AIブームへの懸念が再燃し、S&P500が大幅下落。FOMCはタカ派寄りの利下げの印象
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
MC叶内 西原さん、今年(2025年)も残すところあと2週間となりましたね。
トレーダー西原 あっという間に今月(12月)も終わりそうですね。年末も近いため、短期の話に加え、来年(2026年)の相場に関しても触れようと思います。
それでは叶内さん、まず先週(12月8日〜)の株の振り返りからお願いします。
MC叶内 米国株は12月12日(金)の下落で雰囲気が悪くなりました。
週間では、S&P500は前週末比0.63%安で、3週ぶりの反落です。12月12日(金)に1%超、約3週間ぶりの大幅下落となりました。
オラクルが12月10日(水)に決算を発表。AI・クラウド需要で増収増益だったものの、AI向け大型契約の収益化に時間がかかっていることなどから売られ、12月12日(金)にはOpenAI向けデータセンター建設の遅れの報道(のちにオラクルが否定)が伝わり、11月安値を下抜けました。
また、ブロードコムが12月11日(木)に発表した決算は、実績・見通しとも市場予想を上回りました。特にAI半導体が好調でした。ただ、カンファレンス・コールでタンCEOがOpenAIとの契約について「26年の売上は期待していない」と発言するなどやや慎重なトーンで、前日に最高値をつけた株価は12月12日(金)に11%超急落。AIブームへの懸念が再燃し、他の半導体・AI関連にも売りが波及しました。ナスダック総合指数は前週末比-1.62%安と大きめの下落です。
12月9日(火)~10日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)は予想どおり0.25%の利下げを決め、パウエル議長の会見もハト派的と受け止められましたが、その後長期金利が上昇傾向を続けていることも重しです。
一方、出遅れ銘柄や景気循環型、小型株などは買われており、NYダウはダウ前週末比+1.05%、小型株の指数ラッセル2000は+1.25%で週中に最高値を更新しています。
日経平均は前週末比344円(0.68%)高の5万0836円と3週連続で上昇しました。週末のメジャーSQを前に荒っぽい値動きでしたが、内需主導で底堅く推移しました。TOPIXは+1.82% 高と反発し最高値を更新しています。物色ローテーションが起きているのは米国と同様です。なおSQ値は5万0536円54銭、ほぼ予想どおりだったと思います。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 まず、先週のビッグイベントだったFOMCはコンセンサスどおり、誘導目標金利を0.25%引き下げ。
注目の声明ですが、「extent and timing(どれくらい・いつ)」というキーワードが復活しています 。
「The Committee reinstated the phrase “extent and timing” when referring to future adjustments.」
「今後どれくらい(extent)・いつ(timing)金利を動かすか」は、慎重にデータを見ながら決めるというサインと見られています。
過去にもこのフレーズが出たときは、「もう簡単には連続で動かさない」「一回一回、会合ごとに様子を見る」というハードルを上げるメッセージとして受け止められてきたため、今回のFOMCはタカ派寄りの利下げといった印象。
ただ、FOMC後の米国株は上昇。これは12月12日(金)に日経のSQ(特別清算指数)を控えていたことも要因という友人もいます。
そして、米国株は叶内さんが指摘されているように、金曜日(12月12日)の下落でセンチメントが悪化して終わっています。
また先週は、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])の金融政策決定会合がややタカ派であったことで、スイスフランの上げ幅が目立っており、スイスフラン/円は再び史上最高値を更新しています。SNBに関しては展望のところで触れますね。
それでは、今週(12月15日~)のイベントと株の注目点をお願いします。
日銀会合が今週最大の注目! SNBの結果を受けて、スイスフラン/円は196円台と史上最高値更新
MC叶内 FOMCを通過して、今週は12月18日(木)~19日(金)の日銀会合(日銀金融政策決定会合)が最注目イベントです。
12月1日(月)の植田総裁の講演などから、市場では0.25%の利上げを織り込んでいます。焦点は植田総裁が会見で中立金利についてどう説明するのかで、それによっては今後の利上げ見通しが変わってくることになるでしょう。
今週は12月18日(木)にECB(欧州中央銀行)も政策金利を発表します。据え置き予想ですが、2028年の経済見通しが新たに出てきます。次の動きは「利上げ」と述べられている欧州です。そのタイミングを考えることになります。欧州ではIfoやZEWの景況感指数の発表などもあります。12月18日(木)には英国でもMPC(英金融政策委員会)が開催されます。
経済指標では12月16日(火)発表の米11月雇用統計が注目です。市場では非農業部門雇用者数が前月比+5.0万人程度、失業率は4.4%と予想されています。
同12月16日(火)の10月米小売売上高、12月18日(木)の米11月CPI(消費者物価指数)も注目度が高いです。
そのほか、12月15日(月)に米12月NY連銀製造業景気指数、12月住宅市場指数、12月16日(火)に12月PMI、12月18日(木)に12月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、新規失業保険申請件数、12月19日(金)に11月中古住宅販売件数などが発表予定。
国内では、12月15日(月)に12月日銀短観が発表になります。12月17日(水)に11月貿易統計、訪日外客数、10月機械受注、12月19日(金)に11月CPIの発表があります。11月訪日外客数では、11月14日(金)に中国が日本渡航自粛を求めたことの影響がどの程度だったかがわかります。
また、中国の11月小売売上高、11月鉱工業生産、11月都市部固定資産投資などが12月15日(月)にまとめて出てきます。
日本株は需給面で、年末が近づくと節税対策売りが出てくる点には注意です。今年下げている銘柄で損だしの売りが出やすいです。一方で、NISAの駆け込み需要もあると言われています。
為替はいかがですか?
トレーダー西原 まず、先週の主要通貨の値動きをチェックします。主要通貨の対米ドル騰落率を見てみましょう。

