高金利の裏側にある「通貨防衛」という現実
高金利通貨として知られるハンガリー・フォリント(HUF)。
政策金利はポーランドが4%、チェコが3.50%に対し、ハンガリーは6.50%であり、ヨーロッパの中でも「高金利=魅力的な通貨」という見方が市場の一部で広がっています。

(出所:ハンガリー中央銀行のデータよりザイFX!編集部が作成)
しかし、フォリントを「単純な高金利通貨」として捉えるべきか? そこをきちんと考えてみるために、ハンガリーやフォリントについて、何回かに渡り連載をします。
初回は、ハンガリーという国と通貨について、初歩的なことを説明させていただきます。
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ハンガリーという国を為替の視点で見る
ハンガリーはEU(欧州連合)加盟国でありながら、ユーロを導入していません。
私は首都ブタペストに行ったことがありますが、街並みは非常に綺麗で歴史を感じる重厚な趣があります。宿泊したホテルも、サービスは抜群によく、レストランでの食事も、かなりレベルが高い内容でした。
物価は安いものとそうでないものの差が非常に大きく、一歩路地を曲がると旧ロシア的な貧しさが露呈される場面を、ポーランドのワルシャワやチェコのプラハ以上に多く、目にしました。
同国の経済規模は小さく、輸出入への依存度が高いオープン経済であり、とりわけドイツを中心とした欧州製造業との結びつきが強いことで知られています。
一方で、エネルギーは輸入依存度が高く、ロシア産エネルギーへの依存という構造的弱点を抱える国です。さらに、オルバン政権下での強権的(独裁的)な政治運営はEUとの関係を悪化させており、EU基金の凍結問題など政治要因が資本フローや通貨に直結する国である点は、きちんと理解して下さい。
この「小国」「対外依存」「政治リスク」という3点は、ハンガリー・フォリントを理解するうえで欠かせない前提条件と言ってよいでしょう。
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インフレ危機とハンガリー・フォリント急落
2022年以降、世界中の国が深刻なインフレに見舞われましたが、ハンガリーも例外ではありません。
エネルギー価格の高騰、通貨安による輸入物価の上昇、財政拡張の影響が重なり、インフレ率は20%を越す急上昇。フォリントは対ユーロで大きく下落し、市場では「通貨危機的状況」との見方すら出始めた時期もあります。

(出所:TradingView)
ここで重要なのは、インフレそのものが問題だったのではなく、通貨安がインフレを招き、インフレがさらなる通貨不安を生む悪循環でした。

※筆者提供 出典:ハンガリー中銀(2025年12月) ハンガリーCPI
このチャートは、2025年12月にハンガリー中央銀行が発表した「四半期マクロ経済予想」に載っていたCPIの推移ですが、2022年からの世界的なインフレ高騰局面では、同国のインフレ率は20%を大きく超える状況が1年以上続いたことが分かります。
●価格抑制策の導入
あれだけインフレ率が2桁に高騰したにもかかわらず、一番最新の2025年12月のインフレ率は3.3%まで下がりました。これには、からくりがあるのです。
ハンガリー政府は、モノやサービスの価格に上限を設定する、あるいは価格を固定するなどして、消費者の生活コスト上昇を抑えようとする「価格抑制策」を、2022年から導入しています。最初はなかなか効果が表れませんでしたが、徐々に国内のインフレ率は低下傾向を辿っていったのがわかります。

(※筆者提供)
この抑制策は2026年2月末で終了するようですが、4月に総選挙を控えており、間近になり延長される可能性も高いでしょう。
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中央銀行(MNB):異例の高金利は通貨防衛策
今回 このコラム記事を書くにあたり学んだことは、ハンガリー中銀は、「フォリントを守るためなら政策金利は下げない」覚悟で金融政策の運営をしているという点です。

(出所:TradingView)
こちらには、ロイターとブルームバーグの記事リンクを添付しますが、価格抑制策だけでなく、通貨価値も中銀が弱くならないような対応をしていたのです。
・ロイターの日本語記事 :2022年10月26日
「ハンガリー中銀、基準金利据え置き、通貨防衛継続」
・ブルームバーグの英語記事 :2025年10月7日
「ハンガリー中銀、フォリント安を受け利下げ要請を退ける」
独裁者であるオルバン首相に対する政治リスクやあからさまな親露姿勢などによる不安が存在するからこそ、リスク・プレミアムを乗せた形で「高金利」が継続し、それがかろうじて通貨フォリントを支えていると言っても過言ではないのかもしれません。
そして万が一 ハンガリー中銀が政策金利を通じての通貨防衛に失敗すれば、中銀だけでなくオルバン政権そのものも一気に信認を失うという現実と背中合わせであることが見えてきました。
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インフレ率改善は「回復」ではなく「最悪期脱却」
足元ではインフレ率は低下し、ハンガリー・フォリントも落ち着きを取り戻していますが、経済が健全な成長軌道に戻ったわけではないようです。ここにきてエネルギー環境は改善し、政策金利据え置きによる金融引き締め効果が表れたことで、最悪の局面を脱したに過ぎないと言えそうです。

(出所:ハンガリー統計局)
今回 このコラムを書いてたどり着いた結論は、ハンガリーの金融政策は「景気刺激」や「成長促進」を目的としたものとは言いがたく、極めて防御的、すなわち「通貨防衛を最優先した政策運営」という位置づけで語るのが、もっとも適切であるということでした。
厳しい言い方になりますが、ハンガリー・フォリントを取引するのであれば、「金利が高くスワップがたくさん貰える通貨」という事だけでなく、「中央銀行がどこまで通貨防衛を続ける意思を持つのか」という視点も合わせて取引をするのが安全かもしれません。
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