ザイFX! - 初心者必見のFX総合情報サイト

人気FX口座ランキング
----年--月--日(-)日本時間--時--分--秒
ロンドン発!松崎美子のFXマーケットレター

日米の超長期金利が異例の急騰! 海外投資家が語る「日本は壊れている(Japan is broken)」とは何を意味するのか?

2026年08月11日(火)06:44公開 (2026年08月11日(火)06:44更新)
松崎美子

投資情報充実の外為どっとコム!当サイト口座開設者限定キャンペーン実施中!

 最近、SNSや海外投資家の間で「Japan is broken(日本は壊れている)」というショッキングなフレーズを目にする機会が増えました。

 最初は、急激な円安を抑え込むための「日米協調介入」の限界や政策失敗を指していると思っていました。しかしその後 報道を追ってみると、単なる為替介入の成否にとどまらず、日米双方の金利上昇と政策の混迷が、日本では特に生命保険会社(以下、生保)の運用基盤を強力に包囲し始めていることにたどり着いたのです。

過去最大膨らむ含み損と、忍び寄る「解約ラッシュ」の影

 日本の大手生保4社が発表した2026年4~6月期決算は、市場関係者に大きな衝撃を与えました。各社が保有する国内債券の評価損は前年同期比7%増の約15兆円に達し、過去最大を更新しただけでなく、含み損の拡大は7四半期連続であり、この間に実に3倍以上に膨れ上がった計算となるそうです。

●超長期金利の急伸

 含み損の最大の要因は、超長期国債利回りの歴史的な急伸であり、高市政権による積極的な財政出動への警戒感などを背景に、5月には30年物日本国債利回りが1999年の導入以来初となる4%超を記録。生保は将来の保険金支払いに備え、超長期債を中心に長期で運用する構造を持つため、市場金利の急上昇(=債券価格の急落)の直撃を受ける格好となったのでしょう。

日30年債利回り 週足
日30年債利回り 週足

(出所:TradingView

 債券価格の下落(利回り上昇)は、すでに一部の保有債券において簿価の50%以上が吹き飛ぶ減損処理を引き起こしており、大手生保各社が数百億円単位の減損損失を計上するなど、業績への実害が表面化し始めました。

●顧客の解約急増

 本来、生保は国債を満期まで保有すれば評価損を出させずにやり過ごすことができるのですが、日本銀行が過去2年間で政策金利をマイナス圏から1%へと引き上げたことにより、金融環境の前提が根底から覆りました。その結果として、顧客はより利回りの高い魅力的な代替商品へ資金を移そうと、保険の「早期解約」が急増したのです。

 生命保険協会のデータによれば、2026年1~5月の解約・失効返戻金支払額は、前年同期比約40%増の6兆円を突破。これは2020年以降の統計で過去最高水準でした。このような解約の急増を受け、生保の保険料収入は2桁%レベルで落ち込んでおり、ダブルの打撃を被っています。

 金利のない世界から一転して「高い金利商品」が市場に出てきたことにより、顧客の金利に対する考え方も大きく変わっており、万が一 生保各社がさらなる解約ラッシュに対応する手元資金の確保を迫られれば、生保は抱え込んだ国債の「投げ売り(=損切り)」を余儀なくされ、流動性危機と巨額の売却損に見舞われるリスクも浮上しかねません。報道によれば、金融庁もすでにこの深刻な構図に対して、強い警戒感を表明しているようです。

米国で再燃する「Sell America」とワシントンの混迷

 さらに市場を複雑かつ深刻にしているのが、米国で浮上した「Sell America(アメリカ売り)」トレードの再燃というウワサです。

 ウォーシュFRB議長によるインフレ抑制姿勢に対する不透明感や、ベッセント財務長官の政策舵取りなど、米国発の混乱が広がり始めています。米30年債利回りは2007年以来の高水準となる5%超へ急騰しており、トランプ政権の財政赤字拡大や関税リスクと相まって、米国の債券やドルに対するリスクプレミアムが要求され始めています。

