米ドル/円は弱い米雇用統計でも157円台後半へ。本邦事業法人の米ドル買い需要は根強い
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 それでは叶内さん、さっそく先週(8月3日~)の株の振り返りからお願いします。
MC叶内 良好な内容で決算シーズンをほぼ終え、AI関連の巨額投資への懸念が和らぎ、米主要3指数はいずれも続伸。週間では4月中旬以来の大幅な上昇となりました。
S&P500が前週末比3.58%高と最高値を更新、NYダウも前半に最高値を更新し、週間で2.96%高、ナスダック総合指数も5.19%の上昇となりました。フィラデルフィア半導体株指数SOXも9.25%高と反発。ホルムズ海峡をめぐる協議が前進していると伝わり原油価格が下落、金利が低下したことも追い風になりました。
さらに、金曜(8月7日)に発表された雇用統計が弱かったことで、市場ではFRB(米連邦準備制度理事会)が来月(9月)に利上げするとの観測が後退し、株式市場には買い材料となりました。
恐怖指数とも呼ばれるVIX指数は14.92まで下がりました。これは12月雇用統計が発表された1月9日(金)以来、7か月ぶりの低水準です。
米国株高を受け、日経平均も1244円(1.9%)高の6万5606円と2週ぶりに上昇しました。好決算銘柄への個別物色も盛んで、TOPIXも1.79%高と反発しています。東証グロース250も5週ぶりに反発しました。
米国でもヘルスケアやソフトウェア関連の持ち直し、日本はゲーム・コンテンツ関連の底放れなど、半導体一色だったところから変化が見られます。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 先週の米ドル/円は、前半こそ協調介入の影響力の大きさを再認識する展開でしたが、後半は日本の事業法人を中心とした米ドル買い需要の根強さが目立つ週となりました。
日本単独の介入であれば、あっさり160円台まで押し戻されるパターンですが、今回は日米協調の枠組みが確認されたことで、値動きの質が変わりました。
一時的にせよ、米ドル/円があっという間に155円台まで急落したのは、まさに「Don't fight the Treasury(財務省と戦うな)」を再認識させる値動きだったと思います。
ただ、米雇用統計が弱い内容だったにもかかわらず、金曜の米ドル/円が157円台後半まで踏み上げられて終わったのは気になるところです。
この戻りの速さが、本邦事業法人の米ドル買い需要の根強さを物語っていると感じます。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
それでは叶内さん、今週(8月10日~)のイベントと株の注目点をお願いします。
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米ドル/円は158.58~155.23円のレンジを、8月12日の米CPIでブレイクするか注目
MC叶内 ハイパースケーラー(※)の巨額投資とAIブームの持続性への不安は、振り返ってみると、7月29日(水)のマイクロソフトの決算をきっかけに後退したように思います。
(※「ハイパースケーラー」とは、クラウドサービスを大規模に構築・運用する企業のこと。アマゾンやマイクロソフト、アルファベット、メタなどが含まれる)
マイクロソフトでは、償却期間の変更による影響はあるものの、2026年の設備投資額が抑制され、フリーキャッシュフローも拡大していました。 ひとまずAI・半導体関連株は底を打ったかに見えます。
一方、古河電工など好業績発表後に売られるものもあり、高値圏で買った投資家の戻り売りが出やすい「シコリ」が残った可能性もあります。「モメンタム相場」が転換したのかもしれません。
すると、次の焦点はインフレ動向です。原油価格を通じてインフレに影響を及ぼす可能性があるため、イラン情勢も引き続き重要になります。
8月12日(水)に米7月CPI(消費者物価指数)、8月13日(木)に米7月PPI(卸売物価指数)が発表になります。
CPIの市場予想は前年比+3.5%と6月から横ばい、前月比は+0.2%と6月-0.4%からプラスに転換する見込みです。コア前年比は+2.5%と6月+2.6%から鈍化、コア前月比は+0.2%で前回の0%から上昇する見込みです。中古車価格が下落見込みです。
先行指標ともいわれるPPIは前年比+4.9%、コア前年比が+4.1%と伸び鈍化が継続する見込みです。これは、比較対象となる前年の水準が高いためです。予想以上に物価上昇が落ち着けば、利上げ観測が一段と後退する可能性があります。
国内では、8月13日(木)に7月企業物価が発表になります。日銀が足元で注視しているとみられる指標です。7月30日(木)~31日(金)開催分の日銀金融政策決定会合の「主な意見」は8月10日(月)発表です。
モメンタムが転換したとしても、やはり産業として主役であろうAI・半導体関連では、8月11日(火)にルメンタム、8月13日(木)にアプライド・マテリアルズ(AMAT)が決算発表します。
米国が先々週(7月27日~)、中国製ロボット・電力インバーターを規制、それに中国が対抗措置を発表しており、米中摩擦の新しい段階も気になるところです。
そのほかの経済指標などでは、8月11日(火)に米7月中古住宅販売件数、8月14日(金)に米7月小売売上高、米8月ミシガン大学消費者マインド指数が発表されます。
国内では、8月10日(月)に7月景気ウォッチャー調査、8月12日(水)に7月マネーストックが発表されます。8月14日(金)はオプションのSQ(特別清算指数)算出日です。
国内決算発表は終盤で、8月10日(月)のサンリオ、8月13日(木)の三越伊勢丹、カネカ、8月14日(金)アシックスなどが予定されています。
日本は8月11日(火)が山の日で休場、後半からはお盆でやや薄商いになることも考えられます。
為替市場の見通しはいかがですか?
