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西原宏一・叶内文子の「FX&株 今週の作戦会議」

米ドル/円は162円方向へじわじわ押し上げられそう。強烈な米雇用統計を受け米ドル全面高に。160円レベル死守スタンスの単独介入は、1992年英ポンド危機を彷彿させる

2026年06月08日(月)16:30公開 (2026年06月08日(月)16:30更新)
西原宏一&叶内文子

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強い米雇用統計で米利上げが織り込まれ、米国株が急落し米ドル全面高に

西原宏一(以下、トレーダー西原)叶内文子(以下、MC叶内) ​みなさん、こんにちは。

トレーダー西原 先週の米雇用統計の数字は強烈でしたね。

 それでは叶内さん、さっそく先週(6月1日〜)の株の振り返りからお願いします。

MC叶内 ​日経平均は前週末比258円(0.39%)高の6万6588円と、小幅ながら3週連続で上昇しました。物色の広がりが見られTOPIXも一時初の4000台、最高値を更新しましたが、週間ではほぼ横ばいで0.07%安でした。

 一方、金曜(6月5日)に急落した米国株は、S&P500が前週末比2.59%安。トランプ米大統領がEU(欧州連合)に対し高関税をかけるとした2025年5月以来、約1年ぶりの大きな下落率となっています。

 ナスダック総合指数はさらに下げが大きく4.68%安で3週ぶり反落、金曜に10%安した半導体株指数SOXは週次4.74%安。NYダウはP&Gなどのディフェンシブ銘柄に支えられ0.32%安でとどまりました。

 前週は米3指数そろって最高値を更新、S&P500は9週連続上昇していました。先週もNYダウが木曜(6月4日)まで、SOXも水曜(6月3日)まで最高値を更新していましたので、週後半に流れが一変したように見えます。

金曜の急落のきっかけは、5月雇用統計が予想を大きく超える強さだったことです。労働市場が安定的に強いことが示され、FRB(米連邦準備制度理事会)の引き締め転換が意識されました。「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数は急上昇し、4月以来の20台乗せとなっています。

S&P500 日足
S&P500 日足チャート

(出所:TradingView(トレーディングビュー))

 米国とイランの和平協議が実際に進んでおらず、原油価格が再び上昇したこともインフレ懸念につながりました。

 水曜引け後に決算を発表した半導体のブロードコムが売られたことも相場の雰囲気を変えた一因でしょう。AI関連の売上高見通しが市場予想に届きませんでした。

 また、今週スペースXの大型IPOがあり、資金捻出のために利益の乗っているAI・半導体関連に売りを出したとの見方もあります。

 今回の下落が、ここ数年何度も見たV字回復を見せ、中期で見れば結局買い場だったということになるのか、異例の上昇を見せてきたAI半導体相場が終わる兆候なのか、かたずをのんで見守っています。今のところは良い押し目だとの意見が優勢です。

 為替市場はいかがでしたか。

トレーダー西原 相場の流れを変えたのはやはり金曜の米雇用統計。5月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数は堅調な伸びを示し、ブルームバーグ調査のエコノミスト予想をすべて上回る数字でした。

 強烈な米雇用統計を受け、OIS(Overnight Index Swap、翌日物金利スワップ)は米国の利上げを織り込み始めました。年末までに1回の利上げをほぼ織り込んでいます。数カ月前までは数回の利下げを織り込んでいましたので、情勢はさま変わりしています。

 中長期的に米ドルは少しずつその価値を下げる、言い換えれば、年末にユーロ/米ドルは1.2000ドルへ戻すというのが大方のマーケットのコンセンサスでした。

 ただ、戦争が終結するかしないかにかかわらず、米金利がじわりと上がってきており、インフレ懸念が払拭できず、そのシナリオの修正が迫られる局面にはいってきたかもしれません。

マーケットは米ドル全面高に

 米ドル/円は節目の160.00円を超えてきましたが、マーケットが懸念(期待?)していた介入は現時点までありません。展望については後ほど触れます。

 それでは叶内さん、今週(6月8日~)のイベントと株の注目点をお願いします。

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米ドル/円は162円方向へじわじわ押し上げられそう。当局の160円レベル死守スタンスの単独介入は1992年英ポンド危機を彷彿させる

MC叶内 金利動向が注目されるなか、6月10日(水)~11日(木)でECB(欧州中央銀行)理事会が開催され、翌週(6月15日~)には日銀会合(日銀金融政策決定会合)、FOMC(米連邦公開市場委員会)が控えます。

 ECBは6月の利上げが織り込まれていますが、ラガルドECB総裁の会見が早期の追加利上げを示唆するような内容となれば、日米の動向にも連想が働きやすいでしょう。

 今週のきさらぎ会での植田総裁発言を受けて、日銀の6月利上げの可能性は高まったとみられています。日本株市場で銀行株は上昇するものの、全体の重しになるかもしれません。

