■市場は米中貿易戦争を無視する気配を見せている
今晩(4月6日)の米雇用統計もある上、米国株がどうのように米追加措置を織り込むのか、なお不透明であり、状況は流動的な側面が大きいが、昨日(4月5日)以降の市況を検証すれば、大きなヒントを見つけられるかと思う。
言ってみれば、米国株の4月4日(水)の反落してからの反騰が一番注目された値動きであり、また、市場における過度なリスクオフを回避するきっかけとなったのだが、その発端をトランプ氏のツイートやクドロー氏の発言に帰結させるような分析を鵜呑みにするのは、幼稚すぎるだろう。
何しろ、米中貿易戦争自体は火を見るよりも明らかなことなので、「やっているわけではない」は真っ赤なウソだということは、子どもでもわかる話だった。
それでも米国株をはじめ、為替市場は大きく反応した。NYダウをはじめ、米国株の反騰とともに、4月4日(水)は米ドル/円や主要クロス円の多くは続伸、リスクオフの流れを修正しようとする勢いをみせた。
その影響が実は今でも効いていて、米ドル/円の107円台維持につながっていると思う。
換言すれば、米中貿易戦争は一段と拡大する傾向をみせているが、市場はむしろその材料を無視する気配をみせ、徐々にリスクオンの方向にシフトしていく兆しさえあると思われる。
■市場はトランプ氏のウソを材料として利用しただけ
日経平均(日経225)は、昨日(4月5日)、再度200日移動平均線を回復し、目先も同線前後に留まっている。米中貿易戦争の拡大懸念が大した売り圧力になっていない模様だ。
(出所:IG証券)
米ドル/円は、昨日(4月5日)、3月13日(火)高値の上で大引けし、執筆中の現時点でもその上で推移している。これは米中貿易戦争云々で解釈される市況ではなかろう。
(出所:IG証券)
こういった市況から見る限り、4日(水)の米国株反騰についての解釈は変わってくるだろう。すなわち、トランプ氏の「ウソ」が通用したのではなく、市場がそもそも底打ちしやすいタイミングにあったから、トランプ氏の「ウソ」でも材料と化し、また、利用されたというわけだ。
言い換えれば、相場の内部構造は株安・円高の一服を暗示しているから、これから米中貿易戦争が一段と拡大しても、株売り・円買いの材料になれない可能性が示唆されている。
■今晩の米雇用統計や米国株の動向が試金石に
この意味合いでは、今晩(4月6日)の米雇用統計や米国株の動向が試金石となろう。少なくとも執筆中の現時点における市場の反応が「ホンモノ」か、それとも「ニセモノ」かを証左してくれるだろう。
筆者の経験や見方からすれば、今晩(4月6日)の米雇用統計の数字がよほど悪くなければ、米国株は日経平均と同様、大した下落を見せず、比較的堅調な推移を維持できるのではないだろうか。
もちろん、トランプ氏のツイート次第で、市況はまた揺れる可能性もあるが、相場は高い変動率に「慣れている」という側面から考えると、トランプ氏の言動で暴落する局面を回避できるかと思う。
つまるところ、市場にトランプ氏の「作戦」に慣れ、冷静に状況を見守る「余裕」が出てきたところが大きい。こういった「余裕」があることこそ、株安・円高の一服が「ホンモノ」である可能性が高いと考えられる理由だ。
今晩(4月6日)の「審判」を見ないと、現時点で言い切れないところも多いが、相場はすでに落ち着いてきた公算が高いと思う。
■米ドル全面安の局面はすでに過ぎた可能性大
もう1点見逃せないところは、やはり米ドル全体のパフォーマンスだ。ドルインデックスは3月1日(木)以来の高値を更新し、早晩3月高値をブレイクしていく様子を見せている。
日足では、やや強引かもしれないが、「三尊底(※)」のフォーメーションも形成されているかと思われ、3月高値の更新があれば、一段と切り返しの余地が拡大するだろう。
(編集部注:「三尊底」とはチャートのパターンの1つ。3つの谷があり、底を示す典型的な形とされているもの。「逆三尊」、「逆三尊底」と呼ばれることもある。英語の「ヘッド&ショルダーズ・ボトム」と呼ばれるパターンに相当する)
(出所:IG証券)
米中貿易戦争の拡大は本来リスクオフを招き、また、リスクオフは米ドル安につながる、といった従来のパターンに「異変」が生じているなら、市場の内部構造にその答えを求めなければならない。
今晩(4月6日)の「試練」もあるが、結論から申し上げると、米ドル全面安の局面はすでに過ぎた、という可能性が大きい。
詳細はまた次回にて検証したい。市況はいかに。
(14:00執筆)
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