■米ドル/円はフラッシュ・クラッシュから切り返して高値更新
相場は理外の理。2019年1月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)以降、米ドル全体はむしろ一貫して買われ、ユーロなど主要外貨に対してはもちろん、対円でさえ2019年年初のフラッシュ・クラッシュから切り返して高値を更新し、110円台後半を打診しようとしている。

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1月のFOMCでは、FRB(米連邦準備制度理事会)の軌道修正が表明されたと思われ、米ドル高派の筆者でさえ、米ドルは円に対していったん反落してくるだろうと思っていた。
その上、日本の連休があった場合は仕掛け的な円高になりやすい、といった思惑も多かった。ところが、昨日(2月11日)の建国記念日においては、むしろ円安が加速し、市場関係者の多くは見事に意表を突かれた。
ドルインデックスの日足に照らして考えると、1月末のFOMCを受け、一時、200日移動平均線を下回ったものの、たちまち回復して右肩上がりの転換が続き、昨日(2月11日)までほぼ「八連陽」を達成した。

(出所:Bloomberg)
1月24日(木)高値のブレイクもあって、すっかりブル(上昇)基調に復帰し、目先ややオーバーボート感があるものの、これから昨年(2018年)高値を再打診、またブレイクしていく様相を呈していると受けとめられる。
■消去法で米ドル買いという見方が主流だが…
ハト派スタンスに転換したとされるFRBの政策修正があったにもかかわらず、なぜ米ドル全面高が継続してきたかについて、いろいろな解釈が行われている。米経済指標の好調がなお確認されている中、諸外貨の方が「内部事情」が芳しくなく、消去法で米ドルが買われているという見方が、目先主流のようだ。
ドイツも含め、ユーロ圏は成長率の低下、英国はEU(欧州連合)離脱問題、豪州は利上げの見送り、ニュージーランドは利下げの可能性、そして日本に至っては日銀追加緩和のうわさ、といった材料が持ち上がり、米ドル高の理由として語られているが、正解かどうかと関係なく、そのすべては後解釈であることを指摘しておきたい。
■FOMC声明について重要なポイント2点をおさらい
もっとも、前回のコラムでも指摘させていただいたように、FRBのスタンスやFOMC声明について、以下の2点は重要なポイントであった。
まず、声明文は非常にあいまいな文言で書かれ、市場との認識ギャップが今後浮上してもおかしくないこと。
次に、相場のことは相場に聞くべきで、解釈者の見方や市場のコンセンサスも相場の進行によって変わってくる可能性が大きいということである。
【引用元の記事】
●「米利上げ継続でも円高、米利上げ停止でも円高」というのはロジック的に矛盾している?(2019年2月1日、陳満咲杜)
足元豹変した市場の見方や解釈は、見事にこの2つのポイントを証左しているのではないだろうか。詰まるところ、FOMC後に米ドル高になったから、後解釈が行われただけの話で、そのロジックについて突っ込んで考える必要性はさほどないと思う。
■巷の理屈どおりに動く相場はスピードが速い
ところで、相場の理は常に「理外の理」とは限らない。巷の理屈に完全に沿った値動きをする場合もあるし、完全に相反した値動きをする時期もある。
一般論として、巷の理屈どおりに動く相場は材料が出る前にすでに動き、また、そのスピードも非常に速いケースが多いから、一般の投資家は理屈がわかっても初動でついていけず、スピードの速さに戸惑う場合も多いかと推測される。
換言すれば、理屈がわかっても相場の値動きに乗れず、利益を確保できないケースが少なくないようだ。
対照的に、理外の理のように見えた値動きがあった場合は、値動きにいわゆる「ダマシ」が出現し、より戸惑うケースが多いが、いったん「ダマシ」の本質がわかれば、往々にしてより確実なトレードができ、また、途中でも余裕をもって乗れる場合が多い。
最近の好例は英ポンドの相場であろう。
1月15日(火)に英議会によりメイ首相の離脱案が否決されたにもかかわらず、英ポンドはむしろ買われたという「理外の理」を示したから、その後英ポンド買いのトレードはうまくいったはずだ。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
値動きのサイン(プライスアクション)の説明は本コラムでも取り上げていたから、おさらいとして参照していただければ、先週(2月3日~)の米ドル/円にも適用されることに気づいていただけるだろう。
【参考記事】
●EU離脱案が歴史的大差で否決されたのになぜ、英ポンドは上昇しているのか?(2019年1月18日、陳満咲杜)
●市場の想定に反したポンド高は何を示す?円高のクライマックスはもう過ぎたのか?(2019年1月25日、陳満咲杜)
米ドル/円の「理外の理」を利用するトレードについて、理屈は2月7日(木)のレポートでもって説明したので、本文を以下に開示する。ご参照いただきたい。
(出所:FXブロードネット)
相場は理外の理。FRBの軌道修正が示されてもドル全体は上昇、ドル/円も切り返しの高値を更新していた。プライスアクションの視点では、切り返しの継続を強く示唆するサイン、新たに点灯されるから、再点検しておきたい。
1月31日108.50までの下値トライ、本来押しの先行を示していたが、その後一転して切り返し、4日にて1月30日高値や1月23日高値を更新したので、強気サインを点灯したとみる。
4日の陰線、弱気「アウトサイド」、或いは「リバーサル」のサインだったので、同日高値の更新があったからこそ、一転して強気サインと化す。その後1月23日高値の更新自体も年初来の高値更新そのものなので、切り返しの継続を強く示唆する値動きといる。
換言すれば、弱気サインの否定や高値更新はファンダメンタルズ上の材料と「逆行」したように見えるからこそ、むしろトレンド延長される蓋然性は高い。従って、新たな弱気サインが点灯されていない内、切り返しの継続を有力視。
もっとも、1月高値を達成してから1月25日まで一旦「インサイド」のサインが形成され、1月25日の陰線、前日の同24日の罫線に対して「弱気リバーサル」のサインでも点灯していた。同組み合わせの反対として、2月4日高値トライしてから昨日まで、一旦「インサイド」のサインを形成、また昨日の陽線、一昨日の形成に対して「強気リバーサル」(またはアウトサイド)のサインを点灯しているから、ここから上放れがあれば、一段と前記見方を証左しよう。
目先GMMAチャートや一目均衡表の「雲」ともに抵抗を示すが、頭打ちなしでは逆にドル/円の堅調が暗示される。この意味でも切り返しは継続される公算。
このように、米ドル/円は上放れを果たしていたから、目先切り返しを継続、また、200日線の111.28円前後を打診する可能性あり、とみる。

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一方、米ドル全面高の継続自体、米ドル/円にとってプラス要素となりきれないので、米ドル/円の一本調子の上昇は考えにくい。
言い換えれば、「米ドル/円は早晩頭打ちとなり、また、再度反落して『二番底』を形成していく」といったメインシナリオにはある程度の修正はあるものの、基本的にはなお維持される。詳細はまた次回、市況はいかに。
【参考記事】
●「米利上げ継続でも円高、米利上げ停止でも円高」というのはロジック的に矛盾している?(2019年2月01日、陳満咲杜)
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