サプライズ!自民党総裁選で高市新総裁誕生
10月4日(土)に行われた自民党総裁選挙において、高市早苗氏が新総裁として選出されました。

(出所:自由民主党ウェブサイト)
事前の識者予想では、小泉支持の自民党議員が4割前後であったので、小泉進次郎氏がほぼ確実に新総裁になると言われていました。
Polymarketにおける確率でも、小泉氏80%以上、高市氏は20%以下となっていたので、高市新総裁誕生はまさに「サプライズ」でした。

(※筆者提供)
自公政権が長く続く日本では、この自民党内の勢力争いが事実上の政権交代になります。これは、穏健保守であった岸田・石破路線からの決別、安倍氏以来の自民右派政権の誕生といえます。
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高市総裁誕生で日銀の早期利上げにブレーキがかかった?
経済政策においても大きく違います。高市氏の持論は、積極財政・超金融緩和。円安になりやすいし、インフレを押し上げることで株価も上昇しやすい。
実際、高市氏は総裁選出後の記者会見で気になる発言をいくつかしています。
「現在の物価上昇率は表面的には2%を超えているが、これはコストプッシュ型であり、望ましいディマンドプル型ではない」
「財政も金融政策も責任を持つのは政府。日銀は金融政策のベストな手段を考える」
「政府・日本銀行の共同声明、いわゆる『アコード』の見直しについても言及」
日銀による早期利上げにブレーキがかかった、と言えます。特に金融政策に責任を持つのは政府という言葉は、海外市場関係者にショックを与えています。米国ではトランプ政権による露骨なFRB(米連邦準備制度理事会)介入により、金融政策が歪められることが警戒されていますが、日本でも同じことが起こっているという驚きです。
OIS市場で50%を超えていた、10月の日銀金融政策決定会合における利上げ確率は、高市新総裁誕生で24%に落ちました。Polymarketでも60%⇒10%以下に落ちています。

(※筆者提供)
日銀による利上げがないとなれば、当然円安になるし、株高にもなります。
金利マーケットでは、日銀の利上げがないということで短期の金利に低下圧力がかかりますが、政府支出が増えることから長期の金利は需給懸念から上昇します。いわゆる「スティープニング」です。実際、マーケットでは5年以下の金利は低下しましたが、10年には微妙に上昇圧力がかかり、20年超は明確に金利上昇しました。
日本は比較的財政赤字が大きな国なので、財政の持続性に疑問が持たれると超長期の金利が上昇しますが、だからといって「金利上昇=円高」とはなりません。むしろ円安となります。
まだ正式に政権が発足もしていないのですが、「日銀の利上げなし+財政への信頼性低下=円安」という状態になっています。

(出所:TradingView)

(出所:TradingView)
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「高市トレード」はいつまで続くのか?
さて、このいわゆる「高市トレード」はいつまで続くのか?
この相場が伸びる要素はいくつかあります。
(1)米ドル/円マーケットは海外勢を中心に米ドルショート(売り)・日本円ロング(買い)ポジションが多かった。今はショートポジションの損切りで相場が上昇している。ロングがまだ十分に溜まっているわけではない。
(2)今は次期政権誕生までの「端境期」。米ドル/円は上昇しているが、これは次期高市政権の予想される政策を反映したものなので、現石破政権下の加藤財務相がどこまで真剣に円安牽制するか疑問。権力の空白期間なので、マーケットも攻めやすい?
高市トレードのリスクとしては、
(1)トランプ政権は決して円安を歓迎していない。むしろ将来、大規模な米ドルの下落を考えている可能性がある(スティーブ・ミラン氏が書いたA User’s Guide to Restructuring the Global Trading System 参照)
(2)公明党との政策協議が難航している。公明党は高市氏のタカ派的政治姿勢を歓迎していない。高市総裁は誕生したが、高市首相が誕生しないリスクは、小さいがある。
(3)高市総裁は積極財政・超金融緩和が持論だが、高市総裁を誕生させたのは麻生元総理の政治力。幹事長に義弟の鈴木俊一氏を配し、副総裁に麻生氏が就任する構図は、第二次麻生政権にしか見えない。長きにわたり財務相を務めた麻生氏は決して積極財政派ではない。どこかで歯止めをかける可能性がある。
(4)高市氏自身も、円がどんどん下落し、インフレ率が上昇する状態は好ましいと思ってないかもしれない。
10月末にはトランプ大統領が来日、日銀金融政策決定会合もあります。その時に、トランプ大統領から為替レートに関する注文がなく、日銀会合後の会見で植田総裁が利上げに積極的な姿勢を見せれば、マーケットの様子も変わるかもしれません。

10月末に来日するトランプ大統領から為替レートに関する注文は出るのか? (C)Mark Wilson/Getty Images
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