■米大統領選もコロナ禍も、市場心理を大きく左右しない
10月半ばになった目下、EU(欧州連合)諸国におけるコロナ感染が再び拡大する気配を見せている。米国も大した改善がなく、「安定」したペースで感染者や死者を出し続けており、いわゆる先進国はそろって政府機能の停滞が目立つ。
日本の状況は比較的に落ち着いているが、それでも抜本的な対策がなく、収束の兆しを見えないのは欧米といっしょだ。冬の本格的な到来に差し掛かって、いわゆる第二波の襲来が十分想定できるから、危機はまだまだ続くことを強く意識しておきたい。
米大統領選が最終段階に突っ込み、いろんな材料が噴出するなか、憶測も盛んに語られ、マーケットの心理を左右しているように見えるが、冷静に市場の状況を観察すれば、そうでもないことがわかる。

米大統領選も最終段階でさまざまな材料が噴出しているが、市場心理はさほど左右されていないC)Bloomberg/Getty Images News
コロナ禍も米大統領選も不確実性がいっぱいではあるが、マーケットの心理を大きく左右することはなかろう。3月のコロナショックを経て、マーケットはすっかり強気ムードに包まれ、途中の調整があっても安易に悲観ムードには戻らないと思う。
不謹慎だが、米大統領が誰であれ、救済金を配ってくれればよいと考える米国人が少なくはないだろう。そして、コロナ禍が続く限り、国のバラ撒きも続くから、金余りの相場は安易に崩れない、といった考えは、もはやウォール街に留まらず、一般の個人投資家にまで浸透している。
だから、3月のコロナショックと打って変わって、楽観的な見方が市場を支配しており、景気の「気」の部分が崩れない限り、相場も安易に崩れないと思われる。
これからもいろんな材料が出てくると思うが、メイン基調として、株高・米ドル安が「セット」となったトレンドが維持される公算が大きい。
何らかのサプライズで、相場の変動率の一時的な拡大があっても、メイントレンドを修正できるほどの力はなく、前述のように、コロナ禍の早期収束がない限り、歴史的な金融相場がもたらした「歪み」はこれからも続くだろう。
■メイントレンドが維持されてもモメンタム低下は避けられない
一方、株高・米ドル安といった「セット」となった市況は、ずいぶん進行してきたのだから、ここからのモメンタムが逓減されていくのも、十分、想定され、また、すでに観察されていることと思う。
なにしろ、相場は常にあらゆる思惑や推測を織り込み、常に現実の先を行くものだから、マーケットのセンチメントを、十分、反映しているはずだ。
コロナ禍の一段の拡大があっても、国のバラ撒きが続いても、その効果は逓減していくのだから、メイントレンドが維持されても、モメンタムの低下は避けられない。
さらに、トレンドは常に行きすぎる習性があり、また、途中において材料の出現に合わせてスピード調整を行いがちだ。一直線に進行できない以上、時には大きな反動を演じる。
ゆえに、メイン基調が維持される前提で油断したら、場合によっては大きな損失を被ることになる。常に、リスクへの意識を持って相場に臨むべきだ。
■ドルインデックス月足チャートに、底打ちのサインが点灯
為替の場合はもちろん、米ドル安の一本調子の進行はない、ということを覚悟しておきたい。
実際、昨日(10月15日)筆者のツイッター(@chinmasato)でも取り上げたように、ドルインデックス月足チャートの9月の足型は、プライスアクションの視点では、いったん底打ちのサインが点灯した。目先、米ドルの切り返しが続く可能性を無視できない。

同サインは、「強気リバーサル&アウトサイド」と称して、月足に出現しただけに、すぐには否定されないだろう。3月高値を起点として、急落が行きすぎた分、スピード調整も、しばらく続く公算が高い。
■ドルインデックは日足チャートでも上昇のサイン
日足におけるサインも、鮮明になりつつある。
8月までの安値トライ、また、その後の切り返しは、下のチャートを見てわかるように、6月末から形成されてきた「下落ウェッジ」の上放れを果たし、9月途中の押しがあっても92後半のサポートゾーンを維持。上放れの可能性を暗示した。

(出所:TradingView)
9月後半には、94後半をトライし、その後、再反落してきたが、今週(10月12日~)93の節目の維持を再確認。9月安値を起点とした上昇幅の半分押しを守ったところで、また切り返しの継続を示唆した。
昨日(10月15日)の続伸もあって、9月25日(金)高値を起点としたレジスタンスラインのブレイクが鮮明となり、また、10月9日(金)~13日(火)のローソク足の組み合わせ(矢印)が示した「明けの明星」のサインの点灯から考えて、ここから9月高値の再更新を果たすだろう。

(出所:TradingView)
要するに、月足で点灯した、いったん底打ちのサインが、目先、なお効いているから、短期スパンにおける米ドルの上値余地に注目したい。
■EUとの協議がまとまっても、英ポンドの上値は限定的
ドルインデックスの上昇は、主要な外貨の下落を意味するから、ユーロや英ポンド、豪ドルの反落が想定される。
そのうち、英ポンドは一番「気まぐれ」だ。材料に振り回され、値幅が拡大したものの、EUとの協議が楽観視できない以上、また反落波動へ復帰。さらに、下落モメンタムを加速していくと推測される。
仮に、EUとの協議が何らかの形でまとまったとしても、マイナス金利の導入が予定され、また、実現される可能性が高い以上、英ポンドの上値は限定されるだろう。
■クロス円は下落。米ドル/円はトレンドレスが続く
主要な外貨の反落が続くのであれば、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における外貨安・円高の流れも続くだろう。
ただし、この場合は、円高があっても、あくまで受動的だ。本格的な円高には程遠いから、米ドル/円は、引き続きレンジ変動に留まり、「蚊帳の外」に置かれるだろう。
米ドル/円のトレンドレスは、しばらく続くと見る。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
主要なクロス円の動向は外貨次第なので、「気まぐれ」な英ポンド/円も、材料次第で一段と下落幅を拡大させ、9月のパフォーマンスのようにクロス円の下落をリードする可能性があるから油断できない。
米ドル全体の切り返しやクロス円における反落波の継続があれば、株高の基調が維持されても波乱含みの可能性は無視できないだろう。
市況はいかに。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)