■米ドルの勢いは止まらず、一段と全面高に!
前回のコラムで予想した、米ドル全体の早期頭打ち、また反落するといった市況が見られず、むしろ一段と米ドル高になっている。
【参考記事】
●ドル/円は今晩から反落?トランプノミクスはウォール街のハゲタカが演出した幻想だ!(2016年11月18日、陳満咲杜)
ドルインデックスは102の節目にトライ、2001年高値(約121)~2008年安値(約70.79)の全下落幅の半分程度を回復し、米ドル/円は一気に114円の節目手前に迫り、2015年高値(約125.86円)~2016年6月安値(約98.95円)の全下落幅の半値戻し(約112.41円)をすでに超えている。

(出所:CQG)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
いわゆる「トランプ・ラリー」がもたらした相場の大逆転、また変動率の拡大は為替相場に限った話ではないが、米ドル/円に限って言うと、この3週間の急伸は、事実上、変動相場制に移って以来、もっとも大きな上昇率を記録したのではないだろうか。詳細なデータをチェックしないと言い切れないが、仮にそうでなくても、2番目の記録を達成したことは間違いないと思う。
■米ドル高の原動力はどこにある?
となると、米ドルのブル(上昇)トレンドが継続され、これから米ドル全面高が続くといったシナリオが当然視されるが、ここで米ドル高の原動力がどこにあるかをもう1回確認しておきたい。
既述したように、トランプ氏の当選はマーケットにとってサプライズだったが、それ以上にサプライズだったことは、やはり「トランプ・ラリー」の進行だと思う。この意味合いにおいて、「トランプ・ラリー」の行きすぎがあれば、勝者のみでなく、敗者サイドの事情も見なければならないかと思う。
【参考記事】
●トランプ・バブル!? 暴落から急反発はなぜ? ドル/円は100円をめざす前に110円打診か
米ドル/円の話なら単純だ。
トランプ優勢が伝わった11月9日(水)の朝から米ドルのショートポジションが積み上げられ、同日夜、米国株の上昇とともに、ショート筋が踏み上げられ、その後の米ドル上昇につながった。
その後、米ドルのロング筋が米ドル高を推し進める一方、急速な米ドル高の進行を見て、「ここまでの米ドル高は行きすぎだろう」と思った新規ショートの参入が、米ドルを一段と押し上げた可能性が大きい。
換言すれば、史上まれに見る米ドル高のスピード違反を、売りチャンスととらえた新規ショート筋が結果的にまた踏みあげられたので、「行きすぎた」米ドル高がさらなる「行きすぎ」をもたらしたわけだ。このような構図は、米ドル全体にも通用するかと思う。
もっとも、相場が行きすぎかどうかを測るのは、決して容易なことではない。また目先の相場のように、「行きすぎ」の判断自体が正しいとしても、必ずしもトレードの根拠としてよい結果につながるとは限らないのが相場の難しいところだ。
とはいえ、一本調子の相場がこのまま継続されていくことは当然ない上、あまりにも見られない一本調子の市況だから、冷静に再考する価値があると思う。
■やはり、米ドル/円は早ければ今晩反落してくると予想
筆者は、前回のコラムにて指摘した可能性、すなわち米ドル/円が「早ければ今晩、遅ければ来週前半に反落してくる」(※)という可能性が高くなっていると思う。
(※編集部注:本記事における「今晩」とは11月25日、「来週前半」とは11月28日~30日ぐらいを指す)
【参考記事】
●ドル/円は今晩から反落? トランプノミクスはウォール街のハゲタカが演出した幻想だ!(2016年11月18日、陳満咲杜)
今週(11月21日~)の「行きすぎ」があったからこそ、シナリオが否定されたのではなく、一段と可能性が増してくるわけで、基本的な考えは変わっていない。
こういった愚直な考えは、根拠なしにはとても言えないから、テクニカル上のヒントを、昨日(11月24日)のレポートをもって公開したいと思う。本文は以下のとおり:
(出所:CQG)
ドル/円は連日続伸、ドル高のスピード違反が一層鮮明になり、またオーバーボートを極めていると見る。途中の点検では同じくロジックで測ってきたが、高値更新し続けてきただけに、ロジック自体の間違いと疑われても仕方がないが、ついもっとも重要なサインを点灯しているから、再提起しておきたい。
上のチャートで見るように、Aは昨年高値であり、また6月安値まで続けていたドル安/円高トレンドの起点であった。対応するRSIの数字が80.37だったことに鑑み、足許の同81.76がいかに行き過ぎているかを伺える。
もっとも、昨年11月高値(B)に対応するRSIのレベルを超えた時点でオーバーの度合いを大分増していたが、昨年高値に対応するレベルの更新、スピード違反処か、究極なオーバーボートのサインとしてこれから反転されやすいことを示唆しよう。但し、日足における2σの標準偏差が113.62を示しているから、一旦打診してから反転のサインを点灯してもおかしくない。引き続き逆張りのチャンスを窺い、サインの点灯を待ちたい。極端なオーバーした状況であるだけに、一旦反転されると、スピードや値幅両面の拡大を警戒。
■「トランプ・ラリー」自体も行きすぎで、かなり終盤に近い!?
ファンダメンタルズ的には、「トランプ・ラリー」の本質は、いわゆる「トランプノミクス」の先取りや米利上げを織り込んだ結果に違いないが、そもそも「トランプノミクス」自体が幻想にすぎず、また来月(12月)の米利上げ観測がすでに100%織り込まれている以上、「トランプ・ラリー」自体も行きすぎで、かなり終盤に近いと思う。
「トランプノミクス」自体がなぜ幻想であるかについては、また次回に譲るが、米利上げ観測の「確実性」について、もう少し検証しておきたい。
イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言やFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録の公開もあって、米国債先物やオプション市場が示す米12月利上げの確率はすでに100%を超えている。100%超えとは1回の利上げが25bps以上の可能性さえ織り込んでいるということで、来月(12月)の利上げは確実視され、米国債利回りの上昇(国債下落)とともに、米ドル高の根拠になっていると解釈されている。
しかし、考えてみれば、今さらというか、ギリギリまで利上げ確実云々と言っていること自体、いかにこれまでの利上げ観測が「不確実」だったかを物語る。昨年(2015年)年末に「来年(2016年)4回利上げあり」といったセンチメントに市場がなっていたことが、いかに的外れだったかがわかるというものだ。
さらに、今でも来月(12月)の利上げを「早期利上げ」と表現する一部マスコミがいかに滑稽であるかもおわかりいただけるかと思う。
■市場は、米ドルを反転させる「材料」を必要としている
要するに、米利上げ自体は来月(12月)確実に行われる公算だが、利上げ自体がとても「晩期」になった分、これは米ドルを押し上げるのではなく、むしろ米ドルのロングポジションを処理する機会になりやすい。
何しろ、米ドルはすでに異常なほど急伸した分、反転させるには何らかの「材料」を必要としているはずだ。利上げという材料によって、「ウワサで買い、事実で売り」という相場格言が示唆するとおりの展開になるのではないだろうか。
この意味合いでは、「トランプ・ラリー」も同じだと思う。いわゆる「トランプノミクス」へのユーフォリアは、せいぜいトランプ氏がホワイトハウス入りする前までなのではないだろうか。逆説的でまた、やや大げさな言い方をすれば、本格的な「トランプショック」は、トランプ氏が米大統領に就任してから来るだろう。油断は禁物である。市況はいかに。
(14時30分執筆)
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