■2019年(令和元年)分の確定申告期間は?
平成に別れを告げ、新たな元号「令和」がスタートした2019年。新元号、令和最初の年となった2019年分の確定申告期間が、いよいよ始まりました。
2019年(令和元年)分の確定申告の期間は、2020年(令和2年)2月17日(月)から3月16日(月)(※)。
(※2019年(令和元年)分の確定申告期間は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から2020年(令和2年)4月16日まで延長されました―2月27日 国税庁発表。その後、4月6日には、再び国税庁から「4月17日以降であっても柔軟に確定申告書を受け付ける」旨が発表されています。詳しくは、国税庁の公式サイトなどをご確認ください)

これまで確定申告にあまり縁がなかったという方も、FX取引をしているなら一定以上の利益が出た場合、確定申告が必要です。
また、損失が出た場合も、義務ではありませんが、確定申告しておくことで将来的に得をする可能性があります。
つまり、どんな人もFX取引をしているなら、税金・確定申告とは無関係ではいられません! 当記事では、そんなFXの税金・確定申告の概要について、わかりやすくお伝えしていきたいと思います。
なお、ここでお伝えするのは、あくまで個人の確定申告のお話です。法人の確定申告は、個人とは規定が異なりますので、あらかじめご承知置きください。
【目次】
・ FXの税金について
・ 含み益は確定申告の対象にならない?
・ どのくらい利益が出たら確定申告が必要?
・ FXの必要経費
・ FX以外の金融商品との損益通算
・ 損失が出た場合の繰越控除
・ 確定申告に必要な書類
・ 確定申告のやり方(作成・提出・本人確認書類について)
■FXの税金について
まず、FXで出た利益は、所得税法上、10種類ある所得のうちの「雑所得」という所得に分類されます。

※表は、国税庁タックスアンサー「No.1300 所得の区分のあらまし」を参考にザイFX!編集部が作成
適用される課税方式は「申告分離課税」で、税率は一律20.315%(※)です。
(※本来は所得税15%・住民税5%で一律20%だが、2013年~2037年は、所得税に対して、さらに2.1%の復興特別所得税が課されるため、期間中の税率は所得税・住民税合計で20.315%となる)
原則として雑所得の課税方式には、他の所得と合算して納税額を算出する総合課税が適用されますが、FXを含む特定の金融商品から発生した所得については、「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」が適用されます。
そのため、例外的に他の所得と区別して納税額を算出する、申告分離課税が適用されるというしくみになっているのです。
総合課税では、申告する所得金額によっては最大で55%(※)の税率が適用されますので、FXの場合、所得金額を問わず税率が一律で適用されるということは、利益が大きいほどありがたい制度と言えそうです。
(※所得税+住民税合計。復興特別所得税を考慮していない税率)
■含み益は確定申告の対象にならない?
大前提として、確定申告の対象となるのは、決済し、利益が確定したものに限られます。未決済ポジションの含み益について、確定申告する必要はありません。
ただし、ポジションを持ちこすことで発生するスワップポイント(スワップ金利)については、注意が必要です。
【参考記事】
●FXのスワップポイントとは?毎日もらえてポジションを持ち続けると収益が増える!?
スワップポイントの取り扱いは、FX会社によって以下の3パターンに分けられます。

※図は、ザイFX!編集部が作成
1つは、ポジションを決済しなければ、スワップポイントも未決済損益に含まれたままなので確定申告の対象とはならないFX会社。
もう1つは、スワップポイントが自動的に現金化されるため、たとえポジションが未決済であっても、スワップポイントについては確定申告の対象となるFX会社。
最後の1つは、通常はポジションを決済しなければスワップポイントも未決済損益に含まれたままで確定申告の対象とならないが、ユーザーが指示を出すことでスワップポイントを現金化する機能があり、現金化した場合は、ポジションが未決済であってもスワップポイントについては確定申告の対象となるFX会社です。
利用中のFX会社のスワップポイントの取り扱いについては、あらかじめ確認しておく方が良いでしょう。
■どのくらい利益が出たら確定申告が必要?
では、どのくらい利益が出たら必ず確定申告が必要なのでしょうか?
FXで利益が出ている人が、「会社員」「自営業」「主婦・主夫、学生」「年金生活者」だった場合を想定し、以下の表に確定申告が必要となる条件をまとめました。
読者のみなさまの状況と近い例があれば、参考にしてください。