円以外の通貨に対して米ドル安が進んでおり、米ドルに対してもっとも値を上げたのがスイスフランでした。
その要因はSNBにあります。SNBはコンセンサスどおり政策金利を据え置き。ただ、マイナス金利再導入のハードルを引き続き高く設定している点が注目されています。
そのため、今後もスイスフランに資金流入が続く公算が大きく、スイスフランは堅調を維持しやすいとBloombergのアナリストは解説しています。
実際にユーロ/スイスフランは反落し、米ドル/スイスフランは再び0.8000スイスフランを大きく割り込んでいます。
今年、スイスフラン/円は約30円も急騰しており、「年内は調整入りの可能性が高い」と想定して、200円を超えるのは来年と考えていましたが、SNBの結果を受け、スイスフラン/円は200円まであと4円と迫る196円台まで値を上げてきました。

(出所:TradingView)
12月18日(木)にECBも政策金利を発表しますが、OIS(Overnight Index Swap、翌日物金利スワップ)では、来年末まで政策金利の変更が織り込まれていません。
同日にはBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])も政策金利を発表します。利下げが85%程度織り込まれているため、この日はBOEのほうが注目かもしれません。
そして、最大の注目は12月18日(木)~19日(金)の日銀会合(日銀金融政策決定会合)です。12月1日(月)の植田総裁の講演などから、OISでは0.25%の利上げを93%も織り込んでいます。これで利上げしないと混乱を招くので、利上げは既定路線なのでしょう。
注目は植田総裁の会見内容ですが、あまりにハト派だと再び円安を誘引しますし、タカ派に振れると株が崩れるおそれがあります。そのあたりのバランスが難しいところです。
一方、マーケットで話題になっているのが銀価格の急騰です。FTの著名コラムニストであるジリアン・テットさんが「銀価格の急騰:市場への警告サイン」というタイトルでマーケットに警告しています。
銀価格の上昇が異例の形で、こんなことは過去に1970年代後半(オイルショック時)と2008年(金融危機時)の2回しか発生していないのだそうです。
ジリアン・テットさんの記事はいつも示唆に富んでいて興味深いのですが、彼女がリーマンショックを予想したときも、実際にそれが起こった時はかなり後でした。そのため、直近の相場に関してはあまり気にしないほうがいいのですが、この銀の急騰は少々気になるところ。
2026年の注目通貨ペアは、今年に続きスイスフラン/円とユーロ/円! 米ドル/円も総じて底堅いと想定
トレーダー西原 そして、来年の注目通貨ペアですが、今年に続きスイスフラン/円とユーロ/円を想定しています。
特に、スイスフラン/円は200円をあっさり超えてくると想定していますが、先週のSNBのややタカ派なトーンもあり、年内に200円を超えてくる可能性も出てきたため、注目しています。
米ドル/円は来年も総じて底堅いと想定しています。米金利が低下する局面では、今年同様、一時的に円高になる展開もあるのですが、最終的には円安に戻し165円方向に進むと想定しています。
仮に米ドル/円が急騰する局面があれば、当局の介入の可能性が高まるため、来年の米ドル/円は当局の動向を横目に米ドルショートでリスクを取る局面も増えそうです。

(出所:TradingView)
来年もボラティリティの高さで注目されるのは、今年ほぼ30円急騰したスイスフラン/円や、ユーロ/円といったクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の動向だと考えています。
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう!
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