米金利上昇と内田日銀副総裁の緩和継続発言で、米ドル/円が上昇!
「レンジ上限の150円」を打診する勢いを示す
前回の本コラムでは「もしかしたら、今年(2024年)における米ドル/円のトップアウトがすでに図られた」といった趣旨のことを述べたが、現在の市況では否定されている。
なにしろ、執筆中の現時点で米ドル/円は149円台半ばまで上昇しており、従来の見通しである「レンジ上限の150円」を打診する勢いを示している。
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⇒米ドル/円は、すでに今年の高値をつけた!? 52週移動平均線をトライ、140円割れも想定できるか。米長期金利の上昇は終了、米ドルを積極的に買う理由はない(2024年2月2日、陳満咲杜)
(出所:TradingView)
市況を一変させたのが、先週(2月2日)の米雇用統計を受けた米金利上昇、また、日銀のマイナス金利解消に関する「アナウンス」であろう。
しかし、よく吟味したら、どうしても腑に落ちないところがある。
米雇用統計自体、そもそも事前の予想はほとんど意味がないほど「デタラメなデータ」として周知されており、相場の変動率を高めはしても、決定的な要素ではないはずだ。
また、先週末(2月2日)の同データのリリースが、米金利上昇につながったのはわかりやすいが、本来、米株にとって圧迫要素であった。にもかかわらず、米ドル全体の上昇と米株の急伸を同時にもたらしたわけで、どうも「我田引水」の疑いが濃厚だ。
そして、昨日(2月8日)の米ドル/円の急伸は、内田日銀副総裁の「マイナス金利解消後も金融緩和は続く」といった発言に「つられた」ようだ。
しかし、日銀総裁を含め、このような発言をした真意は、ほかならぬ、マイナス金利解消間近というメッセージではないだろうか。それを逆に円売りの材料として利用されたのも、違和感たっぷりである。
米ドル/円は150円の大台をトライする可能性が高い。
しかし、それ以上の上値追いは避けたい
と言っても、相場は常に正しい。背景や原因はどうであれ、米ドル/円に関しては、150円の大台をトライする可能性が高く、目先、逆張りすべきではなかろう。
一方、150円台の打診があれば、それ以上の上値追いも避けたい。やはり従来の想定として、今年(2024年)において米ドル全体の頭が重いこと自体は変わらないと思う。
換言すれば、米ドル/円の150円台の打診があれば、それ自体が米ドル高の限界に近く、米雇用統計がもたらした一時の米金利上昇があっても、それ以上の米ドル買いを「正当化」できないはずだ。
(出所:TradingView)
最新のデータをチェックしてみればわかるように、米金利の切り返しがあっても日米金利差からみれば、短期(米2年物国債利回り)や中長期(米10年物国債利回り)の両方から「割高」にみえる。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
それは、前回のコラム寄稿時(2月2日)の状況と大して変わりがないから、米ドル/円の頭が重いことを示唆する材料として、やはり無視できないと思う。
米金利の切り返しは、米ドル/円には「効きすぎ」!
その他の主要通貨には、「それほど効き目なし」!?
さらに、米ドル全体、すなわちドルインデックスの状況が、違う「光景」を示す。
目先、米10年物国債利回りは4.15%程度の水準にあるが、去年(2023年)10月には一時5.02%まで急伸していた。
ドルインデックスは、目先104.05のレベルにあり、昨年10月高値が107.07だったことから考えると、ドルインデックスは米金利の切り返しにリンクした反発になっていないようにみえる。
言ってみれば、米金利の切り返しは、米ドル/円に対する影響で言うと「効きすぎ」のように見える一方、そのほかの主要通貨に対してはそれに「比例した効き目」が確認されていないように感じる。
(出所:TradingView)
このような格差があるからこそ、円は主要通貨における「最弱」の地位であることが再度検証されたとみる。
そうなると、これから米金利の動向と関係なく、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における円売りが継続される、といった大まかな予測をまとめられるだろう。
なにしろ、米金利の切り返しがあっても、ドルインデックス自体が決して強くないから、クロス円における円売りが仕掛けられやすい状況にある、ということだけは確かだ。
主要クロス円に高値更新の余地あり。
だからこそ、米金利がガンガン上昇していく可能性は低い
もちろん、このような推測自体が「前述の話と矛盾している」といったお叱りを招くリスクがある。なにしろ、米ドル/円の150円台以上の高値を追わないほうがいい、といった前述の論調が「否定」される恐れがあるからだ。
仮に米金利の上昇が続く場合、米ドル/円により効くなら、クロス円における円売りの根拠として、やはり米ドル/円のさらなる上昇なしでは難しい、という反論があってもおかしくなかろう。
まったくそのとおりである。米金利に大幅な上昇余地がある場合、クロス円における円売りが継続されるためには、米ドル/円の一段の大幅上昇がないと難しいかもしれない。
なにしろ、ドルインデックスの米金利と「比例した」上昇が引き続きみられなくても、外貨安というトレンド自体は変わらないから、「米ドル/円の150円台より上の高値トライなしでは、ユーロ/円や英ポンド/円といった主要クロス円の高値再更新もありえない」と言われても、さほど間違いではなさそうだ。
逆説的になるが、筆者が言いたいことは、まさにそこにある。要するに、テクニカル要素からみれば、ユーロ/円や英ポンド/円といった主要クロス円のほうが、なお高値再更新の余地あり、という見方を維持できるからこそ、これから米金利がガンガン上昇していく可能性が低い、ということである。
このような見方は「本末転倒」だというお叱りも聞こえそうではあるが、金融市場における因果関係は複雑で、言うほど簡単に解釈できないことを言っておきたい。また、因果関係ではなく、お互いに影響しあう相場の結果としてお互いを検証できる場合も多いから、このような逆説を切り捨てられないと思う。
さらに言うなら、仮に筆者の見方が正しい(すなわち、米ドル/円が150円台にて頭打ち)場合でも、米ドル/円はしばらく中段保ち合いを保てる公算が高い、という市況になりやすいだろう。
言い換えれば、日銀政策の修正があっても、円はしばらく積極的に買われない可能性が大きい。そうでないとクロス円における円売りのトレンドが維持されないから、少なくとも桜が咲くころまで、円はあまり買われないのではないだろうか。
クロス円におけるテクニカル上の検証はまた次回、市況はいかに。
14:00執筆
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