AI関連株が急落! リスクオフでも米ドル買いが続かず、スイスフランが上昇
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 それでは叶内さん、さっそく先週(10月12日~)の株の振り返りからお願いします。
MC叶内 10月10日(土)に上海で、中国の半導体メーカーCXMTが次世代DRAM技術である4F²(4Fスクエア)の開発進展を発表。メモリメーカーの中長期的な業績が警戒され、サムスン電子など半導体株が売られていました。
そこへ、AI向けクラウドサービスを提供する米国のコアウィーブの株式と社債が大きく売られたことで、にわかにAI投資を巡る資金問題がクローズアップされ、世界的にAI・半導体関連株に売りが広がりました。
コアウィーブの株価は週間で約25%安。2031年償還の社債利回りは15日(木)に一時16%を超えました。
債務不履行リスクに備えるためのコストを示すCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッドも1000ベーシスポイントを超え、過去最高水準に達しています。ロイターは同社の債務負担を約500億ドルと報じています。
半導体製造装置大手の蘭ASMLや台湾TSMCの好決算も流れを変えるにはいたらず、フィラデルフィア半導体株指数SOXは8連敗、週間では▲11%の下落となりました。
一方、台湾TSMCや仏シュナイダーエレクトリックによる業績予想の上方修正からは、AI関連需要の底堅さもうかがえます。
アナリストらは、コアウィーブの社債利回り上昇が事業モデルの破綻を意味するわけではないと指摘していますが、投資家はAIインフラ企業の社債利回り、CDSスプレッド、新規借入条件に神経質になっています。
今週(10月19日~)からのハイパースケーラー(※)の決算発表で、設備投資計画が維持されるかに注目が集まります。
(※「ハイパースケーラー」とは、クラウドサービスを大規模に構築・運用する企業のこと。アマゾンやマイクロソフト、アルファベット、メタなどが含まれる)
ちなみに、コアウィーブという会社をひと言で説明すれば「AI企業にGPUの計算能力を貸し出し、借金で急拡大中の巨大データセンター会社」です。エヌビディアの最新GPUを大量に購入してデータセンターに並べ、AIの開発や運用に必要な計算環境を提供しています。
売上の中心は、使った分だけ払う従量課金ではなく、数年単位の長期契約です。マイクロソフト、OpenAI、メタ、Anthropicなどとの「テイク・オア・ペイ(使わなくても支払い義務がある)」型複数年契約が、2026年1〜3月期の売上の約98%を占めていました。
株式市場に話を戻すと、ナスダック総合指数は-4.5%と5週ぶりの下落、S&P500は-1.9%と反落しました。日経平均は前週末比3706円(5.4%)安の6万5324円、5週ぶりの反落でした。
一方、NYダウ平均はエネルギーやヘルスケア株が支えて+0.7%と続伸しています。TOPIXは0.1%安と反落ですが小幅な下落にとどまりました。
先週発表された9月の米CPI(消費者物価指数)とPPI(卸売物価指数)が予想を上回って伸びたことなどで、一時的に利上げ観測が再燃したことも株式市場には逆風でした。
サウジの迂回輸送ルートも脅かされ、原油WTIは先週10.4%上昇しました。これもインフレ懸念を高めています。
ただその後、FRB(米連邦準備制度理事会)当局者の発言で追加利上げを急がない姿勢が示されています。CMEのFedWatchツールを見ると、10月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で金利据え置きが決定される確率は83%と、1カ月前の49%から大きく上昇しています。
注目されていた大手銀行株の決算はまちまちで、波乱はありませんでした。
12日(月)から開催されているIMF(国際通貨基金)・世界銀行年次総会では、AI投資と金利について議論が行われたことも重視したいと思います。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 先週の為替市場の最大のニュースは、AI関連株の急落でリスクオフになったのに、最終的には米ドル買いが続かなかったこと。
叶内さんのお話にあったように、コアウィーブの社債価格が下落し、利回りやCDSスプレッドが急上昇。AI投資を支える「借金」に市場の目が向きました。株式市場はリスクオフです。