 インフレ指標にいっそう注目度が高まっています。米国CPI(消費者物価指数)が6月10日(水)、PPI(卸売物価指数)が6月11日(木)に発表されます。CPIの市場予想は前年比+4.2%(5月+3.8%)、コア指数は同+2.9%(同+2.8%)と加速する見通しです。

 6月12日(金)にはスペースXのIPOが予定されています。調達額約12兆円、時価総額約283兆円という過去最大の上場ですから、前例がなく何が起こるのかわかりません。しかもアンソロピック・オープンAIのIPOも年内、秋にもと言われています。

 先週のように何かきっかけがあれば、換金売りが一斉に出ることも考えられます。一方で、スペースXは宇宙だけでなくAI関連でもあり期待感も強いです。夢と需給の綱引きになるかもしれません。

 引き受けのゴールドマンなど投資銀行は初値が高いほうが望ましいでしょうから、IPOまでは相場を崩さないだろうといった大人の見方もありました。

 そのほかの経済指標では、米国で6月9日(火)に4月貿易収支、5月の中古住宅販売件数、6月10日(水)に5月財政収支、6月11日(木)に新規失業保険申請件数、6月12日(金)に6月ミシガン大学消費者マインド指数が発表されます。

 6月9日(火)発表の中国5月貿易収支、6月10日(水)の中国5月CPI、PPIもチェックしたいです。

 国内では、6月11日(木)に法人企業景気予測調査が発表されます。設備投資の見通しが注目です。そのほか、6月8日(月)に1~3月期GDP(改)、4月経常収支、5月景気ウォッチャー調査、6月9日(火)に5月マネーストック、6月10日(水)に5月国内企業物価指数、6月11日(木)に5月都心オフィス空室率が発表されます。

 企業関連では、米アップルが毎年恒例の年次開発者会議「WWDC」を6月8日(月)〜12日(金)に開催します。

 6月10日(水)に、ハイパースケーラーの一角オラクルの決算発表が予定されています。6月12日(金)は国内メジャーSQ(特別清算指数)を迎えます。

 6月は前半と後半に配当の支払いが多く、配当金再投資の資金流入が期待されます。株主総会の集中日が後半にあり、アクティビストファンドの動きも気になります。

 為替市場の見通しはいかがですか?

トレーダー西原 まず僕の短期の米ドル/円見通しが間違っていたようなので、先週前半から修正しています。

 当初の見通しは160円台から介入が入り、その下落はいったん155円台になると想定して、そこまでは合っていました。

 ただ、一回の単独介入では相場が戻ってしまいますので、目処としては米ドル/円の158円台から再び介入が入ると想定していました。ところが158円どころか159円台でも介入は入りません

 これでは1992年の英ポンド危機同様の流れになってきています。1992年英ポンド危機はブラック・ウェンズデー(Black Wednesday)として知られています。

【※関連記事はこちら!】
米ドル/円の160円レベル防衛スタンスは、単独介入に終始ならいずれ大きく突破されそう。単独介入は円安の水位を一時的に下げられても、円安に動く理由を変えられない!(6月4日、西原宏一)

 当時のBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])はERM(欧州為替相場メカニズム)の規定により、英ポンド/ドイツマルクの下限を2.7780マルク(中心レート2.9500マルク、変動幅±6%)と設定していました。

 そのレートを死守するためにBOEが使った介入額は約270億ドル(150億英ポンド相当)。しかし、ソロス率いるクォンタムファンドに崩され、完敗しています。

 当初、今回の政府・日銀の介入では、そういう事態にならないと言われていました。なぜなら、米ドル/円は変動相場制であるため、中央銀行の介入は一定のレートを死守するわけではなく、あくまでもスムージングオペレーションのスタンスを取っているためです。

 一方、固定相場制は中央銀行が一定のレートを死守しようとするため、逆に投機筋に狙われ崩されることが多いわけです。

 しかし、今回の政府・日銀は、マーケットが極めて静かな中で突然、160円レベルで巨額の米ドル売り介入を実施しました。これにより、当局は米ドル/円の160円レベルを死守したいというのがわかってしまいました

 もう1つ投機筋に狙われやすくなったのが、介入時の当局のコメントです。「最後の退避勧告」や「スマホは忘れずに」などマーケットを威嚇する言葉が踊ります。

 このような威嚇は「単独介入だけで対処しようとしているのではないか?」とマーケットに思わせ、当局にとって不利な状況を作ってしまいます。

 なぜなら、日銀の連続利上げや米国との協調など、単独介入以外の手段があればマーケットを威嚇する必要などまったくないためです。

 確かに単独介入は、巨額かつ米ドルが下落するタイミングで入れば、一定の効果はあります。

 しかし現状は、FRBの利下げではなく利上げを織り込みつつある段階であるため、
この局面で米ドル売り介入を実施しても効果は限定的になります。

 米ドル買いが遅れている事業法人も、介入による米ドル/円の押し目を待っています。これでは介入の効果はさらに限定的で、米ドル円はじわじわと162円方向に押し上げられるとみます。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

トレーダー西原MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう!


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今井雅人