米ドル/円は弱い米雇用統計で156円台半ばへ急落も、米CPI後は底堅く159.57円まで反発
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 それでは叶内さん、さっそく先週(8月10日~)の株の振り返りからお願いします。
MC叶内 米国とイランの和平が遅々として進まず、金利もしっかりとは下がらないなか、それでも株式市場は好調さを保っています。
S&P500は前週末比で0.36%高と3週連続の上昇、8月13日(木)には最高値を更新しました。小型株指数のラッセル2000も先週、最高値を更新していて、株高のすそ野が広がっていることがわかります。ナスダック総合指数は0.1%高で小幅続伸。一方、NYダウは0.6%安と反落しました。
日経平均は前週末比3107円(4.7%)高の6万8713円と続伸。AI・半導体関連の一角が買われたことに加えて、内需関連もしっかり。好決算銘柄が個別に物色され、TOPIXは8連騰して前週末比3.0%上昇、最高値を更新しました。
注目された物価指標、米CPI(消費者物価指数)やPPI(卸売物価指数)が予想を下回り、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを急がないとの見方につながり、株価の支援材料になりました。韓国株が安値から20%上昇し、再度「強気相場」に入ったとみなされたことも半導体関連の一角を押し上げました。
ただ、エヌビディアや、市場予想を上回る決算を発表したアプライド・マテリアルズが下落して週を終えており、半導体株指数のSOXは0.49%高にとどまりました。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 先週は、8月7日(金)の米雇用統計を受けて急落した米ドル/円が、戻り歩調を続けた1週間でしたね。
7月の非農業部門雇用者数が前月比2.3万人減と予想の8万人増を大幅に下回り、米ドル/円は156円台半ばまで急落していました。
ただ、週明け8月10日(月)は株高を追い風にキャリートレードが再燃。円売りが優勢になり、週明け早々に200日移動平均線が位置する158.25円を上抜け、159円台を回復しました。
8月11日(火)は米CPI発表を控えて様子見ムードで動きは限定的でしたが、原油高と米金利の上昇が米ドルを下支え。
そして、8月12日(水)発表の米CPIは落ち着いた内容だったにもかかわらず、発表直後の下落は即座に買い戻される展開となりました。
株式市場では弱いインフレ指標が米追加利上げへの警戒を和らげる材料として好感された一方、為替市場では米ドルの底堅さが際立った印象です。
一方で、視点を変えれば、163.99円の高値から介入が入った後、155.23円の安値からの50%戻しが159.61円。実際の高値が159.57円とほぼ同値で、介入後の下落幅の半分をきれいに戻しただけ、とも言えます。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
協調介入が入ったことで、162.00円という水準もかなり遠く感じられるようになりました。その意味では、協調介入には一定の効果があったと言えます。
介入は時間を買うことはできるが、トレンドは作れないと言われています。
協調介入で時間を稼いでいるうちに、日銀が連続利上げに踏み切ることで、円安を阻止し、トレンドを変えることができるのですが、実際に日銀の連続利上げ織り込み度は徐々に上がってきました。
日銀は何回まで連続して利上げできるのか? そのあたりは展望で述べます。
それでは叶内さん、今週(8月17日~)のイベントと株の注目点をお願いします。
日銀は連続利上げできないと見透かされれば、米ドル/円は再び162円を試すかも
MC叶内 市場の目線としては来週、8月27日(木)〜29日(土)の「ジャクソンホール会合」と、26日(水)のエヌビディアの決算に向かいがちです。
注目されているのは、19日(水)に公表されるFOMC議事要旨(7月28日、29日開催分)です。据え置きの決定に反対した3名のほか、どの程度タカ派的な意見があったのかなどがチェックポイントでしょう。
とはいえ、その後に米CPIなど弱い指標が出ていますので、過去の話とされるかもしれません。
経済指標では、 米国は8月17日(月)に8月NY連銀製造業景気指数、18日(火)に米輸出入物価、米7月の住宅着工件数と鉱工業生産が発表されます。
8月20日(木)に米8月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数と米7月コンファレンスボード景気先行指数、21日(金)に製造業PMIが発表になります。