米30年債利回り 日足
米30年債利回り 日足

(出所:TradingView

そのタイミングでの「日米協調介入」

 先日、ほぼ30年ぶりとなる日米協調の円買い介入が実施されました。ベッセント財務長官は「アジア通貨全体の通貨安を防ぐため」「必要なら何でもする」と介入を擁護していますが、米国側が(米ドルではなく)ユーロを原資に介入を行った背景には、米ドル売りの直接的なインパクトを抑え、自国の国債市場の崩壊を回避したい思惑があったことは確実です。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:TradingView

 もちろん米国は介入原資としてFIMAレポファシリティーを提案していますが、万が一 日本側が今後の介入原資を捻出するために、1兆ドルを超える膨大な「米国債」を売りに出さざるを得なくなった場合、米国の長期金利にはさらなる暴騰圧力がかかることになるだけでは止まらず、米国の金利上昇はグローバルに波及します。

 それは巡り巡って日本の金利を押し上げ、日本の生保の債券ポートフォリオをさらに痛めつけるという「金利上昇の悪循環」が形成されつつある点は、頭に留めておいてください。
【※関連記事はこちら!】
日米協調介入の影響で円は一時的に方向感を失いそうだが、米ドル/円の円安トレンド継続は変えない!9月日銀会合がターニングポイントとなるか?(8月6日、今井雅人)

構造改革なき介入の限界

 海外投資家が口にする「Japan is broken (日本は壊れている)」という言葉の真意は、単に「円安阻止の介入が効かない」という表面的な冷やかしではないはずです。

 財政膨張への懸念、日銀の政策金利と市場金利との乖離、そして生保をはじめとする国内金融機関が抱える巨額の含み損と流動性リスクという「構造的欠陥」を放置したまま、対症療法的な為替介入を繰り返す構造そのものへの強烈な警告です。

 適切な政策の組み合わせが正されない限り、どれほど歴史的な日米協調介入を行なおうが、通貨や市場の安定は勝ち取れないことは火を見るより明らかです。

 日米の超長期債市場が発する警鐘は、日本の金融システムが今まさに構造的な試練の刻(しれんのとき)を迎えていることを如実に物語っているのではないでしょうか?

日米30年物国債利回り
日米30年物国債利回り

(出所:TradingView

米ドル基軸通貨体制のコスト

 最後になりますが、私は9月の日銀金融政策会合での利上げを予想しています。

 もちろん月末に開催されるG20会合(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)でのベッセント財務長官と植田日銀総裁との会談内容次第では、それ以降にずれ込むかもしれません。

 しかしベッセント財務長官によれば、今後の介入の原資はFIMAを使って、中央銀行が保有する米国債を担保にしてFRB(米連邦準備制度理事会)から米ドルを調達するしくみとなるようです。

 本来であれば、中央銀行は「いざという時には売れる」「流動性がもっとも高い資産」と考えて、米国債を外貨準備として保有するはずです。しかし、FIMAの登場により、「米国債を売られると困るので、担保として使ってください」と一方的に言われたのです。

 これは見方を変えれば、米財務省が外国の米国債保有者に対し、「米国債を売らないでくれ」と言わざるを得ないほど、米国の国債利回りと債券市場が脆弱になっているということなのかもしれません。

 そして、この動きによって従来の外貨準備の常識そのものが、米国の財政・金利環境によって成立しにくくなっており、最終的には米国の為替政策・財政政策・金融政策、そしてFRBの独立性の境界があいまいになる気がしてなりません。

 果たしてこれを米ドルの基軸通貨体制の「新しい形」として市場は受け入れざるを得ないのか現時点ではわかりませんが、基軸通貨国が自国通貨を売ることを躊躇すること自体が、従来の米ドル基軸通貨体制と違う兆候に思えてならない私です。

 どうしても「過度な円安」にばかり目が向きがちですが、「基軸通貨米ドル」の価値についても、今後 議論が高まると考えています。

人気のザイFX!限定タイアップキャンペーンをPickUp!
FX初心者のための基礎知識入門
CFD口座おすすめ比較 人気FX会社ランキング 太田忠
CFD口座おすすめ比較 人気FX会社ランキング 太田忠
『羊飼いのFXブログ』はこちら
↑ページの先頭へ戻る
キャンペーンおすすめ10