米ドル/円や日米株価は先週方向感が出ず。パウエルFRB議長の利下げ示唆やトランプ大統領のクックFRB理事解任は米ドル安要因
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
MC叶内 早いですね、本日からもう9月なんですね。そういえば、この時期はAppleやGoogleが新製品を発表する時期ですが、何かサプライズはありましたか?
トレーダー西原 Appleはまだですが、GoogleからPixelの新型が出ました。すごいのは100倍超解像ズームというカメラです。
通常100倍というと、バズーカ砲のような超望遠レンズでも届きません。それをPixelはAI処理によって、驚くほど鮮明な超望遠撮影を可能にしています。
実際に撮ってみましたが、100倍なのにきれいに処理されるので、なんだこれ?というほどすごいのに圧倒されました。
MC叶内 AIの進歩がすごすぎて、ついていくだけでも大変ですよね。
それでは、まず先週(8月25日~)の振り返りからいきましょう。先週の株式市場は、日米ともに方向感に乏しく小動きでした。
ジャクソンホールでのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長発言を受けて、日本株は上昇で始まりましたが、その後はNVIDIAの決算発表を意識して動きにくかったようです。
S&P500は6460.26、前週末比0.10%安と小幅ながら4週ぶりの下落となりました。トランプ大統領がクックFRB理事の解任を発表したことは、FRBの独立性をめぐる懸念につながり、相場の重しとなりました。一方で、経済指標が予想より強めなものが多く、米国景気は底堅いとの見方が支えとなっています。例えば米耐久財受注(除く自動車:7月)は前月比+1.1%と6月+0.2%から伸びが大きく加速しました。
注目のNVIDIAの5-7月期決算は、売上高、純利益ともに市場予想を上回り、見通しもおおむね良好で、相場全体への影響は限られました。ただ、中国向けが含まれないことなどへの懸念や、データセンター向け売上高が予想を下回ったことが嫌気され、NVIDIAの株価は急落こそなかったものの下落しました。市場の高すぎる期待のせいかもしれませんが、値動き自体を見ると11週連続上昇(過去最長)のあと3週続落しています。
金曜日(8月29日)には、デル・テクノロジーズがAIサーバーの受注が急減したと発表したことや、中国アリババがAI推論向け新型チップを開発したとの報道で、AI関連銘柄が売られました。ナスダック総合指数も0.19%と小幅ながら下落、NYダウも前週22日に最高値を付けた後は一進一退で、結局0.19%安と反落しています。
日経平均は前週末比85円(0.2%)高の4万2718円と2週ぶりに上昇した一方、TOPIXは-0.83%と2週連続の下落となりました。AI関連でも非鉄株は非常に強い展開が継続し、ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社の株式買い増しが明らかになった三菱商事など商社株が買われました。
為替市場はいかがでしたか?
トレーダー西原 先週は、ジャクソンホールでのパウエルさんのコメントを受け、米ドル弱気派が増えて週が始まりました。加えて、トランプ米大統領がFRBのリサ・クック理事を解任するという決断を下し、マーケットにショックを与えました。
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トランプ大統領がクック理事を解任する権限があるかどうかについては議論があり、法廷闘争に発展する可能性があります。以下は、この問題に関する主要なポイントです。
1. 連邦準備法では、FRB理事の任期は政治的干渉から独立性を保つために14年間と定められている
2. トランプ大統領が理事を解任できるのは、「for cause(=正当な理由)」がある場合に限られるとされている
3. この「正当な理由」とは、職務上の不正行為や職務怠慢などを指すと一般的に解釈されている
正当な理由があるかどうかがポイントになりそうですが、マーケットに大きな負荷を与えることになります。
まとめると、(1)トランプ大統領がFRBクック理事の解任を示唆するなど、中央銀行の独立性が危ぶまれる事態となっていること、(2)ジャクソンホール会議ではパウエル議長が9月の利下げを示唆し、年末までに0.5%の利下げが織り込まれていることの2点だけでも、大きな米ドル売り要因だと考えます。
しかし、先週の米ドル/円は神経質に乱高下しただけで、大きな動きはありませんでした。これについては展望で述べます。
それでは叶内さん、今週(9月1日~)のスケジュールと株の注目点をお願いします。
ユーロ/米ドルや米ドル/スイスフランでの米ドル安が狙い目か。レイバーデー明けの9月2日からマーケットは本格化の傾向
MC叶内 今週は、月曜(9月1日)がレイバーデーで米国が休場、金曜日に米雇用統計があるため動きにくそうです。レイバーデー明けは秋の始まりで、物色がガラッと変わることがあると言われますから、よく観察する必要があります。
9月相場はパフォーマンスが悪いというのが気にされているようです。2000年から2024年まででみると、S&P500は平均1.51%安で全12か月中最下位です。
米国の経済指標は重要なものが続きます。大注目は雇用統計です。先月(8月)が大荒れだっただけに警戒されますが、現在の市場の予想は非農業部門雇用者数は+7.8万人(前月+7.3万人)、失業率4.3%(前月4.2%)です。9月3日(水)の米JOLTS求人件数、9月4日(木)のADP雇用統計、新規失業保険申請件数発表を経てどうなるでしょうか。
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景況感をはかるものでは、9月2日(火)のISM製造業景況感指数、9月4日(木)の非製造業景況感指数も注目です。製造業景況感指数は市場予想48.9。また、日本時間9月5日(金)早朝に半導体ブロードコムの決算発表があります。
その他、海外では9月3日(水)に中国が第2次世界大戦終結80周年を記念する軍事パレードを行う予定です。
国内では、9月1日(月)に法人企業統計、9月5日(金)に毎月勤労統計(実質賃金)が発表されます。9月2日(火)の氷見野日本銀行副総裁の発言も日銀の行動を推し量るうえで重要になりそうです。9月4日(木)に30年債の入札があります。9月2日(火)に自民党両院議員総会があり、総裁選の前倒し実施の思惑が高まったり、誰が総裁になるかという予測が強まると相場に影響しそうです。
為替市場はいかがですか?
トレーダー西原 叶内さんも指摘してくれているように、先週は材料が多いにもかかわらず、相場は大きく動いていません。
その要因は、8月という季節性もあると考えています。
とんでもないニュースが飛び出せば話は別ですが、8月後半は通常、まだ欧米勢が夏季休暇を取っていることが多く、ボラティリティが低いため、相場はあまり動きません。
ところが、レイバーデー明けの9月相場は流動性が戻り、相場が本格化すると見られています。レイバーデーは本日9月1日(月)で、今日の米国市場はお休みです。そしてレイバーデー明けの9月2日(火)からマーケットが本格化する傾向があります。
方向性として公算が高いのは米ドル安です。
8月31日(日)、日経新聞が「自民党総裁選前倒し不要が52%」という世論調査を速報で出していましたが、自民党総裁選が前倒しになる可能性は依然として高いと見ています。
総裁選が行われると日本株は上がりやすく、米ドル/円は下げ渋るでしょう。そのため、米ドル安の狙い目は、ユーロ/米ドルか米ドル/スイスフランでの米ドルショート。

(出所:TradingView)
もしくは、ユーロ/円かスイスフラン/円のロングでしょうか?

(出所:TradingView)
MC叶内 レイバーデー明けの相場なので、ボラティリティが上がるならうまくチャンスにしたいですね。
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今月も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう!
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