教科書どおりなら、リスクオフでは安全資産として米ドルが買われます。ところが先週、米ドルは逆に売られ、ドルインデックスは1カ月以上ぶりの週間下落となりました。
主要通貨で米ドルに対してもっとも強かったのはスイスフランです。米ドル/スイスフランは週間で約0.7%下落し、0.82スイスフラン台前半まで下げました。木曜(10月15日)と金曜(10月16日)の2日間だけで、スイスフランは対米ドルで1.4%以上上昇しています。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
StoneXのアナリストは、米ドルはAI関連の取引と強く結びついているため、ハイテク株が売られた今回、米ドルは買われるどころか売られたと指摘しています。
これは、このコラムでもご紹介してきたFT(フィナンシャルタイムズ)のケイティ・マーティン氏の見立てどおりの動きです。
世界の投資家は、AI投資を通じて米ドル建て資産を大量に持っています。しかも、為替ヘッジを十分にかけていない投資家が多いようです。AI関連株が崩れれば、株売りが米ドル売りにつながる可能性があります。先週は、その最初の兆しが見えた形です。
週半ばには、9月の米CPIとPPIが上振れ、利上げ観測が再燃しました。米ドルは全面高となり、米ドル/円は158.85円まで上昇しましたが、159円手前で失速しています。
その後、FRBのウォーシュ議長が利上げの可能性に触れず、10月のFOMCでの追加利上げ観測は後退しました。
金曜には日銀の植田総裁が、基調的な物価が2%を上回るリスクに改めて言及し、円買いの材料になりました。
米ドルも円も弱いという局面で、米ドル/円は動きが取れません。結局、158円近辺で越週しています。
ユーロ/米ドルは、週半ばに米CPIの上振れで米ドルが全面高となった場面で、1.1113ドルまで下げて年初来安値を更新しました。ただ、週後半は米ドルが売られたことで1.12台前半まで戻しています。
一方、スイスフランに対しては売られ、ユーロ/スイスフランは0.92スイスフラン台前半まで下落しました。
ユーロ/円は177円台を中心とするレンジで、5日の年初来安値176.22円は割り込んでいません。
もう1つ見逃せないのが、欧州の天然ガス価格が約4年ぶりの高値をつけたことです。冬を前にガスの貯蔵が少なく、寒波の予報も重なりました。エネルギーを輸入に頼る欧州にとって、フランス国債ショックやスペイン総選挙に加わる新たな重荷です。
では叶内さん、今週のイベントと注目点をお願いします
★ザイFX!で人気の西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では、タイムリーな為替予想や実践的な売買アドバイスなどをメルマガや会員限定ウェブサイトで配信! メルマガ登録後10日間無料です。
AI関連株の売りは続く? 米ドル/スイスフランの下値の目処に注目
MC叶内 米国の主要経済指標が少なく、決算と、先週の流れであるAI・半導体株の売り、利上げ観測、原油高がどう続くかが焦点です。
FOMC・日銀会合(日銀金融政策決定会合)など大きなイベントは翌週(10月26日~)に集中します。
まず、米ビッグテックの決算発表ですが、今週21日(水)にはメタ・プラットフォームズとテスラが予定されています。翌週28日(水)には、マイクロソフトとアルファベットの決算発表が控えています。
半導体関連は23日(金)に米インテル、国内では22日(木)にディスコが決算発表予定。日本も本格的に決算シーズン入りです。
その他、20日(火)にネットフリックス、スリーエム、21日(水)にラムリサーチ、テキサスインスツルメンツ、ソフト関連でIBMと欧SAP、22日(木)にP&G、23日(金)にアメックス、日本ファナックなどの決算発表が予定されています。
経済指標は、米国では19日(月)にNAHB住宅市場指数、20日(火)に米9月住宅着工件数が発表されます。欧米では23日(金)に10月製造業PMI、中国では19日(月)に7~9月期GDP、9月工業利益などがまとめて予定されています。
国内では、19日(月)に8月第三次産業活動指数、20日(火)に9月首都圏新築マンション発売、21日(水)に9月貿易収支、9月訪日外客数、23日(金)に9月CPIが発表される予定です。20日(火)に日本20年債入札、21日(水)に米20年国債入札があります。
為替市場の見通しはいかがですか?