トレーダー西原 米雇用統計がかなり弱い内容だったわりには、米ドル/円の下げは一時的で、再び157円台後半まで戻しています。
安値からは大きく値を戻したという印象を受けますが、163.99円の高値から155.23円の安値の38.2%戻しにあたる158.58円はまだ超えられていません。
戻りはこのあたりまでだと想定していますが、米ドル買い需要も根強いことから、50%戻しの159.61円あたりまで戻す可能性もあると考えています。
一方で、協調介入が入ったにもかかわらず、現時点で155.00円を割り込めていないという点も見逃せません。
上値は158.58円、下値は155.23円というレンジでの持ち合いが続いており、このレンジをどちらに抜けるかが目先の焦点になります。

このレンジをブレイクさせる材料になりそうなのが、今週発表される経済指標です。特に8月12日(水)発表の米7月CPIに注目しています。
背景として、FOMC(米連邦公開市場委員会)が先月(7月)政策金利を据え置いた後も、当局者の一部からは早期の追加利上げを主張する声が出ているとBloombergが報じています。
その一方で、7月の雇用者数は減少し、5月・6月分もそろって下方修正されるなど、労働市場の弱さへの懸念も再燃しました。
市場は「インフレ警戒から利上げすべきという見方」と「労働市場の減速を警戒する見方」の綱引きのなかにあります。
その判断材料として9月FOMCまでのインフレ指標、とりわけ今回のCPIに関心が集まっているわけです。
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米国のユーロ/円売り介入をECBは知らされず。米ドル/円の160~162円の防衛ラインは、政治的な前提のうえにある
もうひとつ意識しておきたいのが、米国がユーロ/円で介入した際、ECB(欧州中央銀行)には事前に知らされていなかったという点です。
米国がユーロ/円での円買い介入を行った以上、当然ECBの了承を得ているというのが、これまでのマーケットのコンセンサスでした。
ところが、FT(フィナンシャルタイムズ)が興味深いスクープを報じています。先々週金曜(7月31日)、米国が円買いのためにユーロを売った件について、ECBはまったく知らされていなかったというのです。
複数の関係者によれば、ECBがこの動きを把握したのは取引が執行された後で、ラガルドECB総裁とベッセント米財務長官が電話で話をしたのは翌土曜(8月1日)だったといいます。
通常、この種の介入で米国が使うのは米ドルです。
今回ユーロが使われたのは、米ドルを売れば「強いドル政策」への疑念を招きかねなかったためと説明されていますが、FTによると、ECBの一部高官はこれを『前例のない違反』と受け止めているといいます。
第二次大戦後、欧米の中央銀行と財務省は相互信頼と事前協議を重んじ、為替介入は協調して行うのが通例でした。
欧州の政策当局者の議論を知る関係者は、NY連銀を通じたユーロ売却について強い衝撃と遺憾の意をFTに語っています。金融安定を支えてきた長年の協力体制が揺らぎかねない、との懸念です。
ここに、今回の枠組みの本質が見えます。三村財務官は日米の協調を「通貨同盟の完成形」と表現し、米高官はG7(先進7カ国)への拡大にも言及しました。
しかし実際には、その第一歩でECBが蚊帳の外に置かれ、憤慨しているわけです。
米国が「守るべき友」を選び、選ばれなかった側には事後通告で済ませる――今回の介入が単なる為替オペレーションではなく、極めて政治的な行為であることを示す一件だと私は思います。
今回、日本は幸いにも「守られる側」にいます。ただし、それは米国の判断次第でいつでも変わり得る立場でもあるということです。
160~162円が当局に意識されている可能性を念頭に置きつつ、その前提が政治的なものであることは、頭の片隅に置いておきたいところです。
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう!
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