■日本株と日本円、どちらの値動きが「ホンモノ」?
となると、米中対立や中国株安、中国人民元安に“つられた”日本株と“つられてない”日本円のパフォーマンスは、どちらが「ホンモノ」なのだろうか。
結論から申し上げると、市場自体は常に正しいから、どちらも「ホンモノ」だと思うが、あえて言うなら、円の方がより市場の「本音」を代弁しているのではないかと思う。
その根拠として主に以下の2点が挙げられる。
まず、前述のように、日本株、特に日経平均は「外人」様のツールになるほど実は「小さい」マーケットである。もちろん、それは為替市場に比べて初めて言えるものだが、為替市場が毎日約5兆ドルの出来高なのに対して、東証一部(日経225は東証一部上場銘柄から構成)は多くても2兆円程度なので、桁が違う。
だから、日本株のほうが一時的により敏感に反応してもおかしくないが、円のパフォーマンスが安定しているなら、市場は言われるほどリスクオフになっていないとみるのが正しいかと思う。
次に、確かに米中対立のリスクが大きく、また、これからさらに深刻化していくかもしれないが、上海株を含め、実はこういった懸念の大半は織り込まれている可能性が大きい。本日(7月6日)の米制裁発動に伴い、上海株はいったん下げ止まり、また反騰してくる可能性さえあるかと思う。要するに「ウワサの売り、事実の買戻し」のパターンだ。
■中国側は米制裁案に対して最も有効なヘッジ手段を講じ済み
もっと重要なのは、中国人民元相場をみると、中国側が米制裁案に対して、最も有効な「ヘッジ手段」をすでに講じていることだ。中国人民元安の一段落があれば、今さら日中株の下落に反応して円高にならないばかりか、円安の方向にシフトしやすいことを覚悟しておくべきであろう。
オフショアマーケットでは、中国人民元は3月末安値から最大5000pipsに近い下落を果たした。この中国人民元安の進行は凄まじいとしか言いようがない。
(出所:IG証券)
管理変動相場制である中国人民元市場は、中国政府の意図や主導なしではここまでの暴落があり得ないことは周知のとおりであり、米国の500億ドル規模程度の関税制裁をかわすためには、現時点の中国人民元安でもう十分だという試算もある。
換言すれば、米制裁のマイナス効果は、中国人民元安をもってすでにずいぶん緩和されているから、今さらリスクオフに動く必要はなくなるわけだ。
もちろん、これから中国の報復関税引き上げも想定されるが、同規模の報復関税もすでに織り込み済みで、それも同じく今さらマーケットが反応するものではない。もっとも、中国人民元のさらなる大幅な切り下げがあれば話が違ってくるが、これ以上の中国人民元安は当面ないとみる。
なぜなら、これ以上の中国人民元安があれば、いくら中国共産党政権とはいえ、コントロールできない恐れが大きいからだ。
というのは、これ以上、中国人民元の急激な切り下げがあれば、キャピタルフライト(資金の海外逃避)が広い範囲で大規模に行われる可能性が大きいからだ。中国共産党政権にとって、これ以上の中国人民元安の流れを傍観するのは、あまりにもリスクが大きすぎるため、これからは中国人民元高の政策を取らざるを得ないと思う。
■米ドル/円はメインレジスタンスラインブレイクの準備完了か
まとめてみると、2015年と違い、人民元ショックがあっても実質的な影響は限定的だったので、日本株にしても米ドル/円にしても、買うなら今だろう。
特に米ドル/円相場は、人民元ショックがあってもしっかりしていたので、米国の対中制裁の実施に伴い、そろそろ2015年高値から引かれたメインレジスタンスラインをブレイクしていく準備ができていると思う。
(出所:IG証券)
市況はいかに。
(14:00執筆)
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