米ドル/円は162円という40年ぶりの節目を突破、そのきっかけは?
みなさん、こんにちは。
6月30日(火)、米ドル/円がついに162.00円を突破しました。一時162.84円まで上値を伸ばし、1986年以来、約40年ぶりの高値を付けています。
ここで重要なのは、162.00円という水準の歴史的な意味です。
ちょうど2年前の2024年7月3日(水)、当時の米ドル/円は161.95円まで上昇しました。しかし、あと5銭を残して162.00円には届かず、その後、政府・日銀による大規模介入もあって反落。
以来、この162.00円は「40年ぶりの円安ライン」という強烈なレベルとして、マーケット参加者が意識し続けてきた防衛線(ラインオブディフェンス)となりました。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
過去2年間、米ドル/円はこの162.00円を前に何度もチャレンジしては跳ね返され、長い調整局面を経てきました。そして今回、2026年6月30日(火)の東京市場で、ついにこの節目を明確に上抜けたのです。
40年ぶりの円安ラインを2年越しに突破――これは、単なるテクニカル上のブレイクではありません。円安トレンドの構造的な転換点として、歴史的な意味を持つ動きだと捉えるべきでしょう。
それでは、なぜこのタイミングだったのでしょうか。
きっかけは、政府が7月に策定を目指す「骨太の方針2026」の原案です。この中に、「強い経済の実現に向け、『適切な金融政策運営』が行われることも非常に重要」という文言が盛り込まれることが、6月末の各種報道で明らかになりました。
一見すると当たり前の文言に見えます。しかし、マーケットの受け止めはまったく異なります。
ポイントは、昨年(2025年)にはなかった「非常に重要」との文言を追加したことです。さらに、日本銀行法第4条と政府・日本銀行の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携するように求めたという、かなり踏み込んだ記述も含まれています。
これは、政府が日銀に対して、追加利上げを牽制する明確なシグナルを送ったと解釈されました。事実、「非常に重要」との文言追加により、政府の圧力を受けて日銀が追加利上げを思いとどまるとの見方が広がっています。高市首相は金利上昇が経済成長の勢いを鈍化させることを懸念していると報じられています。
もともと、日銀の追加利上げ観測は、円ロング(米ドル/円ショート)ポジションを支える材料の一つでした。
現時点でも、マーケットは年内利上げを9割以上織り込んでいますが、この骨太方針の報道を受けて、追加利上げ観測が徐々に後退するのではとの見方が拡大。
呼応して円売り圧力が一気に強まり、40年ぶりの162.00円ブレイクの引き金を引いたのです。
それでは、もう1つの円高要因である政府・日銀の介入についてはどうでしょうか?
米ドル/円は年内170円の可能性も? 11.7兆円の介入が米ドル需給の強さを確認したという皮肉。まず165円の攻防に注目
ここで、過去の介入を振り返っておきたいと思います。
政府・日銀は4月28日(火)から5月27日(水)にかけて、総額約11兆7300億円という過去最大規模の円買い介入を実施しました。しかし皮肉なことに、この介入は結果的に「米ドル買い需給の強さ」をマーケットに再確認させることとなりました。
11.7兆円もの米ドル売り玉を市場は難なく吸収し、しかもその後、米ドル/円は介入前の水準を上回って推移。ついに6月30日(火)には、介入時の高値をはるかに超える162円台へと上昇しています。実需・投機の両サイドで、米ドル買い意欲がいかに根強いかを物語っています。
そして今、市場の焦点は「次の防衛ライン」に移っています。まず注目したいのは、165円の攻防です。
165円は心理的節目であると同時に、162.00円以上にバリアオプションも厚く設定されているとみられます。日経新聞も「介入ラインとして164〜165円」を市場が見極めているとの見方を報じており、165円は政府・日銀の介入警戒ゾーンといえるでしょう。
つまり、165円は「介入が入る可能性が高いライン」として、まず一度は攻防が予想される水準なのです。
しかし、ここからが重要です。
もし165円を明確に上抜けた場合、これまで「介入待ちスタンス」を徹底してきた日本の事業法人の米ドル買い需要が、一気に噴き出す可能性が高いと考えています。
日本の輸入企業の多くは、円安が構造的に進む中で米ドル買いヘッジを遅らせてきました。エネルギー価格の高止まり、原材料コストの上昇、そして構造的な貿易赤字体質――これらを抱える事業法人は、165円という「介入で叩かれるかもしれないライン」を突破した瞬間、遅れていた米ドル買いを一気に執行する動機を持つことになります。
いわゆる「実需の後追い」が発動すれば、米ドル/円は165円から170円に向けて一気に急騰する可能性があります。
165円と170円の間には、テクニカル的にも実需的にも、上昇を止める強力なバリアは見当たりません。年内170円、これは決して非現実的なシナリオではないのです。
そして、ここでもう一つ怖いのが、介入の限界です。仮に165円で再度大規模介入を実施し、効果が限定的だった場合、日本には打つ手が限られてきます。米国に協調介入を要請するしか道がなくなりますが、ベッセント米財務長官率いる現政権がこれに応じる可能性は極めて低いでしょう。
だからこそ、まずは165円の攻防に注目したいと思います。ここで介入が入るのか、入らないのか。入ったとして、効果があるのか、ないのか? それが、年内170円到達のタイミングを決める最大のポイントとなります。

(出所:TradingView)
40年ぶりに162円という節目を超えて底堅く推移する米ドル/円の動向に注目です。
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