中国で、7月工業生産や小売売上高などが8月18日(火)に、中国ローンプライムレート(最優遇貸出金利)が20日(木)に発表されます。
国内では17日(月)に4~6月期GDP、19日(水)に6月機械受注、8月20日(木)に7月貿易収支、8月21日(金)に7月全国CPIが発表されます。8月18日(火)に5年債、8月20日(木)に20年債の入札があります。
企業関連では、20日(木)にウォルマートが決算発表を予定しています。
また、ヒューマノイドロボットのUnitreeが上海市場、ネット通販のSHEINが香港市場に上場するとの報道が出ています。20日(木)にサムスン電子が機関投資家イベントに登壇するそうです。
米国とイランの間で6月に署名された戦闘終結に向けた覚書は今週、17日(月)に期限を迎える予定です。
一方、イラン側は、そもそも期限付きの合意はなく、延長という考え方自体が当てはまらないとの立場を示しています。米国からも延長を計画しているという話はありませんでした。
金融市場では「もうこの材料には飽きた」という声も聞かれますが、先週の動きなどを見ると、インフレ、金融政策を通して影響力を持っているとの見方もあります。
日系証券会社が先週、日本株見通しを引き上げていました。2027年末にTOPIX4600、日経平均7万3000円というのがメインシナリオだそうです。内外投資家との意見交換では、上振れ・下振れシナリオについて突っ込んで聞かれたそうです。おもしろいですね。
為替市場の見通しはいかがですか?
トレーダー西原 今週の為替見通しですが、この数日マーケット参加者の間でかなり話題になっているのが、ジリアン・テット氏がFT(フィナンシャルタイムズ)に寄せた「すべての視線は円に」という論考です。
日経新聞にも訳が載っていましたが、その論考では、「日本発の債務危機」が急に現実味を帯びてきた、という問題提起がされています。
先ほどお話しした協調介入も、あくまで「時間を買った」だけです。
円安トレンドそのものを変えるには、日銀が利上げを重ねて、円安阻止に政府・日銀が強いスタンスを見せる必要があるというのが、マーケットの共通認識になっています。
その日銀の利上げ織り込み度ですが、じわじわと上がってきました。9月のOIS(翌日物金利スワップ)市場では、利上げの織り込み度は79.8%と8割近くまで高まっています。
来年(2027年)1月までに2回の利上げが行われることをほぼ完全に織り込み、来年6月には3回を織り込みつつあります。3回実施されれば誘導目標金利は1.75%となり、かなり金利がつく世界となります。
ただ、ここからが本題です。
日銀が量的緩和で積み上げてきた国債の山は、利上げをすればするほど、当座預金への付利負担が膨らんで日銀自身の収支を圧迫します。
つまり、「利上げを進める→日銀の収益を圧迫しやすくなる」という構図がある連続利上げを進めようとすれば、政府の債務負担や、日銀の収支悪化という問題にぶつかる可能性があるわけです。
怖いのはここです。もしマーケットが「日銀には債務問題があり、連続利上げなんてできない」と見透かしてしまえば、協調介入で稼いだ時間そのものが意味を失います。時間稼ぎが時間稼ぎとして機能しなくなる、ということですね。
なので、今週以降見るべきは、米ドル/円の値幅そのものより、日銀と政府が、債務問題への懸念を市場に強く意識させることなく、「利上げに耐えられる」という姿勢をどこまで説得力を持って示せるか。そこに尽きると思います。
前述したOIS市場の利上げ織り込みが示すように、来年半ばまでに連続利上げが実施され、誘導目標金利が1.75%まで引き上げられれば、円安圧力は徐々に収まってくると考えています。
ただ、マーケットに「日銀には債務問題があり、連続利上げなんてできない」と見透かされてしまったら、協調介入による時間稼ぎの効果も薄れ、再び米ドル/円は162円超えを試しに行く展開になるかもしれません。

(出所:TradingView)
一方、短期のトレードでは、米ドル/円は神経質ながらも値幅が縮小してきています。そのため、豪ドル/円を中心としたクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が底堅く推移しそう。
しかし、中期のマーケットの視点は、日本発の債務危機と日銀の連続利上げです。
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう!
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