■クロス円の堅調は2つの理由によるもの
株高の局面において、クロス円の反発をリスクオン・オフの視点で見る方が多いようだが、足元のクロス円堅調の土台は以下の2点に依存していることを見逃せない。
1つは米ドル/円の「居眠り取引」だ。もちろん「居眠り取引」は筆者の造語で、眠気を誘う米ドル/円の値動きの揶揄である。
5月19日(火)の米ドル/円の値幅はわずか80銭しかなかったが、昨日(5月28日)まで同日の値幅から抜けられずにいた上、執筆中の現時点でもわずかに19日(火)の下値をいったん更新している程度で、「動かない」相場の様相を呈している。
(出所:TradingView)
もう1つは米ドル全体の弱含みだ。ドルインデックスは3月27日(金)安値や200日線をトライしており、3月高値を起点とした調整波を深めようとしている。
(出所:TradingView)
リンクするように、ユーロ/米ドルは再度200日線を超え、3月27日(金)高値1.1148ドルを打診する勢いを見せている。
(出所:TradingView)
要するに、ユーロ/円の切り返しは、「動かない」米ドル/円と切り返すユーロ/米ドルの両方からもたらされた結果であり、この理屈は主要クロス円全般に通じる。
豪ドル/円の堅調も然り。豪ドル/米ドルの切り返しが継続し、200日線を再度打診しているからこそ、豪ドル/円も続伸、71円前半のレベルを維持できている。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
そして、諸外貨の米ドルに対する強含みとともに、「動かない」米ドル/円が同時進行しているから、クロス円の堅調は当然の成り行きと思われるわけだ。
■主要外貨の堅調は暴落に対する反動にすぎない
ここで注意していただきたいのは、筆者は主要外貨対米ドルの堅調をあくまで「強含み」の値動きと見なし、ブル(上昇)トレンドに戻したとは言っていないということだ。
確かに3月安値からの豪ドルの切り返しは急速で、また、その戻りを維持してきたが、それは、あくまでコロナショック発生後、3月安値までの暴落があったからこそ起こった調整と位置付ける。
換言すれば、豪ドル/米ドルの上昇は深刻な「売られすぎ」の状況に対する反動にすぎず、足元、ブルトレンドと認定するにはなお性急であることを再度、記しておきたい。
(出所:TradingView)
同じ理屈で、英ポンド/米ドルの切り返しを説明でき、また、ユーロ/米ドルの値動きも説明できる。ユーロ/米ドルが、豪ドル/米ドルや英ポンド/米ドルのように、3月安値からきれいな「V字リバウンド」を演じなかった理由はほかならぬ、豪ドルや英ポンドほどの暴落がなかっただけの話だ。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
つまるところ、今、米ドル全体の頭が再度重くなり、また反落してきたが、これはあくまで3月高値までのV字急騰に対するスピード調整の一環と見なせる。ベアトレンドへの転換と見なすのは性急であり、また、不適切だと言える。
(出所:TradingView)
しかし、ユーロをはじめ、主要外貨の切り返しは…
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)