イエレン米財務長官の手のひら返しで米国株は反落
みなさん、こんにちは
3月に入り、SVB(シリコンバレー銀行)破綻をきっかけに、クレディスイス・ショックなど立て続けに、マーケットに負荷がかかるニュースが続出しました。
しかし米国、そしてスイス当局の迅速な対応が功を奏して、懸念されたマーケットの暴落を食い止めています。
加えて21日には、イエレン米財務長官が「中小規模の金融機関が経営難に陥った場合、米政府は預金者保護のために追加措置を講じる用意がある」と語ったこともあり、マーケットはいったん収束しました。
ところが、22日のイエレン米財務長官のコメントは一変します。
イエレン米財務長官は米国の銀行システムを安定化させるために「全面的な」預金保険を提供することを規制当局が検討していることはない。最近経営破綻した米銀のトップは責任を負うべきだとの見解も示した。上院小委員会の公聴会で「預金の全面的な保険や保証に関することを、私は検討したり議論したりしていない」とも証言しています。
出所:Bloomberg
21日の暗黙の支持を撤回し、システム全体の預金保証が検討されていないことを明らかにしています。
この意見の変わりように、マーケットでは 「Janet's apparent flip-flop~イエレン米財務長官の手のひら返し」と揶揄されています。
このコメントに呼応して22日の米国株も反落。
(出所:TradingView)
総じてクロス円も下落しており、本稿執筆時点で、米ドル/円も130.50円レベルで推移しています。
(出所:TradingView)
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シリコンバレー銀行の破綻は「炭鉱のカナリア」か?
世界最大級のヘッジファンド運営会社であるブリッジウォーター創業者のレイ・ダリオ氏も、「SVB破綻は“炭鉱のカナリア”か?」ともコメント。「ベンチャー界のみならず、より広い世界に波及効果を及ぼすだろう」と述べました。
「炭鉱のカナリア」、SVB破綻の影響は広い世界に波及へ-ダリオ氏
出所:Bloomberg
このように現在の米国株は非常に不安定な環境にあるため、リスクアセット下落=円高リスクという旧来の流れになっていることが米ドル/円の上値を限定的にしています。
ただ、米ドル/円の下落を誘引してる最大の要因は米2年債利回りです。
FOMCで利上げ局面の終焉に近いことを示唆
日本時間23日未明、今週最大の注目だったFOMC(連邦公開市場委員会)が開催されました。
マーケット参加者の見方に少し相違がありますが、パウエル議長のコメントはある程度コンセンサスどおり。
あと1回程度の利上げの可能性はあるものの、利上げ局面の終焉に近いことを示唆したといったところ。
一方、金利先物市場では、来年1月のFF金利先物は4.00%程度になっており、年内数回の利下げを織り込んでいます。
(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)
これを受け、米2年債利回りは再び4.00% を割り込んでいます。
パウエル議長はFRB(米連邦準備制度理事会)のピボット(政策転換)に関してはなにもコメントしていませんが、マーケットは、年内のピボットを織り込んだまま。
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米2年債利回りと米ドル/円の上値は限定的。米ドル/円は128円へ
下図は米2年債利回りの日足です。
(出所:TradingView)
ターミナルレート(利上げの最終着地点)が6.00%になるとの予測が拡大していた 今月の8日は5.081%の高値に到達しています。
それがわずか3日で4.00%を割り込んで急落しています。
3日で1.00%の急落は米ドル/円でいえば、一気に10円以上暴落したことになり、マーケットは債券売りで捕まっており、米2年債は極めて底堅い、つまり米2年債利回りの上値は極めて限定的だと想定しています。
結果、米ドル/円の上値も限定的です。
(出所:TradingView)
米2年債利回りが再び4.00%割れ。FRBの年内のピボットが予測される中、米2年債利回りと米ドル/円の上値は限定的。
米ドル/円は128円に向け戻り売りとします。
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