■米ドル/円は8月安値から5円強の急騰!
過去のコラムでご紹介させていただいたとおり、アベノミクス第2幕が始まり、今週(9月8日~)も米ドル/円は続伸。本稿執筆時点で、米ドル/円は107.05円まで急騰。
【参考記事】
●アベノミクス第2幕! 約12.6兆円の円売り発生の可能性! 米ドル/円は108円へ!(8月21日、西原宏一)

(出所:米国FXCM)
当コラムでターゲットにしている108円へあと1円と迫りました。これで、8月の安値の101.50円から約5円50銭の急騰。米ドル/円上昇の背景はアベノミクス第2弾が始まったことがきっかけ(前回のコラムを参照)。
【参考記事】
●第2次安倍内閣誕生でアベノミクス第2幕スタート! 米ドル/円は108円台濃厚!!(9月4日、西原宏一)
米ドル/円のみならず、他通貨でも米ドル高継続。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
ユーロ/米ドルは、一時1.2859ドル、NZドル/米ドルも0.8176ドルまで急落。

(出所:米国FXCM)

(出所:米国FXCM)
豪ドルクロス(豪ドルと米ドル以外の通貨との通貨ペア)の影響で下げ渋っていた豪ドル/米ドルも、節目の0.9200ドル近辺を割り込み、200日移動平均線(0.9181ドル)もブレイクしたことから、下落余地が拡大。

(出所:米国FXCM)
米ドル全面高の展開となっており、為替相場のメインストリームは「米ドル高」という点は変わらず。
■買い遅れ涙目組続出の米ドル/円はどこまで上昇する?
お盆以降の米ドル/円相場で特徴的なのは、大きな押し目もなく米ドルが続伸していること。
これは主要通貨のボラティリティの高騰に起因しています。ご存知のように、今年、2014年は8月まで主要通貨の値動きが米ドル/円を筆頭に低迷。それが7月にボトムアウトして、急反発しました。
このボラティリティの急騰に低ボラティリティに慣れてしまった市場参加者の中で、米ドル買い遅れ組が続出。そのため、大きな押し目もない中、米ドル/円は約1カ月で5円強の急騰となったのです。
マーケットのコンセンサスでは、当面の米ドル/円の高値ターゲットはこのコラムでご紹介したように108円台。
【参考記事】
●第2次安倍内閣誕生でアベノミクス第2幕スタート! 米ドル/円は108円台濃厚!!
ただ、米ドル/円のボラティリティが一気に上昇しているため、108円を抜いて続伸する可能性が高くなってきました。

(出所:米国FXCM)
ボラティリティが上昇してきた米ドル/円の動向に引き続き注目。
■スコットランド独立の可能性から、英ポンドは急落!
米ドルが上昇を続ける中、そのボラティリティの高騰を牽引しているのが英ポンド/米ドル。英ポンド/米ドルはこの1カ月半で、高値の1.7192ドルから約1000pips急落しています。

(出所:米国FXCM)
英ポンド/米ドルの下落を加速させたのが、9月18日(木)に予定されている、スコットランド独立の賛否を問う住民投票。
2012年に英国・スコットランド両政府間で住民投票開催が合意されました。これまでは一貫して賛成が3割強、反対が5割弱程度で推移し、スコットランドは英国内にとどまるというのがコンセンサスでした。
ところが先月、8月から、独立への支持が急速に伸び始めます。
そして、先週末、9月7日(日)に公表された世論調査では、ついに独立賛成派(51%)が反対派(49%)を初めて上回ったのです。これによって、スコットランド独立という一大イベントがにわかに現実的となってきました。
【参考記事】
●スコットランド独立の可能性が急浮上! 経済への影響は? ポンドは暴落するか?
呼応して、週明け、9月8日(月)の英ポンド/米ドルは、大きく窓を開け続落。一時1.6052ドルまで急落しました。

(出所:米国FXCM)
■仮にスコットランド独立でも懸念材料は多い
ここにきてスコットランドの独立賛成派が増えているのは、ナショナリストが増えているわけではなく、経済的視点からの考察。
北海油田はスコットランドの領海の「9割」を占めます。そのため、スコットランドは独立後も財政的には問題なく運営できるだろうという考えが賛成派の中で拡大しているようです。
ただ、反対派は、スコットランドはノルウェーのような蓄えがないため、独立後は経済が衰退するという意見。
一方、英国のオズボーン財務相は「仮にスコットランドが独立すると英ポンドを使用させない」と明言しています。そのため、スコットランドは、仮に独立してもどの通貨を使うかが明確になっておらず、独立に向けての懸念材料が多く残されています。
■なぜ、スコットランドは住民投票だけで独立できるのか?
ここで、なぜ住民投票だけで独立できるのか?という疑問がわきます。
たとえば、日本の沖縄県議会が「日本から独立する住民投票を実施します」といっても何の効力もありませんよね。
スコットランドでは、1998年のスコットランド法による権限移譲でスコットランド議会が創設され、内政を中心に幅広く立法権が認められていることが背景のようです。
ともあれ、上記を背景に英ポンド/米ドルは一時1.6052ドルまで急落。

(出所:米国FXCM)
■英ポンド/米ドルは5~10%程度下落する可能性も
上のチャートを見ていただくと、2013年7月安値と2014年7月高値の上昇幅の50%戻しが1.6004ドルに位置しており、今週(9月8日~)下落した後は、そのレベルがサポートになって反発している展開。
ただ、仮にスコットランドの独立が決定した場合、英ポンド/米ドルは5~10%下落するというのがマーケットのコンセンサスになりつつあります。
つまり、仮に独立となれば、英ポンド/米ドルは1.55ドルから1.50ドル台へと急落する可能性を秘めているということになります。

(出所:米国FXCM)
こうしたことを背景に為替マーケットでは急速に英ポンドに対して、注目が集まっています。
ともあれ、住民投票まであと1週間を切ってきました。
9月10日(水)には英国のキャメロン首相が、急遽スコットランド入りし、「この家族が引き裂かれることを望まない」と独立を支持しないように訴えるなど、賛成派、反対派の動きが活発化しています。
わずか1カ月で5円強上昇した米ドル/円に加え、歴史的な投票日を控える英ポンド/米ドルにも注目です。
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