■米中協議は一時的に鎮静化しても合意に達するのは厳しい
たとえば、中国が企業に出している大規模な補助金について、トランプ政権は不満を表明しています。
しかし、中国経済が減速する中、補助金の支給は、IT先端企業の研究開発力などを高めて「中国製造2025」の達成に向けての重要な政策。
つまり、「補助金なくして国家資本主義(※)成り立たず」ということになり、中国側としては妥協できない点でもあります。
(※「国家資本主義」とは、経済活動を国家が主導することによって推し進められる資本主義のこと)
このように、中国側としては、米国からの要求に、おいそれと合意するわけにはいかないわけです。
結果、米中貿易協議が一時的に沈静化することはあっても、合意に達するのは極めて厳しい環境にあります。
さらにいえば、中国は「守る気もない合意」をして時間稼ぎをする可能性も、一部のマーケット関係者から指摘されています。
そうした不透明な環境下においては、株を筆頭としたリスクアセットは上値の重い展開が続きます。
前回のコラムでご紹介させていただいた米ドル/円は、109.00円レベルまで下落するも、本邦機関投資家の米ドル買いが支える形で下げ渋り。
【参考記事】
●米中貿易摩擦再燃で米国株は調整入り…。NYダウ続落なら、米ドル/円は105円方向へ(5月9日、西原宏一)
米ドル/円に対する戦略は変わらず、下値を叩くことなく、ていねいに戻り売り。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■利下げ予測もある豪ドル/円は70円へ…
もうひとつの注目ペアは、豪ドル/円。
中国経済に大きく依存している豪州経済は、中国経済の減速とともに悪化。
本日(5月16日)、発表された豪州の4月の失業率は5.20%(市場予想は5.00%)。
予想外の悪化により、来月(6月)4日(火)のRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])理事会の利下げ織り込み度は38.7%から、一気に55.1%程度に上昇しました。
利下げ期待の高まりから、豪ドル/米ドルは一時、0.6900ドルを割り込む展開。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 4時間足)
本稿執筆時点での豪ドル/円の安値は、75.41円。トランプ大統領のツイートを筆頭に、ヘッドラインで戻す局面もあるのでしょうが、豪ドル/円は70円に向けて続落中です。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 4時間足)
米中貿易協議が難航する中、下げ幅を拡大する豪ドル/円の行方に注目です。
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