トレーダー西原 今週はまず、AI関連株の売りが続くかどうかに注目です。
焦点は、21日(水)のメタから始まるハイパースケーラーの決算です。設備投資の計画が維持されれば、AI関連株はいったん落ち着くでしょう。逆に、投資の抑制や資金調達への不安がにじむようなら、先週のリスクオフがもう一段進む可能性があります。
為替市場で大事なのは、そのリスクオフの「形」です。
先週の値動きが示したように、今回のリスクオフでは米ドルは安全資産として買われていません。代わりに買われたのはスイスフランです。
FTのジリアン・テット氏は、AI関連企業のCDSスプレッドの上昇を「炭鉱のカナリア」と表現しました。先週のコアウィーブのCDSスプレッドの急騰は、まさにそのカナリアが鳴いた形です。
参考までに、2008年の金融危機の前も、株が最高値を更新する中で、住宅ローン債や銀行のCDSがじわじわと上がっていました。株が天井をつけたのは、信用市場で最初の事故が起きた後でした。
すぐに株が崩れるとは限りませんが、AIの「信用」に市場の目が向き始めたことは、為替にとって大きな変化です。
AI関連企業のCDSスプレッドが上昇したことで、米ドル/スイスフランのショートを持っています。AI発のリスクオフで米ドルが売られる局面では、スイスフランがもっとも素直に買われると考えています。
ブルームバーグ・インテリジェンスも、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])は当面スイスフラン高を止めに動かないと見ており、米ドル/スイスフランの下値の目処として0.8180スイスフランと0.8072スイスフランを挙げています。
一方、ユーロ/円とユーロ/スイスフランのショートは、いったん手じまってスクエアにしました。
欧州のリスクが消えたわけではありません。
週明けの早朝も、フランスで社会不安が広がり、ウクライナがロシアへの降伏を迫られていると訴えたことで、ユーロは売られて始まっています。ユーロ/米ドルは、先週つけた年初来安値の1.1113ドルが意識されています。
ただ、投機筋のユーロの売りは、すでに大きく積み上がっています。よって具体的な戦略は、ユーロの戻りを待って売り直しです。ユーロ/円は178円台、ユーロ/スイスフランは0.93スイスフラン台への戻りが売り場の目安です。
参考までに、ゴールドマン・サックスも、ユーロ/円の反発は売り増しの好機としています。
米ドル/円は、戻り売りの姿勢を維持します。158.85円まで戻しても159円には届きませんでした。160円は日米の防衛ラインと見ており、AI発のリスクオフで米ドルが売られる局面が増えれば、米ドル/円の上値はさらに重くなります。
一方で、注意も必要です。ハイパースケーラーの決算が好調でAI関連株が反発すれば、米ドルも買い戻されやすくなります。原油の高騰も、米金利を押し上げて米ドルを支える要因です。また、欧州のリスクが主役になる日は、マーケットもユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)中心の相場となるでしょう。
翌週には28日(水)にFOMC、29日(木)にECB(欧州中央銀行)理事会、30日(金)に日銀会合の結果発表が控えています。今週はその前哨戦として、AIの信用不安がどこまで広がるかを見極めたいと思います。
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう!
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は登録後10日間無料解約可能なので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
















![ヒロセ通商[LION FX]](/mwimgs/9/7/-/img_975127cf2c6be2ac1a68a003ef3669c022946.gif)








株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)