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今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

米ドル/円は107円近辺へ反発すれば売り!
円安に戻っていく可能性は極めて低い!?

2019年08月08日(木)17:15公開 (2019年08月08日(木)17:15更新)
今井雅人

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■米中の対立深刻化で、金融市場は大混乱

 トランプ米大統領が「9月1日(日)から中国に対して追加関税をかける」と発表してから、約1週間が経ちました。

 米国のこうした措置に対して、中国側も米国からの農産物購入を一時停止するという、対抗措置に出ています。

 さらに、米国は中国を「為替操作国」として認定し、今後、IMF(国際通貨基金)に対して、中国へ圧力をかけるよう働きかけていくことを、明らかにしています。

 益々、米中の対立が深刻化する中、金融市場も大混乱に陥っています。

米ドル/円 4時間足
米ドル/円 4時間足チャ-ト

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足

■FOMCは9月にも追加利下げか!?

 そこで、この間の金融市場の反応について一応、整理をしておきます。

 まず、今回の米中貿易戦争の深刻化を受けて、今後、世界経済が全体的に落ち込むという懸念が広がったというのがベースにあります。そして、それがさまざまな金融市場に連鎖反応を起しています。

 米国はトランプショックの直前に、FOMC(米連邦公開市場委員会)で0.25%の利下げを決定したばかりでしたが、この事態を受けて、市場金利はさらに低下しています。米国の10年物国債利回りは一時、1.5%台まで低下しました。

米長期金利(米10年債利回り) 日足
米長期金利(米10年債利回り) 日足チャ-ト

(出所:Bloomberg)

 ここ2~3年で一時、3.2%台まで上昇していたことを考えると、半分になってしまいました。

 短期金利の先物も、9月の利下げを織り込んできています。FOMCも、この米中貿易交渉がこのままの状態であれば、9月に利下げに踏み切らざるを得ないでしょう。

【参考記事】
米ドル/円波乱の最大の要因は?トランプ氏の対中ツイートは「きっかけ」にすぎない!(8月2日、陳満咲杜)

■典型的な「リスクオフの円買い」が進行

 株式市場も世界経済の悪化を懸念して、米国を中心に世界同時安の動きとなりました。

NYダウ 日足
NYダウ 日足チャ-ト

(出所:Bloomberg)

日経平均 日足
日経平均 日足チャ-ト

(出所:Bloomberg)

 このような状態になると、「リスクオフ」の流れが本格化するため、為替市場では債権国である日本の円が買われるという、典型的なパターンになっています。

 米ドル/円も、105円台まで一気に米ドル安・円高が進みましたが、その他の通貨に対しても円全面高という流れになっています。

世界の通貨VS円 4時間足
世界の通貨VS円 4時間足チャ-ト

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足

 それと同時に、米ドル金利が低下したということで、米ドル安も全体的に進んでいますが、円高のほうが際立っています。

■9月の米中閣僚級協議にはかなり悲観的…

 さて、米中は9月初旬に再び、閣僚級協議を行う予定です。トランプ米大統領が、追加関税の実行日を9月1日(日)としたのは、この交渉を睨んでのことであるので、まだ門戸が閉じているわけではありません。

 しかし、米国が中国側に要求していることの中に、中国がどうしても飲めない内容が含まれているので、それを米国がある程度、妥協しない限り、合意は難しいと言わざるを得ません。

 トランプ米大統領の性格を考えると、米国が妥協する余地も限られているため、先行きはかなり悲観的に考えざるを得ないのが現状です。

トランプ米大統領の写真

米中の閣僚級協議は9月初旬に再開される予定だが、米国側の要求には中国がどうしても飲めない内容が含まれており、米国が妥協する余地も限られているため、先行きはかなり悲観的だというのが今井氏の考え (C) Chip Somodevilla/Getty Images News

■米ドル/円やユーロ/円は戻りがあれば売りで!

 このような事態を前提とした場合、この先、さらに円高が進行していく可能性は、まったく否定できません

 とりあえず、現状はお互いの措置がいったん出尽くした感があって、市場も少し落ち着いてはいますが、これはあくまでも一時的と考えておくべきでしょう。

米中交渉が劇的な雪解けの展開にならない限り、円安方向に戻っていく可能性は、極めて低いと考えています。

 たとえば、米ドル/円の107.00円近辺や、ユーロ/円の120.00円あたりなど、円安に戻ることがあれば、円買い(=米ドル/円やユーロ/円の売り)をしておくのが一番、有効ではないかと考えています。

【参考記事】
FOMC後の米ドル高は極めて自然な反応。でも、その流れが続かないと考える理由は?(8月1日、今井雅人)
目先の米ドル/円はまだ戻り売り。でも、104円台以下は長期的な買い場になるかも!?(8月6日、バカラ村)

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャ-ト

(出所:TradingView

ユーロ/円 日足
ユーロ/円 日足チャ-ト

(出所:TradingView

■混迷深まる英国。英ポンドはいずれ大幅下落!?

 ただし、相場はかなり荒れているので、売買する金額を通常より小さくするなど、十分に注意をしながらトレードに臨んでいただきたいと思います。

 なお、英国のジョンソン首相は、就任してすぐに窮地に陥っており、英国は益々、混迷しているので、米中の問題とは別に、英ポンドはいずれ、かなり下落すると考えています。

【参考記事】
ボリス・ジョンソン英首相の「合意なき離脱」発言続く…。ポンド/円は中期的に120円へ(8月1日、西原宏一)
ドル/円決壊! 年初来安値104.87円更新が視野に。英ポンド/円の戻りを売りたい!(8月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
新英首相ボリス・ジョンソンってどんな人? 合意なき離脱を呼ぶ!? ナルシストの正体!(7月30日、松崎美子)

英ポンド/米ドル 日足
英ポンド/米ドル 日足チャ-ト

(出所:TradingView


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