FOMCでは、予想どおりにフェデラルファンド金利の誘導目標を0.25％引き上げることが決定された。これで集めるのが、3月18日に開かれる日銀政策決定会合だろう。政策の変更はないが、会合後の会見で黒田総裁が最近の円安傾向について「問題はない」と答えるとすれば、黒田総裁から円売り投機にお墨付きが出たことになる。米ドル/円はターゲットだったトランプラリー時の高値118.68円を抜けた。アベノミクス相場での最高値、125.82円を、近いうち挑戦することになるかもしれない。

米国は近年、金融制裁を多用しすぎているのではないか。米ドルの覇権を自ら既存しているようなものだ。米ドルに価値の貯蔵手段としての意味がないのなら、代わりとなる最有力候補は「金」だろう。一方、120ドルを越えるような原油価格では、そのうち世界景気も冷え込むだろう。原油はしばらくは高いだろうが、高値は続かない可能性が高い。

欧米側のロシアへの制裁制裁の目標は、ルーブルを下落させ、ロシア経済を破綻に追い込むことだ。一方で、欧米側が被る損失も小さくない。おそらく、中央銀行は資金ひっ迫が起きないよう、流動性の供給を迫られる可能性がある。3月のFOMCでは、おそらく0.25％の利上げとなり、資金供給からバランスシートの拡大を迫られるかもしれない。

ウクライナの緊張は、完全に消えることはないだろう。しかし、決定的な戦闘などはないと想定している。もし、ウクライナの緊張がそのうち緩和するのであれば、マーケットは本来あるべき方向に戻るのではないだろうか。リスクオフで一時的に買われた円は、マーケットが正常化すれば売られることになるだろう。米ドル/円は買われ、ユーロ/円も買われる、そうしたマーケットが、近いうちに戻るのではないかと想定する。

世界が引き締めに動く中、日本は断固として金融緩和を続けるだろう。他国との政策の違いは明確で、インフレは日本にもやってきそうだ。米ドル/円は、引き続き上昇トレンドの中にあり、120円を挑戦する展開に十分にありえる。ユーロ/円も、目先は2021年の高値134.12円、2018年の高値137.50円が視野に入り、140円を超える円安も十分にありえそうだ。

市場はFRBの利上げを、2022年に関しては完全に織り込み、むしろ追い越した感じもある。そうなると、次は「他の中央銀行が、どのように反応するか」に焦点が移るだろう。日本については、日銀がYCC（イールドカーブ・コントロール）を変更する可能性があるとも噂されている。変更は考え難いが、多少、バンド幅を広げることもあるかもしれない。もしそうなった場合は、円高方向に米ドル/円を向かわせることになるだろう。

安倍政権から岸田政権に変わり、「アベノミクス」から「新しい資本主義」へと、政治の背景は変わってきている。おそらく、黒田日銀総裁が2023年4月に退任するのをきっかけに、日銀の政策は変わっていくだろう。「悪い円安」という言葉に象徴されるように、インフレへの警戒感が国民の間に高まっている。そのため、おそらく岸田政権内は安倍政権と違い、円安志向ではなく110円を下回る円高方向が望ましいというコンセンサスがあるとの観測が、海外投資家の間で広まっている。

バイデン政権の支持率低下は、米国の高いインフレからきている。インフレの抑制は政権の最大の課題で、そのためには多少、株価が犠牲になっても構わないのだろう。これまでは、「米金利上昇＝米ドル高・円安」のシナリオが最有力だったが、米国株が崩れるときは「米ドル安・円高」が有力になるだろう。米ドル/円は、大きなサポートの112円を割れると、強気シナリオが大きく後退する。

これまでは、「高いインフレ率→FRBの利上げ→米ドル買い」だったが、今後は「高いインフレ率→低い実質金利→米ドル安」にロジックが切り替わるかもしれない。米金利の上昇で米ドル/円が上昇するというのをメインシナリオとしてきたが、インフレ率の高い通貨が下落するというのもセオリーだ。

米ドル/円は、何年も相場らしい相場がなかったが、今年は動くかもしれない。昨年の米ドル/円は、年足で大陽線となった。同規模の動きが続くとすれば、今年は128円がターゲットになると言える。トランプラリーの高値118.67円超えると、大きな上昇波が見込まれる。