■利上げ票の減少と見通し下方修正で英ポンド急落!
8月3日(木)に、英MPC(金融政策委員会)が開催されました。今回は3カ月に1度の四半期インフレレポート公表と、カーニーBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])総裁の会見も重なる、いわゆる「スーパーサーズデー」でした。
前回、6月15日(木)のMPCでは、8名のメンバーのうち、3名が利上げを支持していました。そのとき、利上げ票を入れたフォーブス委員が6月末で退任し、今回から新たにテンレイロ委員が加わったことで、利上げ支持が何票になるか注目されました。
【参考記事】
●経済不振なのに利上げ!? それは短期的には通貨の買い材料だが、中期的には売り材料(6月27日、バカラ村)
政策金利は市場参加者の多くが据え置きを予想していましたが、少数ながら利上げ予想もあったため、利上げ支持票の数と共に、注目されているイベントとなっていました。
結果は6対2で政策金利が据え置かれ、利上げ支持は2票だったことから、英ポンドは急落。
さらに、四半期インフレレポートで2017年のGDP(国内総生産)見通しが前回の+1.9%から+1.7%へ、2018年が+1.7%から+1.6%へ下方修正され、2018年と2019年の実質賃金見通しも下方修正されたことで、英ポンドの下落は加速し、英ポンド/米ドルは3日(木)のマーケットで1.3111ドル付近まで下がりました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
■対米ドルのサポート割れを確認して対円をトレード
MPCの前までは、英国の利上げ観測や米ドル安トレンドの影響もあり、英ポンド/米ドルは1.3267ドルまで上昇していました。
以下は英ポンド/米ドルの4時間足チャートです。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
テクニカル的に、英ポンド/米ドルは徐々に高値と安値を切り上げ、日足では前日(2日)や前々日(1日)が小動きの足型となっていたことから、1.3180~90ドルのサポートゾーンを割り込むと、売りシグナルが点灯する形となっていました。
私としては、Brexit(英国のEU離脱)による景気減速懸念もあり、英ポンドの上昇はいつまでも続くとは考えていなかったこともあったので、今回のMPC直後の英ポンドの動きを見て英ポンド/円を売りました。
以下は英ポンド/円の1時間足チャートです。
(出所:サクソバンク証券)
MPCをきっかけに英ポンド/米ドルがサポートゾーンを割り込んだため、英ポンド/円で売りエントリーし、さらに、四半期インフレレポートで成長率や賃金の見通しが下方修正されたことを確認して売り増しをしました。
メルマガ「バカラ村のFXトレード日報!」でも配信しましたが、売りポジションの一部は144.50円で手仕舞いし、残りはまだ保有しています。
■投機筋の円売り越しはまだ高水準
次にIMM(国際通貨先物市場)のポジション推移を確認すると、投機筋の米ドルに対する円売り越しは徐々に減ってはいますが、8月1日(火)時点でまだ11.2万枚と、円売りに偏っています。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
8月4日(金)に発表された米雇用統計は全体的に良い結果となり、コーンNEC(米国家経済会議)委員長から税制改革に関してポジティブな発言もあったことで、米ドル/円は一時、111.05円まで上昇しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
米ドル/円は109円台後半から反発し、さらに、ドルインディックスもサポートゾーンから反発していることもあって、すぐに米ドル/円が下がる状況ではないですが、IMMの投機筋ポジションは円売りに偏ったままです。
■英ポンド/円に下落余地、ジャクソンホールが注目イベント
材料に乏しく、夏枯れ相場になりやすい時期ですが、季節性とIMMの投機筋ポジションの偏りからは円買いになりやすいと思われ、英ポンド/円は下がりやすいのではないかと考えています。
【参考記事】
●米ドル/円が下がりやすい8月が到来! まずは108円台を目指す動きを想定(8月1日、バカラ村)
ただ、BOEの利上げ観測がなくなったわけではないので、英ポンド/米ドルの調整は短期的な動きだと考えています。
大きな材料としては、8月24日(木)~26日(土)に、米ワイオミング州ジャクソンホールで開催される、カンザスシティー連銀主催の年次経済シンポジウム、通称「ジャクソンホール会議」があります。
世界中の中央銀行総裁や金融関係者の多くが参加するイベントとなっていて、毎年、注目されています。
FRB(米連邦準備制度理事会)がバランスシート縮小を9月に開始するとの予想が多いため、イエレンFRB議長の発言が注目されますが、ドラギECB(欧州中央銀行)総裁の講演も重要となりそうです。
7月に、ドラギECB総裁が3年ぶりにジャクソンホール会議へ出席することが伝わり、9月のテーパリング(※)開始に向けた地ならしを行う可能性があるとの見方からユーロが上昇した経緯もあるので、注目されるイベントとなりそうです。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
【参考記事】
●引き締めに向かう主要国中銀が「密約」? ECB理事会でのテーパリングの行方は…!?(7月17日、西原宏一&大橋ひろこ)
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