米ドル/円は一時163.99円と40年ぶり高値更新! 「利回り管理」への政策転換観測と中東情勢の緊迫化が重なった
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 それでは叶内さん、さっそく先週(7月20日〜)の株式市場の振り返りからお願いします。
MC叶内 S&P500は前週末比0.61%安と2週連続で下げました。続落は3カ月半ぶりのことです。NYダウは0.4%安と3週続落、ナスダック総合指数が2.1%安と大幅続落。マグニフィセントセブン(※)が崩れたことが響きました。
(※マグニフィセントセブンとは、米株式市場を代表するテクノロジー企業であるアルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディアの7社を指す)
半導体株指数SOXは週間では1.2%高と前週の10%安から持ち直していますが、木・金曜は2日間で4.77%安となっています。
日経平均は前週末比470円(0.7%)高の6万4611円と3週ぶりの小反発で終えましたが、金曜(7月24日)に2%超の大幅下落。TOPIXは2.3%高と3週ぶりの反発、金融、内需株などに買いが入りました。
週初(日本は3連休明け)は、AI・半導体関連に買いが入ったことで市場心理が改善し、日経平均も急伸する場面がありました。
しかし、7月22日(水)に米アルファベット(GOOG)が決算発表とあわせ、予想外にAI投資額を引き上げ、フリーキャッシュフローが赤字になるとしたことで、ハイパースケーラーの投資回収懸念が再燃しています。7月23日(木)に15年ぶりの高成長を発表したインテルも、一時10%超の上昇から、カンファレンスコールで設備投資の増額が示されると失速しました。
米国とイランの対立が激化するなか、ホルムズ海峡の代替ルートとされる紅海がフーシ派によって海上封鎖されるという事態に原油価格が大幅に上昇。これがインフレ懸念を高め、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ観測につながったことも株価の重しとなりました。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 先週の米ドル/円は、「利回り管理」への政策転換観測と中東情勢の緊迫化が重なり、40年ぶりの高値を更新した1週間でした。
週末のNY市場の米ドル/円は163.83円でクローズ(始値162.43円、高値163.99円、安値162.22円)しています。
先週の材料は大きく3つありました。
1つ目は、7月21日(火)に「骨太の方針2026」が閣議決定されたこと。市場を動揺させた「骨太ショック」の震源となった金融政策への言及は、脚注に日銀法第3条を引き、「金融政策の具体的手法は日銀に委ねられる」と文言修正され、「利上げけん制」のイメージ緩和が図られました。
一方、2040年度までに官民で370兆円超という投資計画は、通常歳出とは別の上限を設けない投資枠組みとして正式に盛り込まれました。
ただ、財源は依然として明示されておらず、「財政健全化」の文言削除とあわせて国債増発への警戒は消えていません。
2つ目は、ブルームバーグが7月22日(水)に報じたドイツ銀行のリポート「日本は円ではなく利回りの管理へ移行も」です。
370兆円計画の支出余地を確保するため、政策の重点が「円安を止める」為替管理から「国債利回りの上昇を抑える」利回り管理へ移るという指摘でした。
これは事実上、円防衛の優先順位が下がることを意味するため、マーケットは円安材料として消化しました。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円170円年内到達の根拠は、高市政権の370兆円計画にあり! 支出のため短期利回り抑制なら、日米短期金利差拡大と、日本長期金利上昇を見越した日本売りが活発に(7月23日、西原宏一)
3つ目は中東情勢です。フーシ派が7月22日(水)、紅海でサウジアラビア関係の石油タンカー2隻をミサイルと無人機で攻撃し、戦域拡大の懸念が急速に高まりました。
トランプ米大統領はSNSに「イランとフーシ派に大規模な軍事的懲罰を加える」と投稿し、WTI原油先物は一時93ドル台まで急伸しました。
通常、地政学リスクの高まりは「リスク回避の円買い」を誘いますが、今回はほぼ円が買われていません。
原油高は日本の交易条件悪化とインフレ再燃に直結するため、「有事の米ドル買い」と「悪い金利上昇」が重なり、米ドル/円は7月22日(水)に約40年ぶり(1986年12月以来)となる163円台に乗せ、週末には一時164円に迫る水準まで上値を伸ばしました。
片山財務相の発言からは円安への強い危機感が伝わってこず、高市首相自身が円安メリットを強調してきたことも、米ドル買いの安心材料になっています。
163円台に乗せたことで介入警戒感は高まっていますが、事業法人は下がったところを待ち構えており、押し目らしい押し目ができない。介入警戒感がむしろ米ドル/円を底堅くさせるという、これまでの構図に変化はありません。
