■スコットランド独立の可能性から、英ポンドは急落!
米ドルが上昇を続ける中、そのボラティリティの高騰を牽引しているのが英ポンド/米ドル。英ポンド/米ドルはこの1カ月半で、高値の1.7192ドルから約1000pips急落しています。
(出所:米国FXCM)
英ポンド/米ドルの下落を加速させたのが、9月18日(木)に予定されている、スコットランド独立の賛否を問う住民投票。
2012年に英国・スコットランド両政府間で住民投票開催が合意されました。これまでは一貫して賛成が3割強、反対が5割弱程度で推移し、スコットランドは英国内にとどまるというのがコンセンサスでした。
ところが先月、8月から、独立への支持が急速に伸び始めます。
そして、先週末、9月7日(日)に公表された世論調査では、ついに独立賛成派(51%)が反対派(49%)を初めて上回ったのです。これによって、スコットランド独立という一大イベントがにわかに現実的となってきました。
【参考記事】
●スコットランド独立の可能性が急浮上! 経済への影響は? ポンドは暴落するか?
呼応して、週明け、9月8日(月)の英ポンド/米ドルは、大きく窓を開け続落。一時1.6052ドルまで急落しました。
(出所:米国FXCM)
■仮にスコットランド独立でも懸念材料は多い
ここにきてスコットランドの独立賛成派が増えているのは、ナショナリストが増えているわけではなく、経済的視点からの考察。
北海油田はスコットランドの領海の「9割」を占めます。そのため、スコットランドは独立後も財政的には問題なく運営できるだろうという考えが賛成派の中で拡大しているようです。
ただ、反対派は、スコットランドはノルウェーのような蓄えがないため、独立後は経済が衰退するという意見。
一方、英国のオズボーン財務相は「仮にスコットランドが独立すると英ポンドを使用させない」と明言しています。そのため、スコットランドは、仮に独立してもどの通貨を使うかが明確になっておらず、独立に向けての懸念材料が多く残されています。
■なぜ、スコットランドは住民投票だけで独立できるのか?
ここで、なぜ住民投票だけで独立できるのか?という疑問がわきます。
たとえば、日本の沖縄県議会が「日本から独立する住民投票を実施します」といっても何の効力もありませんよね。
スコットランドでは、1998年のスコットランド法による権限移譲でスコットランド議会が創設され、内政を中心に幅広く立法権が認められていることが背景のようです。
ともあれ、上記を背景に英ポンド/米ドルは一時1.6052ドルまで急落。
(出所:米国FXCM)
■英ポンド/米ドルは5~10%程度下落する可能性も
上のチャートを見ていただくと、2013年7月安値と2014年7月高値の上昇幅の50%戻しが1.6004ドルに位置しており、今週(9月8日~)下落した後は、そのレベルがサポートになって反発している展開。
ただ、仮にスコットランドの独立が決定した場合、英ポンド/米ドルは5~10%下落するというのがマーケットのコンセンサスになりつつあります。
つまり、仮に独立となれば、英ポンド/米ドルは1.55ドルから1.50ドル台へと急落する可能性を秘めているということになります。
(出所:米国FXCM)
こうしたことを背景に為替マーケットでは急速に英ポンドに対して、注目が集まっています。
ともあれ、住民投票まであと1週間を切ってきました。
9月10日(水)には英国のキャメロン首相が、急遽スコットランド入りし、「この家族が引き裂かれることを望まない」と独立を支持しないように訴えるなど、賛成派、反対派の動きが活発化しています。
わずか1カ月で5円強上昇した米ドル/円に加え、歴史的な投票日を控える英ポンド/米ドルにも注目です。
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