■しばらくリスクを取りにくい環境が続きそう
為替市場の注目している材料は、米中の貿易戦争と、英国のEU(欧州連合)離脱問題(=ブレグジット)となっています。
米中の貿易戦争は、5月27日(月)にトランプ大統領が、中国が今の関税を払い続けることができないため、いずれ歩み寄り、合意するという発言を行いました。
トランプ大統領は時折、楽観的な発言を行いますが、中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)へ圧力をかけており、これからは関税第4弾も控えていることから、合意までかなり時間を要することになると思います。
【参考記事】
●株価が崩れなければ米中貿易摩擦は継続。米ドル/円は、まだ戻り売りで良さそう(5月21日、バカラ村)
関税第4弾には、スマホやパソコンなどの消費財も含まれており、米国経済にも、ある程度の悪影響が出てくると思いますが、早ければ6月末にも発動される可能性があり、株式市場などは、まだ楽観的になれない状況だと思います。
(出所:Bloomberg)
関税第4弾に関しては、6月中旬に行われる公聴会で意見聴取をすることになっており、しばらくはリスクを取りにくい環境が続くと思います。
■まだ円高リスクは残存している
トランプ大統領は、日本に対しては、7月の参院選が終わるまで、通商交渉を待つことを示唆しており、これによる円高へのリスクは軽減しています。ただ、円安になるような材料でもない状況です。
円高へのリスクは、米中の貿易戦争があるため、リスク回避による円高が、まだ残存していると考えています。
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■メイ英首相が辞任表明。合意なき離脱の可能性高まる
5月24日(金)には、メイ英首相が6月7日(金)に辞任することを表明しました。
辞任に関しては、事前に報道されていたことや英ポンドが下げていたこともあって、発表後は反発しました。
ただ、後任の最有力はボリス・ジョンソン氏で、彼は強硬離脱派でもあるため、英ポンドは売られています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 1時間足)
保守党の党首選では、8人が立候補を表明しており、そのうちの5人が合意なき離脱を容認していることもあって、英ポンドを積極的に買えるような状況ではないと思います。
英国では欧州議会選で、EUからの離脱を掲げる「ブレグジット党」が第1党となり、その点からも、保守党は強硬離脱を推し進めやすいと思います。
合意なき離脱の可能性も高まっており、それに備えるために、英ポンドの上がったところは売られやすいのではないかと思います。
【参考記事】
●メイ英首相が辞任表明! 米中貿易戦争は長期化へ…米ドル/円は105円台目指すかも(5月27日、西原宏一&大橋ひろこ)
■英ポンドは上がれば売られやすい状況が継続
今後のスケジュールは、7月中に新首相が誕生することになり、その後、野党との離脱協議を経て、EU側と離脱案を協議することになりますが、EU側が歩み寄ってくることは考えにくく、10月末の期限に合意なき離脱となるか、もしくは離脱延期を申請することになると思われます。
国民投票や総選挙の実施となれば、10月末まで時間がないことから、EU側は離脱延期に応じると思いますが、英国内でまとまらない状態が続いているだけであれば、離脱延期に応じない可能性もあり、合意なき離脱の可能性は、以前よりも高まっていると考えています。
そのため、英ポンドは、上がれば売られやすい状況が続くのではないかと思います。
(出所:Bloomberg)
■IMMのユーロ売り越しが10万枚超へ!
買われやすい通貨としては、米中の貿易戦争のため、円が買われる可能性が高いと考えており、売られやすい通貨としては、離脱問題で英ポンド、そして、米中の貿易戦争で豪ドルも売られやすいのではないかと考えています。
【参考記事】
●株価が崩れなければ米中貿易摩擦は継続。米ドル/円は、まだ戻り売りで良さそう(5月21日、バカラ村)
●目先の米ドル/円サポートは108円台半ば。中国人民元安に影響を受けやすい通貨は?(5月14日、バカラ村)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)
ユーロに関しては、IMM(国際通貨先物市場)における、投機筋の米ドルに対するユーロのポジションが10万枚の売り越しに偏っており、ここからのユーロの下げは、進みにくくなっているように思います。
【参考記事】
●IMMの危険水準は円10万枚、ユーロ15万枚、英ポンド10万枚だが、さらに確認すべきは?
※CFTCのデータを基にザイFX!が作成
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
■ユーロ/英ポンドは強い動き。0.90ポンド台への上昇も
ユーロ/英ポンドは、2月に0.86ポンドのサポートを下抜け、以前のサポートがレジスタンスへ切り替わっていたこともあって、下降しやすい状況でしたが、0.84ポンド台を下に抜けず、0.86ポンド台のレジスタンスを超えてきました。
短期的には0.8720ポンド付近のレジスタンスがサポートに切り替わり、強い動きになっています。
(出所:Bloomberg)
今は、長期的なレンジ上限である0.90ポンド台へ向けての上昇が、期待できるのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
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