■米ドルの切り返しは、新たな段階に!
米ドル高の傾向が、維持されている。ドルインデックスは、昨日(3月25日)92.94まで上昇し、ユーロ/米ドルは1.1761ドルまで下落、米ドル/円も109円前半を再打診した。
(出所:TradingView)
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モメンタムは、なお限定的であるものの、2021年年初来安値を起点とした米ドル全体の切り返しが、新たな段階に入っていることは間違いないようだ。
プライスアクションの視点でドルインデックスにおける最近の足型を検証すればわかるように、もっとも大きなサインは、3月18日(木)の大陽線、すなわち、FOMC(米連邦公開市場委員会)があった3月17日(水)の翌日に果たした切り返しだ。
同日のチャートは、典型的ではなかったものの、「強気リバーサル」と解釈でき、また、FOMC通過後の反落幅をたちまち取り戻したから、米ドル全体の強気構造を証明することになった。
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これは、2月5日(金)高値(A)から3月2日(火)高値(B)を連結した元レジスタンスラインの延長線にも支えられた形の切り返しなので、上昇波の継続が有力視される。
3月8日(月)高値を再更新し、足元の高値トライにつながった経緯から考えると、FOMC通過後のパフォーマンスが、実に重要なヒントを示唆してくれた。
■米長期金利が2%を超えるかどうかが、1つの基準
もっとも、3月17日(水)のFOMC声明文や、その後、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の発言が示したハト派基調は、昨日(3月25日)の発言で、また修正されつつある。
すなわち、パウエル議長が、債券買い入れ規模の段階的な削減に言及し、タカ派の様子がうかがわれことで、一時株の下落をもたらしたのだ。
売り一巡後、米国株を中心に株価は回復してきたが、米長期金利の高止まりで米ドル全体も切り返しのトレンドを維持しており、これから伸び悩むかどうかが見所かと思われる。
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昨日(3月25日)の動きは、FRB議長のタカ派発言があっても、たちまち債券買い入れ規模の削減にはつながらないから、市場関係者の緊張も長く続かなかった、と解釈されたが、肝心なのは、やはり米長期金利の動向であろう。
前回のコラムで指摘したように、米長期金利(米10年物国債利回り)が2%を超えるかどうかは1つの基準となり、超えない程度の上昇なら、株式市場にとって本格的な圧力にならない可能性が大きい。
【参考記事】
●米ドル/円は、109.86円の打診を有力視!FOMC後の値動きが米ドルの底堅さを証明(2021年3月19日、陳満咲杜)
本コラム執筆中の現時点で、米長期金利は1.631%前後にて保ち合いの状況。先週(3月15日~)高値1.754%から反落してきたものの、高値圏に定着する様子を見せている。
(出所:TradingView)
米長期金利の上昇傾向が維持される限り、米ドル全体にとって支援材料となり、ドルインデックスの高値トライが続くと推測されるが、2%の大台に接近、また、超えた場合は状況が変わってくるか、とも推測される。
今のところは、前述のように株式市場のブル(上昇)トレンド継続とともに、米ドル全体の切り返しが継続され、米ドル/円のリードも、なお維持されている模様だ。
直近のパフォーマンスで言えば、ユーロの方が、より米ドル安の受け皿となっていることが鮮明化してきたが、主要外貨のうち、円が弱い存在であることは相変わらず、米ドル/円の底固さが、むしろ目立つほどだ。
■米ドル/円の強気変動は継続。110円の大台打診へ
米ドル/円の日足を見てみると、直近の安値が108円前半に留まったことがわかる。それは他ならぬ、2021年年初来安値を起点とする上昇波が継続しており、また、3月9日(火)から形成された保ち合いが、スピード調整の一環であることが示唆されていると見る。
テクニカルの視点では、1月高値から2月高値を連結する元上昇チャネルのレジスタンスラインがブレイクされた後、同ラインの延長線が20日移動平均線と重なり、直近のサポートゾーンを暗示していたことが見逃せない。
その上、20日移動平均線が2月安値(チャートの1、2)を支えたように、今回(チャートの3)も、サポートゾーンとして意識されていることがわかる。
