2010年も残すところ、あとわずか。読者のみなさんはこの1年のトレード成績、どうだったでしょうか?
いろいろなことがあった2010年。このコーナーでは“ザイFX!的に”2010年を振り返ってみたいと思います。第1回の今回は「為替・経済の動き 前編」。
■欧州財政危機! 「PIIGS」は生き残れるか?
2010年、為替のマーケットで一番話題になったのはユーロだろう。ユーロ圏数カ国の財政問題が大きくクローズアップされ、ソブリンリスク(国の債務に関するリスク)が激しく意識された。
「通貨・ユーロ崩壊」というシナリオも盛んに論じられた。
2010年、よく耳にしたのが「PIIGS」という言葉。これはポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字をつなげたもの。ユーロ圏で特に財政不安を抱えた国々を揶揄した言葉だ。
「PIIGS」のうち、2010年前半(正確には2009年の終わり頃から)は危機の主役がギリシャだった。前政権の発表していた財政赤字にウソがあったことが明らかとなったことから、マーケットは大きく揺れ始めた。
このギリシャ問題を主因として、ユーロ/米ドルは2009年11月につけた1.51ドル台から、2010年6月には1.18ドル台まで非常に大きく下落している。
そして、2010年中盤あたりから、マーケットの関心は次に述べる米国の追加量的緩和策に移り、今度はユーロ高・米ドル安が進んだが、その後は危機の主役がアイルランドへ移った。
11月ごろから問題となってきたのはアイルランドの銀行の不良債権問題。これがアイルランドの国としての財政懸念につながり、再びユーロ安が進んでいる状況だ。
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(次ページでは米ドルや円の話題を…)
■失業率高止まりの米国は量的緩和第2弾に踏み切った
今では信じられない感じがするが、2010年のはじめの段階では、2010年夏ごろには米国は利上げに動くだろうという説が主流だった。
このところ、米国の経済指標には良いものも出ているが、相変わらず失業率は高止まり、インフレ率は低下している。その結果、米国は利上げどころか、QE2(量的緩和第2弾)に踏み切らざるを得なくなった。
QE2はFRB(米連邦準備制度理事会)が8カ月間で6000億ドルの米国債を購入するというもの。ざっくり言えば、米ドルをジャブジャブにすることだ。
8月にジャクソンホールで行われたバーナンキFRB議長の講演でQE2が示唆されたあと、マーケットでは次第にQE2期待が高まって、米国の長期金利は低下、米ドル安がグングン進み、米株高もかなり進むこととなった。
ただ、今振り返ると、ジャクソンホールの講演は、講演直後はものすごく注目されていたわけでもなかったように思える。あとから振り返って、「あれが相場反転のキッカケだった」と解説されることが多くなっていった感じだ。
そして、11月のFOMCでQE2が現実に発表になると、材料出尽く的な動きとなり、米国の長期金利は上昇、為替相場は米ドル高へ転じている。
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■米ドル/円は変動相場制以降の最安値79.75円に大接近!
2010年はユーロ/米ドルが前半、中盤、後半とドタバタ下がったり、上がったりする一方、米ドル/円は途中多少反発する場面もあったものの、基本的には下落基調にあった。
11月1日には80.2円台の最安値をつけた米ドル/円。1995年4月につけた変動相場制以降の最安値79.75円を下抜けるのではないかという声も高まった。
この「79.75円」という歴史的なレートがよく話題にのぼった2010年だったとも言える。
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(「ザイFX!で振り返る2010年(2)【為替・経済の動き 後編】」へつづく)
(ザイFX!編集部・井口稔)
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