■目先の米ドル高のスピード調整は今後の上昇をより健全化
米ドル全面高の局面に入っているものの、今週(6月21日~)は米ドル高自体のスピード調整が見られる。
ただし、先週(6月14日~)、ドルインデックスの急伸が見られただけに、この程度の調整はむしろ当然の成り行きというか、これからの上昇をより健全化させる可能性が高いのではないかとみる。
米ドル全体の底打ち、また、米ドル高への転換といった判断は、やはり2021年年初来安値ギリギリまで迫ったものの、割り込まずに大きく反騰してきたことが大きな材料となる。
(出所:TradingView)
米ドル安に作用する材料が多かった中、米ドル全体の底割れ回避自体が大きなサインと化す。
ファンダメンタルズの面では、コロナショック以降、「天文学的な金額」がばら撒かれてきた米ドルだが、結局、2018年安値を下回れないなら、米ドル安の継続性は当然疑問視される。
時間が推移するにつれ、テーパリングなり、利上げなりのタイミングに近づいていくから、米ドルの「底割れ」の現実味は、やはり薄まっていくはずだ。
■ドルインデックスのテクニカル分析も米ドル高継続を示唆
テクニカルアナリシスの面では、ドルインデックスは2021年年初来安値89.16から3月末高値93.47までいったん上昇し、その後、5月24日(月)に89.51まで再度反落していたが、92前半の回復をもって底打ちを示唆。
この場合、3月末までの上昇をメイントレンドに沿った推進波とみなし、5月安値までの反落を修正波と位置づけると、エリオット波動論における上昇波の特徴に当てはまる。
(出所:TradingView)
なにしろ、大きな上昇波は5波構造をもって展開するケースが多く、最初の修正子波が最初の推進子波の大部分を帳消しにして、ギリギリまで安値(ベア(下落)トレンドの場合は高値)に迫る傾向があるとされる。
換言すれば、ドルインデックスにおける5月の安値トライが、2021年年初来安値に近かったこと自体、ブル(上昇)トレンドが展開されている証拠にもなり得るから、これから一段と米ドル高になりやすい環境にあると推測される。
ゆえに、米ドル全面高の局面は当面続き、また、ドルインデックスは3月末高値を上回り、これから一段と上値余地を拡大するだろう。
そして米ドル高には、受け皿となるユーロ安なしではなり得ないから、しばらくユーロ安の継続を覚悟しておきたいわけだ。
■ユーロ/米ドルは中期的には1.11ドル台後半まで下落も!?
ユーロ/米ドルの下値余地に関して、ごくシンプルな見方として、2つのターゲットが計算できる。
まず、ドルインデックスの3月末高値の再更新が有力視されるなら、ユーロ/米ドルの3月末安値1.1703ドル割れも時間の問題と思われる。
そして、ユーロ/米ドルのさらなる下値余地を測る場合、まず2021年年初来高値から3月末安値までの値幅をそのまま5月高値から引き、いわゆるN字型変動のターゲットが求められる。
その場合、大まかに1.1620ドル前後の数字が得られ、現時点のレートからして、短期スパンにおいてもなお下値余地が大きいと言える。
次は2月高値と5月高値で形成された「ダブル・トップ」の構造を重視する形で、3月末安値の割り込みがあれば「倍返し」と計算すれば、1.11ドル台後半までの下値ターゲットを得られる。中期スパンにおける下値余地の拡大が想定される。
もちろん、あくまで推測であるから、断定的な判断は誰もできないが、強調しておきたいのは、米ドル全面高の局面が続くなら、EU(欧州連合)の事情がどうであれ、ユーロ安は避けられない、ということだ。
理屈は自明である。ドルインデックスにおけるユーロのシェアは最大(57.6%)であり、米ドル高の進行は、ユーロ安なしではありえない。
目先、ドルインデックスが示す内部構造に沿った方向で考える場合は、やはりユーロ高ではなく、ユーロ安の方向へサインを確認し、ユーロ/米ドルは戻り売りのスタンスで臨むべきであろう。
■一目均衡表の「雲」ゾーンもレジスタンスに
その他のテクニカルアナリシスの視点からフォローしても、目先はユーロの切り返しが長く続かない可能性を示唆。
下のチャートで示しているように、GMMAチャートにおけるデッドクロスの形成や、大幅なベアトレンドの進行が見られたあと、今週(6月21日~)、スピード調整的な切り返しが見られているが、今後は一目均衡表の「雲」ゾーンがレジスタンスゾーンとして意識される可能性が大きい。
また、5月高値から測る全下落幅に対する38.2%~50%戻り位置も同レジスタンスゾーンと重なっているから、一層、頭が重いと推測される。
■ユーロ/米ドルはRSIの動きもトレンド転換の前兆を示唆
日足におけるRSIも同様のサインを点灯しつつある。
コロナショック後の安値に対応するRSIの安値は30の水準を割り込まず、その後もいったん30の水準を打診することはあっても、そこは割り込まず回復し、維持してきた。このようなRSIの動きは強気構造にあることを示唆している。
しかし、直近の安値トライに伴うRSIの動きは、明らかにより深い押しをいったん果たした様子で、トレンド転換の前兆と読み取れる。
RSIにおけるサインの解読は繊細なので、これからまたフォローしていき、取り上げたいが、結論から言えば、さらなる下値余地拡大の可能性が示唆されているから、ユーロの戻り売りが適切なスタンスではないかと思う。
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