欧州の大部分はエネルギー純輸入国だが、イラン戦争でユーロの下落が限定的だったことに、マーケットはショックを受けている
みなさん、こんにちは。
イラン戦争勃発直後のマーケットの反応は、エネルギー供給国なのか、エネルギー純輸入国なのかが注目されました。
まず急騰するというコンセンサスだったのが、避難通貨でもあり、エネルギー供給国でもある米ドル。原油の輸出国であるカナダドルや、LNGを輸出している豪ドルも底堅い。
一方、原油のほぼ95%を中東からの輸入でまかなっている日本円は当然最弱。次に注目されたのが、欧州の大部分がエネルギー純輸入国であるユーロの下落でした。
それでは、実際の相場はどうだったのかをチェックしてみましょう。イラン戦争勃発後から本稿執筆時点までの主要通貨の対米ドル騰落率は以下のようになっています。

本稿執筆時点では、停戦期待が高まって相場が戻っていることもありますが、 戦争勃発後からユーロ/米ドルはほぼ動いていません。
加えて、株が急落してボラティリティが高まっている局面でも、ユーロ/米ドルの安値は1.1411ドルと、節目の1.1400ドルも割り込まず反発しています。
今回は金(ゴールド)が急落してスイスフランが反落したため、唯一の避難通貨は米ドル。
こうした背景にもかかわらず、ユーロ/米ドルの下落(=米ドル上昇)が極めて限定的だったことに、マーケットはショックを受けています。
なぜなら、ゴールドマン・サックスを始めとする銀行のエコノミストの多くが、戦争の進行とともに大きくユーロが下落するとレポートしていたこともあり、ユーロ/米ドルの下落はマーケットのコンセンサスになりつつあったためです。
それではなぜ、今回のイラン戦争の拡大とともにユーロ/米ドルは大きく値を下げなかったのか?
ユーロ/米ドルは1.20ドルを超えそう。米ドル制裁で、脱米ドル化が進んでしまう皮肉な展開。ハンガリー総選挙も支援材料
リーマン・ショックやコロナショックの時のようにマーケットに大きく負荷がかかる相場、つまり米国株が急落する局面では通常、米ドルは急騰します。
なぜなら、マーケット参加者が株や商品といったリスクアセットから現金=米ドルに戻すためです。
それではなぜ、今回のイラン戦争で米ドル上昇は限定的だったのか?
一部で指摘されているような「米ドルが基軸通貨としての地位を失う」といったストーリーは、現実的ではありません。
ただ「米ドルから他通貨への分散が拡大」していることは、マーケットでじわじわと拡大しているようです。
その理由は「『世界の米ドル決済から締め出す』という米国の脅しが効かなくなったから」と、FT(フィナンシャル・タイムズ)のダニエル・デイビスが指摘しています。
それが、今回のイラン戦争でもはっきりしてきたといえます。
イランは世界でもっとも制裁を受けている国のひとつです。しかし、そのイランが以下のことをできるのは、米ドル制裁の「実効性の限界」を示すものと指摘しています。
(1)戦争中でも石油を売り続けている
(2)ホルムズ海峡を通航する船舶から通行料(最大200万ドル)を徴収している
(3)米イラン停戦後、イラン当局者は今後の通行料を仮想通貨(輸送1バレルあたり1ドル相当)で要求すると示唆している
言い換えれば、制裁を強化することで脱米ドル化が進んでしまっているところが皮肉な展開。
加えて、ユーロ/米ドルの反発が顕著になってきた材料が、ハンガリーの選挙結果です。
4月12日(日)のハンガリー総選挙で、16年間政権を維持してきたヴィクトル・オルバン首相が敗北を認め、ペーテル・マジャール氏率いる野党「ティサ党」が勝利するという歴史的な政権交代が起きたことで、ユーロ買いとして作用する可能性が高いと見られているようです。
要因としては、以下のような「EU(欧州連合)との関係改善と『凍結資金』の解放」があげられているようです。
オルバン政権下では、法の支配や民主主義の軽視を理由に、EUから約200億ユーロ(約3兆円超)の資金供給が凍結されていました。
今回、親欧米派のマジャール氏が勝利したことで、これらの資金が解放される道筋が見えており、ハンガリー経済への巨額の資金流入は、ユーロ圏全体の経済的なカントリーリスクを取り除くことになり、ユーロの支援材料となるというわけです。
こうした背景から、ユーロ/米ドルのトレンドはイラン戦争前に回帰。1.2000ドルを超えていき、米ドル安が進行する公算が高まっています。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
ユーロ/円は190円、年末に向けて200円へ上昇しそう。ユーロ/米ドルは上昇トレンドに回帰、米ドル/円の下値余地は限定的
ただ、イラン戦争が終結したわけでもありませんので、ユーロ/米ドルが一方的に上昇するわけではありません。
そこで注目されているのが、ユーロ/円です。ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルでの米ドル安が顕著になるなか、米ドルに対して下げ渋っているのが円です。
日本はエネルギー純輸入国だからという理由もありますが、そもそも米ドル/円はイラン戦争勃発前から、160円に向けて上昇中だったこともあり、イラン戦争にかかわらず 底堅いまま。
当局が頻繁に円安牽制をしているため、160円レベルがキャップされていますが、その円安牽制が、事業法人の米ドル買いを大幅に遅らせているため、米ドル/円の下落余地は限定的です。

(出所:TradingView)
多くの事業法人は、当局が介入するのであれば、もっと米ドルを安く調達できると考えるのは当然だからです。
しかし実際には介入は出ておらず、押し目がないため、彼らの米ドル買いは当然遅れています。
ユーロ/米ドルは上昇トレンドに回帰中で、米ドル/円が底堅ければ当然、ユーロ/円は上昇します。
最初のターゲットは190円ですが、年末に向けて200円へと上昇するとみています。昨年(2025年)、200円に到達したスイスフラン/円に続き、ユーロ/円に注目です。

(出所:TradingView)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は10日間の無料体験期間がありますので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。























株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)