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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

日銀の見事な実質的YCC撤廃。ユーロ/円は、再び165円
を目指して上値を探る展開へ。米ドル/円は当面、135~
145円のレンジをなかなかブレイクできない相場環境か

2023年07月31日(月)13:10公開 (2023年07月31日(月)13:10更新)
西原宏一

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日銀金融政策決定会合のリーク記事で米ドル/円は急落!

 みなさん、こんにちは。

 先週7月28日は日銀報道により、金融市場は大荒れ

 まず28日日本時間未明、日経新聞が同日の日銀金融政策決定会合に関するリーク記事を出します。

日銀、金利操作を柔軟運用 上限0.5%超え容認案

 (出所:日本経済新聞

 イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作のこと)の修正案で、「0.5%を一定程度容認する案が浮上」というのは極めて具体的な報道です。

 このリーク記事を受け、米ドル/円は141.09円から一気に139.00円割れまで急落します。

米ドル/円・15分足
米ドル/円・15分足

(出所:TradingView

 マーケットがこの日経の報道にビビッドに反応するのは当然です。

 ちょうど一週間前の21日に、「日銀は現時点でYCC副作用に対応の緊急性乏しいと認識-関係者」というBloombergの記事をきっかけに、マーケットは一時141.96円まで買い進めていたからです。

日銀は現時点でYCC副作用に対応の緊急性乏しいと認識-関係者

 (出所:Bloomberg

 それが日銀金融政策決定会合当日の日本時間午前2時という時間帯に、YCCに関して全く逆のリーク記事が日系の新聞社から報道されたため、短期のヘッジファンドは慌ててポジションを整理にかかるのはしかたのないところ。

YCCの実質撤廃でも日経平均は反発!

 そして世界中が緊張感を持って迎えた日銀金融政策決定会合の結果は、YCCの実質的撤廃

 その結果を受け、米ドル/円相場は一時138.07円まで急落しています。

 ただ為替と相違し、株式市場は別な動きをしています。

 28日の日経平均は一時3万2037円まで急落していますが、終値は3万2759円まで持ち直しています。

日経平均株価・1時間足
日経平均株価・1時間足

(出所:TradingView

 欧米市場の日経平均先物はさらに値を伸ばして、3万3000円台まで回復しています。

 日銀金融政策決定会合の結果を受けて、株、為替は違う動きをしていますが、どちらが正しいのでしょうか?

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変動幅の範囲を「メド」扱い、日銀の巧妙な発表

 ではまず、日銀発表後の金利の動きをみてみましょう。

 今回の日銀の発表を受け、10年債利回りは確かに上昇しましたが、28日のマーケットは0.568%で引けています。

 昨年12月に黒田東彦前総裁のもと実施した政策修正の時は、「長期金利の変動上限を0.25%から0.50%に引き上げ」と発表すると、即座にマーケットは0.5%の上限突破をもくろむ債券売りを誘発。その時とは大きく異なっています。

 ここで、今回の日銀の発表をもう一度確認してみましょう。

 当面の金融政策運営について「長期金利の誘導目標はゼロ%程度のままで、変動幅はマイナス0.5%からプラス0.5%までをメドとして、より柔軟に運用する」としています。

 はっきりと上限を1.00%にするという発表であれば、マーケットは一気に1.00%まで債券を売り込めたのですが、変動幅の範囲を「メド」の扱いにしてある程度の上昇を容認しているとはいいつつも、「変動幅はマイナス0.5%からプラス0.5%までと変わらず」ではマーケットは債券売りをしかけにくい。

 結果、10年債利回りが急騰しないため、日本株は回復しました。

 モメンタムに流されやすい為替だけはロンドン市場で再び138円台後半まで値を下げましたが、金利や日本株の動きに連れ、反発。

 結局28日のNY市場は、米ドル/円も141.15円レベルで引けています。

米ドル/円・30分足
米ドル/円・30分足

(出所:TradingView

 日銀はYCCを実質的撤廃に近い発表をしたにも関わらず、発表の内容が巧妙であり、日本株は急落するどころか3万3000円台にまで反発しています。

 今回の日銀の措置はお見事と言わざるを得ません。

 しかも前述のように7月21日(金)には、「日銀は動かずというリーク記事」を出させ、欧米短期筋に債券売りを仕掛ける隙を与えなかったこともよく考えられてるなあと思った次第。

 これを受け、今週の日本株は上値を追う展開でしょうか?

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米ドル/円はレンジ、ユーロ/円は再び165円を目指して上昇か

 遅ればせながら、為替市場も円安トライでしょうが、米ドル/円は137~142円をコアにして、当面135~145円というレンジをなかなかブレイクできない相場環境が続くのでないかと想定しています。

 個人的な注目は米ドル/円より、引き続きスイスフラン/円を筆頭としたクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)。

 今週の注目はユーロ/円。

 日銀発表後、ユーロ/円は一気に151.42円まで急落し、マーケットのユーロ買いがはけた後、7月28日(金)のNY市場は155.42円で引けており、サポートを確認した形。

ユーロ/円・日足
ユーロ/円・日足

(出所:TradingView

ユーロ/円は再び165円を目指して、上値を探る展開ではないかと考えています。

 YCCを実質的に撤廃したにも関わらず、日銀の発表内容の巧妙さで日本株は急落するどころか反発。

 日銀発表の前後に調整も終了し、再び165円の上値を探る可能性が高くなっているユーロ/円に注目です。


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