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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

米長期金利上昇でサプライズのドル安に。
「日銀騒動」はポジション調整の口実か

2018年01月12日(金)17:00公開 (2018年01月12日(金)17:00更新)
陳満咲杜

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■日銀政策修正による米金利上昇に「悪い金利高」懸念も

 もっとも、日銀のオペ減額後、超長期国債利回りの上昇は海外に波及して米10年物国債利回りの高騰をもたらした。本来、米10年物国債利回りの高騰は米ドル高・円安に作用するはずだが、日銀に対する思惑が拡大することで円買いが一段と進んでしまった。日銀の政策修正をきっかけに、世界のリスクオンの流れが逆転するのでは…と危惧されたからだ。

 詰まるところ、日銀政策の修正があれば、米金利の一段上昇につながるが、それは「悪い金利高」とみなされるリスクが大きいのだ。

 本コラムでも取り上げたように、米金利上昇自体は米ドル高をもたらす要素であるが、株式市場が耐えられず反転してくれば、むしろリスクオフの円高につながり、米ドル売りの原因になり得る。

【参考記事】
米長期金利上昇で米ドル下げ一服。ユーロ/円、英ポンド/円は大幅上昇も!?(2017年12月1日、陳満咲杜)

 2017年1月9日(火)からの市況は、このような思惑や推測を裏付けるリアルな値動きであったと思う。

■「日銀騒動」はポジション調整の口実に使われた?

 そうなると、ここから米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の動向を占う重要なポイントは、何と言っても米長期金利の上昇が「悪い金利高」の水準に達したかどうかに帰結できるだろう。

 米10年物国債利回りは、執筆中の現時点で2.55%をわずかに下回る程度で推移しており、ここ約1年強の高値水準に回復したとはいえ、2016年12月高値の2.641%や2017年3月高値の2.629%の「ダブルトップ」を超えていない

米長期金利(米10年物国債利回り) 日足
米長期金利(米10年物国債利回り) 日足

(出所:Bloomberg)

 また、中国政府は米国債購入停止の報道を否定しており、日銀の「ステルステーパリング」疑惑も単純に「技術ミス」だと言うのであれば、近々日銀関係者による何らかの「火消し」も想定される。そうなれば、米長期金利の上昇傾向は変わらないとしても、たちまち前述の「ダブルトップ」をブレイクし、また、「悪い金利高」に発展することはないだろうと思う。

 何しろ、NYダウは昨日(1月11日)も高値を更新し続けており、「悪い金利高」云々は一時の杞憂で、リスクオフの状況にはほど遠い環境が続いているのも明白だ。

NYダウ 日足
NYダウ 日足

(出所:Bloomberg)

 要するに、米国株市場に波及していない「悪い金利高」の懸念が為替市場にて大きな波乱をもたらしてきたのは、市場の内部構造による側面も大きい。

 国債通貨先物市場(IMM)における週間ベースの円売りポジションは12万超枚の売り越しが示されていた。これは昨年(2017年)11月に記録した13万6000枚の売り越しの規模には及ばないものの、4年ぶりの高い水準であることは変わらず、何らかの材料でポジション整理が行われやすいタイミングであった。

 今回の「日銀騒動」は絶好の「言い訳」に使われた可能性が大きく、本質的には偏ったポジションを整理するニーズがあったのではないかと推測される。

■米ドル/円は111円割れの可能性もあるが…

 米ドル/円は一時、111円の節目に接近したことから考えると、これから一時、111円の節目割れがあってもおかしくないだろう。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 では、このまま米ドル安・円高が進むかと聞かれると、筆者の答は前述の理由からノーだと思う。

 日米金利差が昨年(2017年)9月以来の開きを示している中、日銀の政策修正が行われていない、また、米国が「悪い金利高」になっていないうちは、米ドル/円の下値余地は限定されると思う。

 一方、米ドル全体の弱気変動はしばらく続くから、結論として米ドル/円の下落につられた主要クロス円の多くは押し目買いのタイミングが来ているとみる。このあたりの理屈はまた次回、市況は如何に。

(13:30執筆)

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