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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

28.8万人増! 米雇用統計は絶好調なのに
なぜ、米ドル安が進んでいるのか?

2014年05月08日(木)18:28公開 (2014年05月08日(木)18:28更新)
西原宏一

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■好調な米雇用統計でも米ドル/円反落、要因に米長期金利

 みなさん、こんにちは。

 先週、5月2日(金)の米雇用統計後の相場は金融関係者にとって、サプライズな結果となりました。

 5月2日(金)に発表された米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が28.8万人増、失業率も6.3%と良好。

 (詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移

 当然、最初のリアクションは米ドル買いで、米ドル/円は一時103.02円まで上昇しました。

 ただその後、米ドル/円は急落。この要因は米金利の低下にあります。

米10年物国債利回り(米長期金利) 日足

(出所:CQG)

米ドル/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足

 好調な米経済指標にも関わらず、米長期金利(10年物国債の利回り)は2.6%前後に低下しました。

 米長期金利の低下に伴い、米ドル/円は102円割れ。

■米ドル/円の上昇には「円」にまつわる要因の強化が必要

 5月7日(水)には日経平均の急落も伴い、米ドル/円は一時101.425円まで下落。

日経平均 日足

(出所:株マップ.com

 米ドル/円は依然として101円-103円の狭いレンジ内での推移に終始しており、値動きとしての驚きはありません。ただ、先週の好調な米雇用統計を受けて、逆に米ドル/円が反落していることで、マーケット参加者の注目を集めているわけです。

 つまり、米経済指標の改善で米ドル/円が上昇するというシナリオは現実味がないということ。

 繰り返しになりますが、2014年年初のシナリオどおり、米ドル/円が上昇するためには、アベノミクスの成長戦略と日銀の追加緩和という円にまつわる要因が強化されないと難しいということになります。

 米ドル/円のサポートは当コラムで何度かご紹介した101.20円と100.70円。このレベルを割り込んでくるとストップロスを誘発して大きく値を下げる可能性があるため、要注意です。

【参考記事】
ナスダック急落! 黒田総裁タカ派的発言!ドル/円は100.70円を割り込んだら要注意(4月10日、西原宏一)

米ドル/円日足

(出所:米国FXCM

 今のところ、米ドル/円は変わらず狭いレンジ圏で推移しています。ただ、米長期金利の低下により、他通貨では広範に米ドル安が進行しているため、米ドル/円のみが上記のレベルでサポートされるかどうかに注目です。

■コンセンサスとは裏腹に広範に米ドル安が進む

 さて、他通貨に目を向けると、M&A絡み(前コラム参照)で底堅く推移している英ポンド/米ドルは1.7000ドルのオプションのバリアブレイク直前の1.6998ドルまで上昇。

【参考記事】
買収総額10兆円の噂がマーケットの話題!英ポンド/円は170円台後半まで上昇か(2014年5月1日、西原宏一)

英ポンド/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら →FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足

 ユーロ/米ドルは一時1.3952ドルと1.4000ドルのバリアに向けて、じりじりと値を上げています。

ユーロ/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら →FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足

 豪ドルやNZドルも総じて堅調で、オセアニア通貨に対しても米ドルは軟調。

 この米ドル安の要因ですが、

(1)多くの参加者が米国債をショートにしているため、米経済指標が予想どおり良好な数字で発表されても米金利が上昇しないこと。

(2)ロシアとPBOC(中国人民銀行)がリザーブ(外貨準備)の調整で、米ドル/円とユーロ/米ドルで米ドル売りを繰り返していること。

 などが挙げられていますが、明確なことはわかりません。

 ただヘッドラインとしては、忘れられかけていたウクライナ問題も要因の1つにあるようで、ウクライナ問題が長期化してから、資金が米ドルから他通貨へシフトしているという意見もあります。

 どちらにせよ、結果としては2014年のマーケットのコンセンサスとは裏腹に、広範に米ドル安が続いています。

 米ドル/円も年初の高値は105.48円でした。

■ECB理事会で米ドル安の流れが変わるか?

 この米ドル安の流れが継続するのかどうかを探る意味で重要なのが、本日のECB(欧州中央銀行)理事会。

 コンセンサスは政策変更はなし。

 あとは「言うだけドラギ、やらないドラギ」の会見が予定されています。

 気をつけたいのはコンセンサスが「政策変更なし」であまりにも偏っているため、仮にECBが緩和に舵を大きく切れば、この米ドル安の流れを変えるきっかけになる可能性もあるということです。

 ECBのスタンスに変更がなければ、広範な米ドル安継続で、ユーロ/米ドルは1.4000ドル、英ポンド/米ドルは1.7000ドル超えとなり、米ドル安継続が濃厚。

 本日のECB理事会に注目です。


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