円を含め、クロス円は当面優位性のあるポジションとして重宝されるのではないかと思う。
前述のように、ユーロ/円の上昇は2つのシナリオに依存しているが、「米ドル/円が下値限定で、保ち合いを続けると同時に、ユーロ/米ドルが高値更新し続ける」といったシナリオより、「ユーロ/米ドルが高値圏での保ち合いを続け、米ドル/円が上値放れをもってユーロ/円を押し上げる」といったシナリオを有力視したい。
換言すれば、ユーロのプチバブルは後ズレになったものの、バブル視すること自体に問題はないし、バブルである以上、早晩はじける運命にあるということだ。このあたりの話は、また次回。
【追記】
FOMCの決定は筆者にとってサプライズだったので、本当は米ドル/円の底打ちは、より早い段階にて確認されてもおかしくないと考えていた。
FOMC前(9月18日15時ごろ)には、下記のように3つの通貨ペアを予測していたので、ご参考まで。
米ドル/円に関する予測はFOMCの決定によって間違いになったが、基本構造は変わっていないので、現時点のチャートと照らしてご覧をいただければ、より理解できると思う。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
筆者注:ユーロ/円と英ポンド/円は、現在なお上昇波のiii子波に位置しているとみる。また、米ドル/円は、上昇波の最初の子波iに位置していると思う。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)