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石破新政権スタートでマーケットは大揺れ
石破新政権がスタートしました。
石破氏が新総裁に選出された自民党総裁選挙。マーケットは大揺れでした。超金融緩和、巨額財政出動を自身の政策とする高市氏が選出されれば、株高・円安、アベノミクスに対し批判的な立場をとる石破氏が選出されれば、株安・円高の展開になると予想されていました。
(※筆者提供)
直前に麻生氏が高市氏を推すとの報道もあり、金融関係者の多くが望む高市新総裁誕生との思惑から、米ドル高・円安が進み、米ドル/円は146.50円に達しました(高市トレード)。しかし、決選投票で石破新総裁誕生となり、高市トレードは損切りを迫られ、今度は石破トレードとして、市場は円買い・米ドル売りで攻めました。
ところが、石破新総裁は植田日銀総裁との会談後、個人的な意見と表明しつつも「追加利上げする環境にあるとは思わない」と発言し、今度は石破トレードが損切りを迫られることになりました。この上がったり下がったりのドタバタで、損失を被った方も多かったのではないでしょうか。
(※筆者提供・TradingView)
しかしこの石破氏の「変節」は、新総裁誕生時に誰が石破氏を支えたのか、ここがわかれば予想はできました。1回目投票と決選投票における議員票は以下の通り。
(※筆者提供)
つまり、石破新総裁をしっかり支える人は46人のみで、菅氏のグループと旧岸田派によって支えられているということになります。
これだけ党内基盤が脆弱だと、菅氏と岸田氏の意向に沿った政策しか取れないし、それが両グループからの支持の前提だったと思われます。経済政策は「岸田前首相の政策を踏襲する」と繰り返し石破新総裁は発言しています。
また、これから衆議院選挙になります。株価が急落するようなことは言えません。10月2日(水)に植田日銀総裁と会談した後に「個人的には追加利上げする環境にあるとは思わない」と発言し、石破トレードで米ドル/円ショートにした人たちが損切りを迫られましたが、意図的な失言だったでしょう。
「首相になったばかりで発言の重みがわかってない」等々、批判されていますが、10月27日(日)の衆議院選挙はなんとしても勝たなければなりません。「裏金議員」もすべて公認と言っていましたが、世論の反発で公認しないと言い出しています。石破新首相(ここからは総裁ではなく首相にします)の持論よりも、時々の状況が優先されます。
そして、どなたが首相になったとしても、「賃金と物価の好循環」を実現することこそが、今の日本では重要です。ようやくインフレ率に負けない賃上げが実現しました。来年(2025年)の春闘で、連続して賃上げが実現されなければなりません。そのためには、過度に円高が進み、インフレ率が低下、経営者に賃上げをしない理由を与えてはなりません。
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米ドル/円は140-155円程度のレンジが望ましい水準か
石破新首相は日銀に政策的プレッシャーをかけることはないでしょう。そこは安倍首相の時代からかなり変化しました。日銀はかなりのフリーハンドを持っています。
しかし、それはどんどん利上げをするということではありません。植田総裁も大阪での講演(9月24日)で「デフレへの逆戻りは、避けなければなりません」とはっきり発言しました。また、9月19~20日に開催された日銀政策決定会合の「主な意見」を見ると、「2025年度後半に1.0%という水準に向けて利上げ」というタカ派的な意見もありますが(おそらく田村委員)、総じて慎重な見方に転じています。
米ドル/円が140円を割り込んでいくと、対前年比で円高となり、デフレ方向に圧力がかかります。140円以下の円高局面も日銀としては避けたいのかなと感じています。円高時には金融引き締めはストップします。逆に再び160円といった円安に行くと輸入物価の上昇からインフレ率再上昇懸念が高まります。その時、日銀は利上げを躊躇しないのではないかと考えています。
石破首相は8月7日(水)のロイターとのインタビューにおいて「常識的に110~140円が適正な水準と言われている」と発言しました。石破首相の個人的な思いはその辺りにあるのでしょうが、「賃金と物価の好循環」実現という視点から見れば、目先140-155円程度を中心としたレンジが望ましい水準かなと思います。
(出所:TradingView)
石破首相も所信表明演説で、最低賃金を2020年代に1500円にするという目標を掲げました。これは、非常に高い。現状1054円なので、5年間で42.3%、毎年7.4%の賃金上昇が必要となります。ある程度インフレ率が高い状況を想定しなければ、難しい。最低賃金1500円実現のためには、円高は許容し難いということになります。
これから先、衆議院選挙(10月27日)、米大統領選挙(11月5日)と、大きな政治イベントを控えます。
米国は9月18日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.50%の利下げを行い、利下げ局面に入りましたが、10月4日(金)に発表された米雇用統計は、予想を大きく上回る好調な数字で、米国経済は果たして利下げが必要なのかどうなのか、疑問に感じさせるものでした。
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中東情勢懸念で一時的でも原油高騰は想定しておくべき
そして、最大の懸念材料は中東情勢です。10月1日(火)、イランはイスラエルをミサイル攻撃し、イスラエル側からのイラン攻撃が予想されています。外務省はイランへの渡航中止を勧告し、一部地域では退避を勧告していま
イランによるイスラエル攻撃を受けた注意喚起
(出所:外務省)
イスラエルがどの程度の攻撃を行うか不明ですが、ネタニヤフ政権は緊張緩和ではなく、状況をエスカレーションさせたいように見えます。できれば戦争して、イスラエル存立の最大の懸念であるイランを無力化したいのでしょう。
しかし、上手く行くのかどうか。10月1日(火)のミサイル攻撃では、被害はほとんどなかったとイスラエル側は発表していましたが、米メディアによると32発着弾していた模様。180発中32発が撃ち落とされなかったのであれば、いざとなると、テルアビブを完全に防衛することは難しいということになります。
イランの石油はほとんどが中国向けと思われますが、日量300万バレルは少なくありません。世界生産の3%。石油施設が攻撃されれば、やはり原油価格は上昇するのでしょう。ホルムズ海峡封鎖ということはないとは思いたいですが、戦争の状況次第ではあり得るのかもしれません。
一時的でも、原油価格が高騰する事態を想定すべきなのかもしれません。
(出所:TradingView)
イスラエルの攻撃内容次第ですが、核関連施設が攻撃されれば、一時的な円高があるかもしれません。しかし、原油価格が高騰する事態となれば、日本の原油輸入の90%以上がホルムズ海峡を通ってくることを考えると、急激な円安となる事態も思考訓練として想定しておいた方が良いかと思います。
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