※「会社員」でも、給与を2カ所以上から受け取っていたり、給与収入額が2000万円を超える場合、各種所得控除の申請をする場合などは、そもそも確定申告が必要
※「年金生活者」には、「公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下」で、かつ「公的年金等に係る雑所得以外の各種の所得金額が20万円以下」なら確定申告が不要となる確定申告不要制度が設けられている
たとえば、一般的な会社員の場合は、通常、毎月の給与から税金が源泉徴収され、さらに、年末調整が行われることで1年間の税金の払い過ぎや不足分の調整が完了します。
必要な手続きは、すべて会社が代行してくれますので、自分で確定申告しなければならないという状況は、2000万円超の給与を受け取っている場合や医療費控除を申請する場合など、何かしら個別の事情がない限り発生しません。
しかし、FX取引をしていれば話は別です。
お伝えしたとおり、FXの利益は雑所得。給与などとは所得区分が異なりますので、会社側では何も手続きを行ってくれません。したがって、年末調整を受けていたとしても、FXで得た所得については別途、自ら確定申告を行う必要があります。
表にもあるとおり、会社員の場合は、「給与所得や退職所得以外の所得(FXを含む)で20万円超の所得がある場合」、確定申告の対象となりますので、該当する場合は、忘れずに確定申告するようにしてください。
■FXの必要経費
実際に納税額を算出する際は、FX取引で得た利益の金額をそのまま所得とし、税率を乗じるワケではありません。
得た利益から必要経費を差し引いて所得を算出し、そこに税率を乗じて納税額を算出することになります。
以下のようなイメージです。
<FX取引における納税額の求め方>
FXの年間利益-必要経費=所得金額
所得金額×20.315%=納税額
※実際には各種控除が適用される場合もあるが、ここでは省略
ならば、FX取引における必要経費とはどういうものか?
たとえば、FX取引の手法などを学ぶために購入した書籍の代金、受講したセミナーの費用、情報収集のために購読しているメールマガジン、外枠の取引手数料などが該当すると考えられます。
<FX取引における必要経費の例>
・ 関連書籍の購入代金
・ セミナー受講料
・ メルマガの購読料
・ 外枠の取引手数料
※必要経費については、税務署によって見解が異なる可能性がある
取引手数料については、2020年現在のFX業界では無料としているFX会社がほとんどですが、もし、利用しているFX会社で取引手数料が発生しているようであれば必要経費として算入できる可能性があります。
【参考コンテンツ】
●FX会社徹底比較!:取引コストで比べる
また、メルマガというと、ザイFX!にも、元ディーラーの西原宏一さんや志摩力男さん、今井雅人さん、実力派個人トレーダーのバカラ村さんが配信する有料メルマガコンテンツがありますが、この有料メルマガの購読料も必要経費に該当するはず。
購読している場合は、FXで得た利益から差し引くことが可能だと思われます。

【参考コンテンツ】
●ザイ投資戦略メルマガ
ただし、必要経費については、該当するかどうかが個別具体的に法令などで定められているワケではありませんので、どこまで必要経費として認められるのか?という判断は難しいところ。
必要経費としていいのか、ダメなのかがわからない場合は、管轄の税務署や税理士などの専門家の見解を確認してみることをおすすめします。
■FX以外の金融商品との損益通算
さて、FXを取引している方の中には、同時に他の金融商品の取引もしているという方もいらっしゃるでしょう。
FX取引で発生した損益は、実は他の金融商品の取引で発生した損益と合算することが可能です。これを「損益通算」と言います。
ただし、なんでもかんでも合算できるワケではなく、損益通算の対象となる金融商品はあらかじめ定められています。
対象とされているのは、FXと同じく「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」が適用される金融商品。残念ながら株式などは、対象外です。
代表的なものでは、バイナリーオプション、CFD、日経225先物、日経225オプション、商品先物などが挙げられます。いわゆるデリバティブ商品と呼ばれるものです。
<FXと損益通算可能な金融商品の例>
・ バイナリーオプション
・ CFD
・ 日経225先物
・ 日経225オプション
・ 商品先物など
FXしか取引していないということであれば、FXの損益だけを考えて確定申告の準備をすれば良いのですが、もし、CFDや日経225先物取引など他の金融商品も取引しているなら、損益通算の対象となるすべての商品の損益を合算して年間トータルの損益を算出し、確定申告の準備をするようにしてください。
■損失が出た場合の繰越控除とは?
冒頭でも触れたとおり、確定申告は損失が出ている場合でも無関係なものではありません。
それは、「繰越控除」という制度を利用できるからです。
繰越控除とは、翌年以降に発生した利益から繰り越した損失分を差し引くことができる制度。
繰り越した損失を差し引くことで、利益が発生した年の納税額を抑制する効果が期待できるのです。

※図は、ザイFX!編集部が作成
FXを含む複数の金融商品で取引している場合は、他の金融商品と損益通算しても、まだ損失が残っている―――という場合に繰越控除を利用できます。
ただし、損失の繰り越しができるのは、翌年以降3年間。また、損失を繰り越している間は、取引を行っていない年も必ず確定申告を行う必要があります。
損失が出ているのに確定申告をするなんて、ちょっと面倒な気もしますが、翌年以降も取引を続けようと考えているなら、手続きしておいて損はないのではないでしょうか?
(次ページでは、確定申告に必要な書類や確定申告のやり方について解説しています!)
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