日本10年債利回りは節目の3.00%を意識した攻防が続いています。
この流れがFOMC(米連邦公開市場委員会)・日銀会合(日銀金融政策決定会合)のダブルイベント週にどうなるか? 展望は後ほど。
それでは、叶内さん、今週のイベントと株の注目点をお願いします。
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米ドル/円は165円目標、170円年内到達見通し変えず。日米金融政策のダブルイベント週で、日銀会合が円売りの号砲になるか注意
MC叶内 まずは中東情勢ですが、週末に米国がイランへの大規模攻撃を見送ったことで、イラン側も報復攻撃を止めると表明したと伝わり、原油先物が下落しました。いったん落ち着きを見せています。
今週(7月27日~)は重要イベントが目白押し。注目のひとつは企業決算、もうひとつは金融政策です。
米ビッグテックでは、7月29日(水)にマイクロソフト、メタ・プラットフォームズ、7月30日(木)にアップル、アマゾンが決算を発表します。アップル以外はAIインフラへの設備投資額も注目です。決算のたびに売られる流れが止まるのかどうか。半導体設計ARM、光関連のコーニングなどの決算発表も今週です。
韓国のメモリー大手SKハイニックスが7月29日(水)、サムスン電子が7月30日(木)に決算発表を予定しています。
7月27日(月)、中国半導体メモリー大手CXMTが上海市場へIPOすることも注目されています。資金調達額はアジア最大。前週は中国製AIの脅威も気にされましたが、メモリーでもライバル登場となるのでしょうか。
国内では7月28日(火)にキーエンス(ファクトリーオートメーション)、SCREEN(半導体洗浄装置)、日東電工(半導体パッケージング)、7月29日(水)にアドバンテスト、7月30日(木)に東京エレクトロン、7月31日(金)にキオクシア、村田製作所(積層セラミックコンデンサ)の決算発表が予定されています。
半導体関連以外でも、今週はボーイング、コカ・コーラ、パナソニックHD、日立、富士通、野村総合研究所、オリエンタルランド、みずほ、カルビー、ファナック、ソニーなどの決算発表があり、忙しいです。
そして、今週は中銀ウィークです。7月28日(火)~29日(水)にFOMC、7月30日(木)にMPC(英金融政策委員会)、7月30日(木)~31日(金)に日銀会合が開催されます。市場予想の中心はともに政策金利据え置きです。
ただ、FOMCはいまだ利上げ予想が3割以上あり、見方が割れているため、終了後の値動きは荒いかもしれません。会見などで原油高をどう見るのか、次回会合に向けての示唆はあるかも注目ポイントになりそうです。
経済指標では、海外で7月27日(月)に米6耐久財受注、7月28日(火)に米7月消費者信頼感指数、7月30日(木)に米4~6月期GDP、米6月個人消費支出(PCE)物価指数が発表されます。
国内では、7月30日(木)に7月消費動向調査、2年債入札、7月31日(金)に7月東京都区部CPI(消費者物価指数)、6月失業率・有効求人倍率が発表されます。
片山大臣の国内投資促進発言を受けて、関心の高まりそうな社会保障審議会資金運用部会が7月27日(月)に開かれます。
為替市場の見通しはいかがですか?
トレーダー西原 今週の為替市場は、7月28日(火)〜29日(水)のFOMC、7月30日(木)〜31日(金)の日銀会合という、日米金融政策のダブルイベントが最大の焦点です。
まずFOMC。原油の一時92ドル台への急伸でインフレ再燃リスクが意識されるなか、ウォーシュFRB議長が引き締めバイアスを維持するのはほぼ確実でしょう。
欧米中銀が引き締め方向にあるかぎり、日米金利差は開いたまま。FOMCは素直に米ドルの支援材料とみています。
より重要なのは日銀会合です。
もともとOIS(翌日物金利スワップ)の織り込みでは、今年12月の日銀利上げが有力だったのですが、 現在チェックすると、10月利上げの織り込みが0.8回になっています。
12月までの利上げは100%織り込み済みです。
ただ、370兆円計画を抱える高市政権にとって利上げは「高くつく」手段であり、政権が日銀に慎重対応を求めるなか、想定されるのは現状維持+ハト派寄りの情報発信。
日銀会合が円売りの号砲になるリスクに注意です。
テクニカル面では、165.00円に巨大なバリアオプションがあるといわれており、介入警戒ゾーンとも重なるため、164円台では攻防が激しくなるでしょう。
ただ、仮に介入や日銀サプライズで急落しても、米ドル買いのタイミングを遅らせてきた事業法人が下値で待ち構えています。押し目は彼らの買い場となり、下値は限定的とみます。
戦略は変わらず米ドル/円のロング継続、押し目買い。ターゲットは165円、年内170円到達の見通しも据え置きです。
仮に165円を明確に上抜ければ、介入待ちだった実需の米ドル買いが一気に噴き出し、上昇が加速する展開も想定しておきたいところです。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう!
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