■4.8%ではなかったが、4.1%と米GDPは上々の結果に
みなさん、こんにちは。
7月後半の相場はまず、トランプ大統領が「(米国が)Best financial numbers on the Planet」(地球上で一番の財務指標である)とコメントしたことが話題に。
FOX Business(米FOXニュース)によれば、トランプ大統領は周辺に、「GDP成長率が4.8%に達する」との見通しを示したと報じられていたため、7月27日(金)発表予定の米GDPとの関連がウワサされていました。
トランプ大統領がGDPの数字にこだわるのは、前米大統領のオバマ氏が残した数字が影響しています。
1969年からの歴代米大統領は、GDPで年率3.00%超えを達成しています。しかし、残念ながらオバマ氏は、GDPの年率3.00%超えを達成できませんでした。

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
オバマ氏を意識してか、トランプ大統領は公約の1つとして、GDPの年率3.00%達成を挙げています。
そして、7月27日(金)に発表された、2018年第2四半期速報値のGDPは、4.8%こそ達成できませんでしたが、年率換算で前期比4.1%増加と上々の数字が報道されました。

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
これを踏まえて重要なのは、米中間選挙前に発表予定の第3四半期のGDPの数字。
仮にこの数字が好調であれば、トランプ政権はGDPで年率3.00%超えを達成する可能性が高まり、中間選挙に向け、トランプ大統領率いる共和党政権に弾みがつきます。
GDPの大幅改善は、米ドルの底固め要因となります。
■注目された日銀会合の結果はどうだった?
7月31日(火)、日銀金融政策決定会合が終了しました。
今回の会合は、下記のような事前報道があったことで、日銀の決定に対して大きな注目が集まっていました。
日銀が金融緩和の持続性向上策を議論へ、長期金利目標の柔軟化など=関係筋
出所:ロイター
関係筋と記載されているので、日銀のリークであると推測されたためです。
その結果ですが、まず、以下のとおり、金融政策を微修正しました。
(1)長期金利を柔軟化(±0.1%→±0.2%)
(2)マイナス金利の適用範囲を縮小(約10兆円→約5兆円)
(3)ETF購入でTOPIX連動型を増加
ここまではマーケットの予測どおりで、前述の記事が日銀のリークだということがわかります。
大きな変更ではありませんが、日銀は長期金利の一定幅の上昇を容認したということであるため、円高要因です。
ただ、日銀はもう1つ、サプライズを要因していました。
それは、フォーワード・ガイダンスを導入したこと。
具体的には、「2019年10月に予定されている消費税引き上げの影響による不確実性を踏まえ、当分の間極めて低い長期金利の水準を維持」するとのこと。
結果としては、「長期に渡って低金利は続きますよ」と言っているわけです。
■日銀会合の緩和政策微調整に見方わかれる…
今回の日銀の発表は巧妙で、まず、緩和修正をリークしてマーケットに織り込ませておき、実際の発表では、フォワード・ガイダンスというサプライズを用意して円高を防いだということになります。
実際に8月1日(水)のマーケットでは、フォワードガイダンスの効果が出て、米ドル/円は、一時112.15円まで反発しています。

(出所:Bloomberg)
ただ、日本の長期金利は日銀の発表後、日銀を試すかのように、じわじわと上昇しており、8月1日(水)は0.131%でクローズしています。

(出所:Bloomberg)
マーケットには、日銀のフォワード・ガイダンスに注目するゴールドマン・サックスのような見方(円安派)と、緩和策の修正を重視するモルガンスタンレー(円高派)とにわかれています。
個人的には、0.2%のキャップはついていますが、方向性としては長期金利の上昇(今のところは一定幅)を容認した形になるため、中期では円高要因であると認識しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
■新日米通商協議に注目! 日本の低金利に不満も…!?
米国とEU(欧州連合)、そして、米国と中国といったように、トランプ大統領は各国と貿易摩擦を引き起こしています。
【参考記事】
●日銀の金融緩和政策修正は「地ならし」程度のものに!? 米ドル/円はどう動くのか?(7月30日、西原宏一&大橋ひろこ)
日米首脳会談で合意された米国と日本の通商問題を協議する新たな枠組みであるFFRは、日程さえなかなか決まりませんでした。
それが、8月9日(木)初開催ということで、最終調整に入ったと報道されています。
新たな日米通商協議 8月9日初開催で最終調整
日米両政府は、閣僚による新たな通商協議を来月9日にワシントンで行う方向で最終調整に入りました。
出所:NHK News Web
FFRは、自由(free)、公正(fair)、相互的(reciprocal)の頭文字を取り、日米首脳会談で合意した新しい日米通商対話の枠組みです。
米国はこのFFRで、トランプ大統領が離脱表明したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)ではなく、日米でのFTA(二国間自由貿易協定)にしたい思惑があり、これは、日本にとっては不利な交渉となる可能性があります。
加えて、この協議において米国は、(もちろん表面上には出ないでしょうが)為替レートに関して不満を述べるのではないか? という懸念も残ります。
その背景は7月20日(金)にトランプ大統領が、「通貨と金利を不当に低い水準に操作してきたと中国、EUを批判するツイートをしたこと」にあります。
【参考記事】
●トランプ砲連発だが日本は射程に入らず? 日銀会合まで米ドル/円の上値は重そう…(7月23日、西原宏一&大橋ひろこ)
不当かどうかは別として、日本政府・日銀は長期に渡って低金利を続けており、それが通貨安(円安)を引き起こしているのではないか? との不満をFFRで持ち出されることを危惧されているわけです。
こうした状況は、1980年代の日米貿易摩擦を彷彿とさせ、当時のような為替調整、米国製品の購入などが交渉材料として出てくる可能性があります。
一定幅というキャップはついていますが、長期金利の上昇を容認した日銀。
そして、新日米通商協議を控え、下値余地が徐々に拡大している米ドル/円の動向に注目です。
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