したがって、米ドル/円の強気変動が、なお継続される公算は大きく、110円の大台の打診に照準を合わせるだろう。
■主要クロス円の押し目の目安は、下方修正か
ゆえに、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は高値圏での保ち合いに留まり、変動レンジ自体は拡大されたものの、強気構造を維持。再度、高値トライの勢いを見せている。
しかし、米ドル全面高の流れの中、外貨の反落が続く場合は、主要クロス円の高値再更新が遅れる可能性も浮上するので、これからのトレードは注意が必要かと思う。
要するに、直近の値動きとして、ユーロ/米ドルの下落スピードが米ドル/円の上昇スピードを上回っているから、このような状況が続く場合、米ドル全面高とはいえ、主要クロス円の高値圏での保ち合いが一段と延長され、また、変動レンジの拡大が警戒される。
つまるところ、主要クロス円における押し目買いのスタンスは不変だが、押し目のタイミングが一段と遅れ、また、押し目の目安も下方修正される可能性があるということだ。
■ユーロ/米ドルは、今後さらに安値更新の公算大
ユーロ/米ドルのベア(下落)構造は一番鮮明であり、日足では再度ボリンジャーバンドの下限(-2σ)のラインをトライした。これから、さらなる安値を更新していく公算が大きい。
プライスアクションの視点では、2月25日(木)の値動きが示した「フォールス・ブレイクアウト(チャートの1)」(つまり上放れに失敗、一時の高値トライがダマシであった)のサインが、もっとも強烈で、足元まで効いていることがうかがえる。
直近のフォーメーションとして重視されているのは、やはり、FOMC後の値動きだ。
3月11日(木)と翌日12日(金)の頭並び(チャートの2)と同じく、FOMCがあった3月17日(水)と翌日の18日(木)の頭並び(チャートの3)、また、18日(木)の陰線引けをもって「ダブル・トップ」の構造が示され、18日(木)に同「ネックライン」の割り込みもあって、一気に昨日(3月25日)安値まで下落してきたわけだ。
注意すべきなのは、前述の「ダブル・トップ」のフォーメーションは、あくまで2月25日(木)高値を起点とした下落幅におけるスピード調整の一環として数えるから、目先の安値をもって下落波が完成された見込みは薄く、推進波として、さらなる安値をトライする公算が大きいと見られる。
ユーロ/米ドルが下値打診、また、下落スピードが相対的な強さを保つ場合、やはり、ユーロ/円の早期高値更新といったシナリオの現実味が薄くなってきたと言わざるを得ない。
■豪ドル/米ドルは、まだ下落の途中。これから下値拡大か
豪ドル/米ドルの日足で、まず気になるのは、3月18日(木)高値(0.7849ドル)からの下落が、3月5日(金)の安値(0.7621ドル)を割り込んでいることだ。
早期切り返しを果たせない限り、日足における「三尊天井」、すなわち、2月25日(木)高値(0.8007ドル)を「ヘッド」とした「ヘッド&ショルダーズ・トップ」というフォーメーションの形成が警戒され、反落余地が、さらに拡大するだろう。
さらに、3月18日(木)の高値が、昨年(2020年)コロナショック後の安値から引かれてきたメインサポートラインの延長線に拒まれたことも軽視できない。
何しろ、「1-2-3の法則」に沿った見方では、メインサポートラインの割り込みを条件1(チャートの1)とし、その後の切り返しの高値が、再度、高値更新できなかったことを条件2(チャートの2)とする場合、3月5日(金)安値の割り込みで条件3(チャートの3)が揃ったので、トレンドの反転の可能性が強いとされる。
となると、目先、安値圏での保ち合いが続いているように見えるが、実は、下落途中にすぎず、これから下落波を加速していくと思われる。そして、豪ドル/米ドルの下値余地の拡大で、豪ドル/円も頭が重くなっていくだろうと推測される。
このような相関関係が、英ポンド/米ドルと英ポンド/円にも見られるが、テクニカル上のサインがユーロや豪ドルに比べ、やや弱いのも事実。目先、ユーロのリード、その後、豪ドルの追随、最後は英ポンド…といった順番になるのではないか、とも推測している。
いずれにせよ、米ドルの切り返しがこれから本格化していくなら、従来のように、円が受け皿としてリードしていくとは限らなくなる可能性が出てきた。
反面、円は、引き続き弱い存在で、主体性を発揮できる段階には程遠いから、主要クロス円のレンジ変動の拡大が有力視される。検証はまた次回、市況はいかに。
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