■ボリス・ジョンソン首相誕生でブレグジットは…!?
7月23日(火)には、英国で保守党の党首選挙結果が発表され、マーケットの予想どおりボリス・ジョンソン氏が指名されました。
7月24日(水)には、英国の新首相に。
英国の新首相に就任したボリス・ジョンソン氏。ボリス・ジョンソン首相の誕生により、合意なき離脱トの可能性が高まっているという (C)Justin Sullivan/Getty Images
ボリス・ジョンソン氏が英首相に就任した時のスピーチでは、「合意なき離脱が唯一の道ならばそれに向けて準備を進める。そして、英国民は十分待った。行動する時が来た」と強硬な意見を披露。
ボリス・ジョンソン氏は強硬離脱派という報道が多いのですが、英国では、「ボリスは日和見」であることも有名。
ニューズウィークでは、下記のように変遷するボリスのコメントを報道しています。
EU懐疑派か単なる日和見か 英首相候補B.ジョンソンの変転するEU観
●2003年、自身がEUのファンであると発言
「私が超欧州懐疑派ということは全くない。ある意味では、ちょっとしたEUファンだ。もしEUがなかったとしても、われわれは似たようなものを発明しただろう」と英議会に語った。
●2013年、EU離脱は英国の問題の解決にならないと指摘
「われわれの問題のほとんどは、ブリュッセルのせいではなく、慢性的な英国の短期主義や不適切なマネジメント、怠惰やスキルの低さ、一時の満足を追うカルチャー、そして人的・物的資源やインフラへの投資不足からきている」と英紙デイリー・テレグラフに寄稿。
●2014年、EUを動物に例えるなら何かと同紙に聞かれて
「EUは、例えるならロブスターだ。EUはその仕組み自体、参加国に夕食会の場でロブスターを注文させるようにできている。会計は誰か他の国、通常ドイツが、支払ってくれると知っているのだ」
●2016年2月、国民投票を控え同紙に寄せたが掲載されなかったコラムで、EU残留を支持した理由について
「(EUは)すぐ手が届く市場であり、英国企業はもっと開発することができる。こうしたアクセスの割に、会費は比較的安い。なぜそれほど頑固に離脱したがるのか」と記した。ブレグジットを描いた書籍「オール・アウト・ウォー(全面戦争)」が明らかにした。
(出所:Newsweek)
しかし、先ほども紹介したとおり、ボリス・ジョンソン氏が英首相に就任した時のスピーチでは、「合意なき離脱が唯一の道ならばそれに向け準備を進める。そして、英国民は十分待った。行動する時が来た」と強硬な意見を披露しています。
そして、EU離脱支持派の人材を内閣に登用。
ドミニク・ラーブ前EU離脱担当相を、外相および事実上の副首相に指名。サジド・ジャビド前内相が財務相。内相は、EU離脱強硬派のプリティ・パテル氏、EU離脱担当相はスティーブン・バークリー氏を指名しました。
■合意なき離脱の可能性が一気に高まる
前述のように、ボリス・ジョンソン首相の誕生により、合意なき離脱の可能性が一気に高まり、多くの金融機関の英ポンドに対する見方が変わってきました。
マーケットに驚きを持って迎えられたのが、米大手モルガン・スタンレーの「合意なき離脱となれば英ポンド/米ドルはパリティ(=1.0000ドル)へ」との予測
ポンドは対ドル等価も視野、合意なき離脱は歴史的急落に-モルガンS
英国が合意なく欧州連合(EU)を離脱した場合、ポンドは対ドルでパリティー(等価)まで値下がりする可能性がある。米モルガン・スタンレーが予測した。
出所:Bloomberg
「合意なき離脱ならパリティ」というのは2016年以降、散々言い尽くされてきましたが、その可能性が改めて現実味を帯びてきた背景には、もちろんボリス・ジョンソン氏が英国の新首相に指名されたことが挙げられます。
繰り返しになりますが、ボリス・ジョンソン氏は日和見的なところがあり、世論の変遷によって意見が変わる可能性もありますが、就任時の演説ではお伝えしたとおり、「合意なき離脱が唯一の道ならばそれに向け準備を進める。そして、英国民は十分待った。行動する時が来た」とまでコメントしているので、合意なき離脱の可能性が高まったことは確か。
ともあれ、英国議会やEU(欧州連合)との駆け引きが活発化することは必至であり、議会側は早速、議会を休会させて合意なき離脱へ持ち込むことを阻止する法案を成立させたようです。
■EU離脱期限まで時間なし…英ポンド/円の下落余地が拡大
ここで、英国の今後の予定を確認します。
このスケジュールだと、EU離脱期限の10月31日(木)までほとんど時間がなく、離脱はきわめて困難。
ただ、ボリス・ジョンソン首相は議会を休会にして、議決せずにブレグジット(英国のEU離脱)に向かうという手段をとるのではないか?との思惑もあり、合意なき離脱の懸念は払拭できず、英ポンド/米ドルの下値は拡大中。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 週足)
前述のように、米ドル金利の低下傾向から米ドル/円の戻りは極めて限定的となり、米ドル/円は下値余地が拡大しています。
一方、合意なき離脱懸念の高まりから、英ポンド/米ドルの下値が急速に拡大。
結果、英ポンド/円の下落余地が拡大しており、125円に向けて下落する可能性が高まってきました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 月足)
ボリス・ジョンソン首相誕生で、合意なき離脱懸念が拡大。
急落の可能性が高まっている、英ポンド/円の行方に注目です。
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