3月利下げは消滅へ。でも15%の期待は残る
米雇用統計は驚きの強さでしたね。
3月利下げの織り込みは15%まで低下し、米ドル/円は今朝(2月5日朝)、わずかにですが年初来高値を更新しています。
(出所:TradingView)
昨年末(2023年末)には「2024年は6回利下げだ」なんて盛り上がりましたが、6回どころか3回すら怪しいかもしれません。
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が3月利下げの可能性は低いと断言しているのに、織り込みはゼロになりません。
この織り込みが剥落する過程で、さらに米ドル高が進むシナリオもありませんか?
経済指標次第ではありますが、あると思います。
そのときには149円台へ突っ込むのでしょうが、そのまま150円を超えていくかどうかは疑問。
「利下げ期待が裏切られて米ドル/円が上がる」というのは昨年と同じ展開ですが、昨年と今年(2024年)が違うのは「今年は利上げするわけではない」ということ。
3月なのか5月なのかはともかく、利下げすることは間違いない。金利面から考えると、この局面での150円超えはなさそうです。
(出所:TradingView)
5月利下げも確実とは言えない
5月利下げも「絶対ある」とは言い切れないかもしれません。
GDPナウ(アトランタ連銀のGDP予測モデル)を見ると、1~3月期は4.2%成長の予測です。
もし本当に米経済がこんなに強いなら、労働市場もタイトですし利下げなんて必要ありませんよね。
パウエルさんの発言などで目先の織り込みは低下しますが、遠くの織り込みはあまり変わらないのも気になります。
長めの織り込みでは、7月までに2回、年末までに4回以上の利下げを織り込んでいます。
少なくとも3月利下げが完全に潰れる過程では、米ドル高が進む可能性がありそうですね。
今週(2月5日~)はFRB高官の発言も多いですから、利下げ時期の見通しで右往左往する場面がありそうです。
調達通貨となるユーロ
新NISAの影響はどうでしたか?
第2営業日のロンドンフィキシングに注目していたのですが、先週のコラムで懸念したとおり、米雇用統計が荒れたことで影響がわかりにくくなってしまいました。
オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))などの投信にどのくらい新規の資金が入っていたのかを見て、判断するしかないですね。
2月も大量の資金が入っていたということになれば、3月も引き続き注目されるでしょう。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円を押し目買い! 日本の金利は上がったが、新NISAや海外勢の日本株買い絡みで円高になるとは思わない。ヨルダンで米兵3人死亡、地政学リスクが高まるかも(1月29日、西原宏一&大橋ひろこ)
先週(1月25日~)、ユーロキャリーの話をしましたが、IMM(国際通貨先物市場)ポジションは円ショートが8万枚まで増えてきました。
投機筋はまだ、ユーロキャリーよりも円キャリーが効果的だと思っているのかもしれません。
(詳しくはこちら → IMM通貨先物ポジション/経済指標・政策金利)
ただ、欧州はインフレ率が低下し、中国経済がこければドイツがこける。FRBの利下げが遅れても、ECB(欧州中央銀行)は利下げする。
そうなると、ユーロはファンディング・カレンシー(調達通貨)として売られていくのでしょう。今すぐではなく、もう少し時間はかかるかもしれませんが。
トルコ中銀総裁が辞任。利上げは本当に続くのか
トルコでは中央銀行の総裁が辞任しました。事実上の解任です。
「インフレに対抗して利上げする」という真っ当な総裁だったのですが、家族への脅迫などがあったようです。
後任総裁も利上げを継続すると言っていますが、利上げを嫌気したエルドアン政権の政治的な圧力で辞任を迫られたのだとしたら、利下げに動くかもしれません。
どう考えても利上げが必要な状況ですが、トルコリラは不安ですね。
(出所:TradingView)
今週の戦略はどう考えますか?
米ドル/円は145円から149円台でのレンジなのかもしれません。押し目は買っていいと思いますし、ユーロ/米ドルのショートでもいいでしょう。すぐには下がらないかもしれませんが、スワップがプラスになるので多少時間がかかっても許容できます。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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