日本10年債利回りが29年ぶりの高水準に…市場は「3%」に注目。ヘッジファンドは「悪循環による日本売り」をトレードの軸に
みなさん、こんにちは。
前回のコラムでは、円安の要因を本邦事業法人の米ドル買い遅れという点と、骨太ショックという側面から解説させていただきました。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円の年内170円はあり得る! 165円はバリアが厚く介入警戒ゾーンで攻防に注目。明確に上抜ければ、介入待ちだった事業法人の米ドル買いが一気に噴き出す可能性(7月2日、西原宏一)
今回は、日本国債(JGB)市場で利回り急騰が続くなか、グローバルマクロ系ヘッジファンドの間で「日本売り」が注目されていることをご紹介します。
7月8日(水)の日本債券市場で10年債利回りは一時2.870%まで上昇し、1997年以来およそ29年ぶりの高水準となりました。
中東情勢の緊迫化による原油高でインフレ懸念が再燃したことに加え、高市政権の積極財政路線による財政悪化への懸念も、利回り上昇要因として意識されています。
市場関係者の間では、日本10年債利回りの「3%」が1つの節目として意識されています。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
ソシエテジェネラルの金利ストラテジスト、スティーブン・スプラット氏は「転換点は10年債利回りが3%をやや超えたあたりにあるとみているが、3%に達した時点で市場は疑問を持ち始めるだろう」と指摘しています。
エイゴン・アセット・マネジメントのスティーブン・ジョーンズ氏も「日本は『カネは永遠にタダ』という前提の上に世界最大の政府債務を築いてきたが、市場は今その前提を急速に覆しつつある。東京は過去の借り換えと将来の資金調達を、一世代ぶりの高い金利で行わなければならない」と警鐘を鳴らしています。
(出所:FT(フィナンシャル・タイムズ))
また、ゴールドマン・サックスは、財政懸念が利払い費を押し上げ、それがさらに財政を圧迫するという「悪循環」に陥るリスクを警告しています。
つまり、グローバルマクロ系ファンドの一部は、この悪循環そのものをトレードの軸に据えているとみられます。すなわち、
(1)日銀の利上げが後手に回る
(2)歳出拡大で国債増発が続く
(3)海外投資家が円ヘッジ付き「国債投資の妙味(※)」の縮小を嫌気して資金を引き揚げる
(※筆者注:円ヘッジ付き国債投資はかつて7%前後の実質リターンがあった。具体的には、日本国債の利回り(たとえば1%)+ヘッジで得られる上乗せ(金利差分、たとえば6%)=合計で7%くらいになっていた)
という三段構えのシナリオです。
海外勢の「日本国債離れ」を示唆する報道も相次いでおり、ファンド勢はこれを「財政ドミナンス」、すなわち日銀が金利を人為的に抑え込み、インフレで債務を目減りさせる戦略の予兆と捉えているとみられます。
米ドル/円は165円を試す展開で、中期は170円に。金利上昇でも通貨が売られる現象こそ、ヘッジファンドの思惑と読み解く鍵に
本来、日本の金利上昇は他国との金利差縮小を通じて円高要因となるはずです。
しかし今回は逆で、日本国債利回りの上昇と円安が同時進行しています。これは金利差ではなく「財政の持続可能性そのもの」への懸念が、通貨の信認を直接損なっている裏付けだとファンド勢はみているようです。
「金利が上がっているのに通貨が売られる」という現象こそ、今回のヘッジファンドの思惑を読み解く鍵となると考えています。
為替市場では、ゴールドマン・サックスが7月6日(月)付で米ドル/円の12カ月予想を155円から165円に上方修正しています。みずほ銀行は170円を上値目処として挙げるなど、円安の長期化を織り込む動きが拡大しています。
米ドル/円はすでに1986年以来の安値圏となる162円台で推移しており、次の節目として大きなバリアオプションが控える165円が視野に入ります。
来週(7月13日~)にかけての焦点は、日本10年債利回りが3%を明確に超えてくるかどうかと、それに対する政府・日銀の反応です。
利回り上昇が加速し、海外勢の円売りが一段と強まれば、米ドル/円は165円方向への動きを強める可能性が高まります。その局面で政府・日銀が本格的な為替介入に再び踏み切るかどうかも注目点です。

(出所:TradingView)
日本10年債利回りの3%超えと、165円を目指す米ドル/円の動向に注目です。
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