■米株高・米ドル高の同時進行はしばらく続く見通し
筆者が繰り返し指摘してきたメインシナリオは、米国株と米ドルのダブル高が「本筋」であった。
2019年4月24日(水)、米国株主要3指数のうち、ナスダックスとS&P500は事実上史上最高値を更新(終値ベース)し、ドルインデックスも2017年5月以来の高値を更新、NYダウも高値更新が確実視されるなか、先のメインシナリオの可能性が一段と高まっている。

(出所:Bloomberg)

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もっとも、米株高と米ドル高の同時進行を疑問視する向きが多いようだが、このあたりの理屈はさておき、足元では間違いなく米株高と米ドル高の同時進行が見られ、しばらく続く見通しであることを強調しておきたい。
前回(2019年4月19日)の本コラムで指摘したように、米株高を背景としてリスクオンの流れが強まっており、日本の10連休に突っ込んでくる投機筋の円買いがあっても、2019年年初のようなフラッシュ・クラッシュの再来はないだろうとみている。
【参考記事】
●10連休にフラッシュ・クラッシュはないとみる理由とは?トラウマとなった年初との違いは?(2019年4月19日、陳満咲杜)
マクロ環境や市場センチメントの違いが一目瞭然なので、多少の円高があってもクラッシュまでにはならないだろうと思う。
■連休前から、クロス円に円高傾向が
ところで、まだ連休に入っていない現時点で、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における円高傾向がすでに見えてきた。4月16日(火)、17日(水)あたりの高値からユーロ/円、英ポンド/円や豪ドル/円はともに反落、週明け(4月22日)から足元まで一段と下落幅を拡大させており、執筆中の現時点でなお、下げ止まる気配が見られない。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)
しかし、クロス円における円高の進行は、厳密にいうと円高ではなく外貨安だ。なにしろ、米ドル/円は4月24日(水)に112.41円と、いったん2019年年初来の高値を再更新し、4月25日(金)は上海株の急落で反落しているものの、執筆中の時点ではなお、111円半ばを維持。円高に転じたとは言えない。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
米ドル/円を除く円高の進行なので、円高ではなく外貨安がもたらした「受動的」な円高、ということに尽きる。そう判断する背景には、米ドル全面高、また米ドル高のスピードが速いということがある。
■クロス円は急ピッチな円高だが、あくまでも調整的な値動き
一般論として、米ドル高の受け皿としてユーロ安が鮮明になってくると、ユーロ/円もつれ安になり、また米ドル/円に波及して米ドル/円の頭を抑え込む、というロジックがあるから、目下はそのとおりだと思う。
4月24日(水)のユーロ/米ドルは2019年年初来安値を更新し、当然のように昨年(2018年)安値の割り込みを果たし、執筆中の現時点では、2017年6月安値を更新していく勢いを見せている。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
こうなると、ユーロ/円の124円節目割れが懸念されるのも自然の成り行きで、連休前の円高は、クロス円に限ってかもしれないが、投機筋云々ではなく、米ドル全面高がもたらした結果だと受け止められる。
投機筋の仕掛け的な結果ではないから、クロス円における外貨安・円高は、目先急ピッチで進んできているものの、なお調整的な値動きと見られ、各主要クロス円はまだベア(下落)トレンドへ復帰していないとみる。
■米株高を伴う米ドル高は緩やかなスピードにとどまる
このような認識は、実は重要である。なにしろ、外貨安がもたらした円高が米ドル/円に本格的に波及すれば、今度こそ本格的なリスクオフになる恐れがある。
しかし、現時点ではそのような環境ではないことは確かで、連休前におけるクロス円の先行した調整は、むしろ連休中の投機筋の「突っ込み」を和らげる役割を果たすのではないかと思われる節がある。
というのは、米ドル全面高は、目先、高値更新をもって上昇モメンタムを強めているが、米ドル高自体がメインシナリオとして違和感がなくても、また「本筋」として米国株とのセットが予想されても、米株高自体がリスクオフの流れの一環、またその結果として位置づけられ、米ドル高のトレンド自体に問題なくても、急激かつ一方向の市況が想定されにくい。
米株高を伴う米ドル高は、あくまで緩やかなスピードにとどまるという理屈であり、急激また一方向の米ドル高は往々にしてリスクオフの結果として観察される現象なので、ロジック的には矛盾がある。
したがって、しばらく米株高が継続されば、米ドル高のスピードやモメンタムは落ちるはずだ。反面、激しい米ドル高が継続される場合は米国株のトップアウトを暗示する可能性もある。
現時点では、前者のほうが現実的、またロジック的に合っていると思われ、米ドル高自体のスピード調整が近々見られるかと思う。
■テクニカル的にも米ドル/円の強気堅実が堅実
投機筋の仕掛けは、連休前にすでに進行しているクロス円における円高に「邪魔」され、また円売りポジションが相当「踏み上げられた」分、妙味がすでになくなりつつあるから、仕掛けの動機も相応して減っているかと思う。
仮にそのような推測が正しければ、クロス円における外貨安がもたらした円高圧力は、いったんやわらぎ、米ドル/円も続伸しやすいかとも思う。
重要なのは、テクニカルでみる米ドル/円の基調が堅実で、多少の仕掛け的な円高があっても、強気基調は安易に崩れないだろうということだ。
テクニカル上の視点は、実はシンプルなので、4月12日(金)の本コラムに公開したレポートの続きとして、4月18日(木)のレポートをご参考いただきたい。本文は以下のとおり。
【参考記事】
●米IPOラッシュでリスクオフになるヒマなし!?目先はくよくよせず、円安トレンドに乗れ!(2019年4月26日、陳満咲杜)
(出所:FXブロードネット)
10日レポートの続きで、足元の状況やサポートゾーンを探ってみたいが、前回よりブル基調が一段と鮮明化され、またサポートゾーンも明白になっていることをまず指摘しておきたい。
既述のように、3月安値を「ヘッド」とした「ヘッド&ショルダーズ・ボトム」というフォーメーションの成立でこれから一段と上値余地を拓く公算。同フォーメーションのネックライン、111円台中に集中、GMMAにおける「短期組」のサポートゾーンや200日線の存在もあって、仮に111円台半ばへ拡大されても、目先堅実であることが示唆される。
実際、前記フォーメーションの成立、4月11日の大幅上昇がもたらした側面が大きかったが、GMMAにおける「鰯喰い」サインの点灯も大きかった。換言すれば、3月25日安値を起点とした上昇波、途中のスピード調整があったからこそ、より健全化されたわけ。だから、GMMAが示すブル基調の修正、容易ではないと思う。
ゆえに、ネックラインの打診があっても、本格的な下放れを果たすより、むしろ押し目を拾う好機を提供してくれる公算が大きい。従来の強気スタンスを維持しておきたい。
前述のように、連休中に投機筋の仕掛けがあってもおかしくないが、米ドル/円における「ヘッド&ショルダーズ・ボトム」を完全に否定できない限り、クラッシュになるような円高の進行はないとみる。
ちなみに、終値をもって110.84円(4月10日安値)を割り込まない限り、前述のフォーメーションの否定にならないから、1つの目安として参考になるかと思う。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
市況はいかに。
(4月25日22時30分執筆)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)